Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
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熱伝達とは、異なる温度を持つ物理系での熱エネルギーの移動です。4つのメカニズム(熱移流、熱伝導、対流伝熱、熱輻射)を用いて、移動する熱エネルギーを熱の形で表します。食品の調理から、ノートパソコンの冷却や発電所での発電まで、現代社会のあらゆる側面に影響を及ぼしています。太陽熱の放射による地球の加熱や、地球の大気中の対流によって発生する嵐なども、同じように熱伝達のプロセスの1つです。
熱力学の第二法則に示されるように、熱伝達は2つの系に温度差がある状況下で自然現象として発生します。エンジニアは、熱伝達装置を使用して、熱の形でエネルギーを移動させることで、必要な場所に熱を供給し、問題が起こりうる場所から熱を除去します。製品の安全性、効率性、そして性能は、製品の各部品の温度を目的の温度範囲内に維持することによって向上します。
熱伝達は、熱の形で、エネルギーをある系から別の系に移動させることです。この分野では、熱という形で貯蔵または伝達されるエネルギーの量と、エネルギーが系内を移動するさまざまな方法について研究します。
ここでは、熱伝達に関連してよく使われる重要な用語とその意味を紹介します。
対流とは、加熱によって、局所的な温度上昇とそれに対応する密度低下が見られる流体を指します。密度の低下によって浮力が生じ、暖かい流体は(その温度が下がるまで)上昇します。その後、領域の温度が低下するに従って密度が高くなり、流体領域は負の浮力によって下降します。たとえば、鍋でパスタを茹でるとき、対流によってパスタが湯の中でねじれて動くのもその一例です。
系の熱容量は、その系の温度を1度上げるのに必要な熱の量です。この熱容量が高いほど、温度を上げるために必要となるエネルギーは多くなります。これは、熱に対する材料の反応や、ある物体の加熱速度や冷却速度を示すことで、熱伝達の重要な値となります。
熱流束は、単位面積を通過するエネルギー量を測定したものです。具体的には、全熱を測定対象サーフェスの面積で除算した値です。これは、ある物体から別の物体へ、またはある物体から流体へと移動するエネルギー量を示すことで、熱伝達の重要な値となります。
熱生成は、化学反応、燃焼、核融合、核分裂、熱電、電気抵抗、機械的摩擦、または流体の圧力変化など、複数のプロセスを通じた熱エネルギーの生成です。
サーフェスの熱伝達係数(h)は、サーフェスとそれに接触している流体の間の熱流束と、サーフェスと流体間の温度差の関係を測定したものです。この値は、流体の速度と熱特性が既知である場合に計算できます。熱伝達係数は、「境膜係数」とも呼ばれています。
熱伝達が、ある系から別の系への熱の移動を扱うのと同じように、物質移動では質量の移動を扱います。系間で質量が移動する場合、質量とともに移動する内部熱エネルギーがあるため、物質移動も熱伝達において重要になります。ヒートシンク上を移動する空気は、物質移動と熱伝達の両方に該当します。
物質がある状態から別の状態に変化すると、相変化が起こります。相変化は、厳密には熱伝達ではありませんが、系内の温度を制御するために熱伝達とあわせて使用します。相が変化している物質内の分子結合が変化することで、固体から液体への遷移(融解)時または液体から気体への遷移(沸騰または蒸発)時にエネルギーが吸収され、気体から液体への遷移(凝縮)時または液体から固体への遷移(凍結)時にエネルギーが放出されます。エンジニアは、相変化を用いて系に熱を追加または除去します。
温度は、物体内で振動および衝突する原子および分子の運動エネルギーを測定したものです。
材料の熱伝導率(k)は、その材料が熱を伝導する能力を示す指標です。熱伝導率の逆数は、熱伝導抵抗です。
熱は、原子以下の粒子、原子、分子の微細運動の形をとる物質の内部エネルギーです。温度が高いほど、エネルギー量が高くなります。厳密に言えば、「熱」は伝達される熱エネルギー量のみを指します。しかし、多くの場合、「熱」と「熱エネルギー」は同じ意味で用いられています。
熱平衡は、接触している2つの物体が同じ温度にある状態です。熱平衡が達成されると、2つの物体間での熱伝達が停止します。
熱力学は、熱、仕事、および温度にフォーカスして、それらが系のエネルギーとエントロピー、そして物質の物理特性に与える影響を研究する物理学のひとつです。これは、熱力学の4つの法則に基づきます。熱力学のひとつである熱伝達物理学では、物体間での熱の流れを扱います。
系間の熱エネルギーの移動は、4つのモードのいずれかで生じます。これらのモードで、エネルギーは熱流の形で高温の物体から低温の物体に移動します。多くの場合、関与している物体が接触しているか、流体に囲まれているか、相互に可視であるかに応じて、2つ以上のタイプの熱伝達が同時に発生します。
