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有限要素法解析(FEA)とは

有限要素法解析(FEA)は、有限要素法(FEM)で行われた計算に基づいてオブジェクトの挙動を予測するプロセスです。FEMは数学的手法ですが、FEAはFEMによって得た結果の解釈です。エンジニアは、FEAによって複雑なシステムや構造に関する洞察を得ることで、より多くの情報に基づいて設計上の意思決定を行えるようになります。 

FEMでは、数学を使用して複雑なシステムをより小さく単純なピース(要素)に分割します。次に、各要素に微分方程式を個別に適用し、コンピュータの力を使って分割統治法でエンジニアリング問題を解きます。  

FEAはFEM方程式の適用であり、多くのシミュレーションソフトウェアの基礎となっています。実環境のアセットの仮想モデルを作成することで、設計を安全、迅速、経済的に検証およびテストするために使用されます。

有限要素法モデリングにより、物理的なプロトタイプを作成するコスト、時間、リスクなしに実環境をシミュレーションできます。これらのモデルは、さまざまな業界、特に航空宇宙や生体力学といった複雑な環境やリスクの高い環境を伴う業界で、さまざまな条件やシナリオを解析するために使用されます。 

有限要素法解析の例

あなたが座っている椅子、携帯電話のワイヤレス充電器、血管を流れる血液など、私たちの周りにはFEAを使用してモデル化できるオブジェクトやシステムがあります。FEAは、非常に不規則な次元問題を近似できるため、ほぼすべてのものに適用できます。微分方程式を使用して記述された物理挙動は、大半のエンジニアリング問題や量子力学などの特定の難解な問題と同様に、FEAを用いて解くことができます。

FEAは、実機試験が不可能または実用的でない業界で一般的に使用されています。FEAモデルを使用した適用例には、次のものがあります。

土木工学: FEAは、橋梁、建物、ダムなどの構造物の安全性と健全性を評価するために使用されます。FEAは、安全基準を満たし、保守ニーズを予測できるよう設計を最適化するのに役立ちます。 

航空宇宙エンジニアリング: FEAは、さまざまな飛行条件に対する航空機のコンポーネントおよびシステムの性能をシミュレーションするために使用されます。着陸装置の健全性、空力特性、熱応力、疲労寿命予測、振動、燃料消費量などをFEAを使用してモデル化できます。

自動車エンジニアリング: FEAは、ヘッドアップディスプレイ、バッテリー寿命、外装照明、構造の衝突安全性など、車両に搭載されたさまざまなシステムを評価するために使用されます。安全試験では、FEAを活用することで、さまざまな衝撃条件下で各種の安全システムの性能を評価できるようになります。

有限要素法解析の仕組み

有限要素法解析では、対象領域を離散化し、物理方程式を組み立てて、対象のエンジニアリング問題を解きます。  これらの要素を組み合わせて物理的なシステムを表現することで、エンジニアは構造全体の挙動を予測できるようになります。FEAを使用して「100,000マイル走行後でも車両の安全性を確保できるか?」という質問の答えを得るには、まず、「メッシング」と呼ばれる処理で、車両を複数のシステムに、システムをコンポーネントに、コンポーネントを要素に、要素のグリッドを用いて分割していきます。 

有限要素法解析プロセス

  1. プリプロセス: モデルで使用する物理特性と実環境条件を定義します。
  2. プロセス: メッシングによってオブジェクトを有限要素に分割し、関連する物理表現や方程式を各要素に適用します。次に、方程式を組み立てて解きます。
  3. ポストプロセス: 結果を計算して、領域全体の影響を解析および解釈します。

FEAの利点

エンジニアは、人類や地球の変化するニーズを満たすソリューションを設計する上で難しい問題に直面しています。無限のシナリオや条件を調べるために、FEAの柔軟性を応用しています。FEAを使用すると、あらゆる物理特性(熱伝達、流体力学、構造力学など)を伴う、あらゆるサイズ(ナノスケールから大型旅客機まで)の任意の形状ジオメトリ(正方形ブロックから人の心臓まで)をモデル化できます。偏微分方程式がある限り、FEAを使用することができます。 

FEAの利点は次のとおりです。

複雑なジオメトリの評価: FEAでは、評価が困難または不可能