ここでは、各モードの簡単な定義を示します。
熱移流とは、流体の運動と運動量により、ある場所から別の場所に熱が移動する熱エネルギー伝達のメカニズムです。移流は、対流の厳密な定義と区別するために「強制対流」と呼ばれることがあります。これは、移流における流体流れが、浮力によるものではなく、系にエネルギーが加わることで与えられるためです。
コンピュータのマザーボードを冷却するファンは、対流による熱伝達を活用した一例です。
熱伝導は、直接接触している2つの物体間、または温度差がある物体内での熱の伝達を表します。熱伝導のフーリエの法則に基づき、熱拡散によるエネルギーの伝達として表すことができます。エネルギー伝達の速度は、材料の熱伝導率と物体内の温度勾配によって決まります。直接接触している2つの物体については、2つのサーフェス間の圧力と合致によって熱接触抵抗が決まります。
たとえば、火にかけた鍋の取っ手が熱くなるのは、熱伝導によるものです。熱は、鍋の底から鍋肌、そして取っ手へと伝わっていきます。
対流伝熱(または対流熱伝達)は、流体内の温度差によって生じる浮力による流体の運動から生まれる熱エネルギーの伝達です。一般的にこれは「自由対流」または「自然対流」と呼ばれ、移流または強制対流と区別されています。
たとえば、熱いコーヒーやお茶を入れたマグカップを置いておくと、対流が生じます。温かい飲み物の熱は空気中に伝わり、浮力によって熱が強制的に運ばれていくためです。
放射熱伝達は、電磁波/光子として熱エネルギーを伝達するメカニズムです。熱エネルギーにより、あらゆる形態の物質の原子が移動し、それらの原子内の荷電粒子(陽子と電子)の動きによって電磁放射が生じます。熱輻射による熱伝達は、真空内、または物体の温度によって放射される赤外線波長に対して透明な媒体を介して発生します。
熱の形のエネルギーは、仕事をするために利用することも、温度差により系に悪影響を及ぼすこともあります。エンジニアは、熱伝達の原理に基づき、1つまたは複数の熱伝達メカニズムを利用して、系に取り込まれる熱エネルギーの量を制御し、系内で必要となる箇所に熱エネルギーを移動させ、系から熱エネルギーを除去します。
ここでは、より一般的な熱伝達の適用分野を紹介します。
食物を安全に食べられる状態にするために熱を加えます。古くから、調理には熱源として火が使われてきました。対流と放射の熱伝達の組み合わせによって、燃焼している燃料から食品に熱が伝わることで食品が調理されます。
その後、オーブンが開発され、加熱された空気の対流と壁からの放射によって形成された高温の空間の中で食品が調理されるようになりました。最新の調理器具には、電気抵抗または電気誘導を熱源として使用して、調理容器にエネルギーを伝達するものもあります。また、食品の上に高温の空気を吹き付けるファンを用いて移流を発生させ、食品への熱流束を高めることで、より短時間に調理できるエアフライヤーや対流式オーブンといった調理器具もあります。
熱伝達が広く活用されているもう1つの分野は、電子機器の冷却です。電子部品の抵抗によって熱が生じますが、この熱を部品から取り除くために、さまざまな手法の熱伝達が利用されています。
最も基本的な手法は、スマートフォンで利用されています。熱伝導を用いて、コンポーネントから発生する熱エネルギーをケースやスクリーンに移動させ、対流によって熱を周囲の空気へと逃がしています。コンピュータのようなより高温になるデバイスには、ヒートシンクを配置することで、対流を発生させるための大きな表面積が設計されています。また、必要に応じて、デバイス内にファンを配置することで、移流によって空気の運動量を増加させ、熱を逃がして、熱伝達係数を高めることができます。
また、熱伝達は、以下のように建物内で快適な温度を維持するための部品や材料の設計でも使用されてきました。
金属合金の製造から、原油からの石油製品の抽出に至るまで、材料加工のほとんどの例で熱伝達は不可欠となっています。
いずれのケースでも、原材料で目的の温度を達成して維持するために、熱伝達を利用して、目的の相変化、化学反応、または金属変化を生じさせます。また、必要なエネルギー量を最小限に抑え、材料加工の効率を最適化するために、熱伝達が研究され、活用されています。
内燃機関(ICE)は、非常に大量の熱を発生させます。空冷型のエンジンもいくつかありますが、ほとんどは冷却水をポンプで循環させて、スチール製またはアルミ製(どちらも熱の導体)のエンジンブロックから熱を除去します。
その後、流体はラジエータ(車両前方にある大きな熱交換器)を通り、走行中は車両の速度を利用して、あるいは停車中または低速で走行中にはファンを利用して、移流により空気中に熱エネルギーを移動させます。
電気自動車(EV)のモータやバッテリは、かなりの量の熱を発生させるため、車両から除去する必要があります。一部のシステムでは、熱伝導を利用して熱源から熱を遠ざけ、その後、液体の冷却ループを用いて、ラジエータに熱を伝達するように設計されています。
宇宙分野におけるエレクトロニクスの冷却と加熱、特に宇宙船に搭載されるCMOSカメラのようなセンサーは、熱エネルギーを伝達する周囲の空気がないため、この分野に特有の熱伝達問題が発生します。設計では、エレクトロニクスから発生した熱、環境からの赤外線放射、太陽からの吸収熱、および宇宙に放射される熱のバランスをとる必要があります。宇宙空間でコンポーネント温度を適切な動作範囲内に保つために、エンジニアは熱伝導、熱輻射、熱移流、または相変化を組み合わせて使用します。
熱マネジメントシステムを設計するエンジニアは、開発中のシステムを理解し、設計を推進するために、シミュレーションを積極的に活用しています。シミュレーションは、設計プロセスの早い段階で迅速に実行でき、実機試験よりもはるかに多くのシナリオを検討できます。
ケースによっては、複数の方程式だけでシミュレーションを実行することもできます。システムが複雑になると、有限要素法解析(FEA)、有限差分法解析、数値流体力学(CFD)、およびレイトレーシングを使用して、熱伝導、対流伝熱/熱移流、および熱輻射の各熱伝達モードをモデル化します。
以下に、正確で効率的な熱伝達シミュレーションを実行するための推奨事項を示します。
熱伝達は、時間依存の現象です。それは、熱エネルギーが物体間を移動して熱平衡が達成されるまでに時間がかかるためです。シミュレーションを開始する前に、システムの非定常挙動を捕捉する必要があるか、あるいは定常条件が満たされた後の熱流速や温度のみを調べる必要があるのかを理解しておく必要があります。
熱伝達の正確な計算は、熱伝導率、熱容量、放射率などの材料特性に大きく依存します。材料の熱特性を取得して管理する上で、Ansys Grantaなどのツールが大きく役立ちます。
熱伝達シミュレーションでよく見られるエラーの原因は、誤った境界条件の適用と、オブジェクト周囲に適切なコントロールボリュームを定義しないことです。モデル化するシステム内の各領域を大まかに把握して、モデルを作成する前に、各領域における熱流束と熱生成を理解しておく必要があります。
システム内の熱流を管理するために使用される最も一般的なモードは、自然対流と強制対流です。また、サーフェスから流体への熱流束は、速度に大きく依存します。
有限要素法による構造解析ソフトウェアであるAnsys MechanicalなどのFEAツールや、熱を中心としたモデリングソフトウェアであるAnsys Thermal Desktopなどの有限差分法解析ツールでは、速度が既知であれば、熱伝達係数を使用して、対流による流体への熱伝達を表すことができます。また、必要に応じて、流体を1Dの熱 - 流体ネットワークに簡略化して、システム内の流体の熱伝達と速度をより正確に計算できるようになります。これは、自動車エンジン、ジェットエンジン、原子力発電所、宇宙船などで一般的に導入されている方法です。
ただし、流体流れを推定または簡略化できない複雑なシステムの場合は、Ansys FluentなどのCFDツールを使用して、乱流、対流、そして複数の異なる流体の混合などの流体流れを正確に予測できます。固体内の正確な熱伝導率と流体の挙動を組み合わせたシミュレーションは、共役熱伝達シミュレーションと呼ばれます。
経験豊富な熱エンジニアであれば、熱伝達シミュレーションの対象となるシステムの簡略化に精通しているでしょう。多くのケースで、1Dネットワークモデルを使用することで、システムの熱挙動の一部またはすべてを正確に捕捉できるようになります。あるいは、小さなフィーチャーは熱伝達応答にそれほど影響を与えないため、3Dジオメトリを大幅に簡略化することも可能です。
CADジオメトリを使用できるまでは、Thermal Desktopなどのツールを使用して初期の設計スタディ用に単純なモデルを作成し、CADジオメトリが利用できるようになったら、Ansys SpaceClaimのTD Directを使用して簡略化されたCADジオメトリを引き続き維持できます。
Ansys SpaceClaimのTD Directなどのツールでは、複雑なCADジオメトリを非定常熱解析に最適な簡略化モデルに変換する時間を大幅に短縮できます。
エレクトロニクスにおける熱伝達のモデリングは、それ自体が専門分野であり、この重要な分野に焦点を当てるために、エレクトロニクス冷却シミュレーションソフトウェアであるAnsys Icepakなどのツールが開発されています。垂直アプリケーションは、業界固有の用語、ジオメトリ、境界条件に対応しており、モデル作成およびポスト処理のステップを自動化する方法も提供されています。垂直アプリケーションを使用すると、時間を節約できるだけでなく、専門家でなくてもシミュレーションをより簡単に活用できるようになります。
当社はお客様の質問にお答えし、お客様とお話できることを楽しみにしています。Ansysの営業担当が折り返しご連絡いたします。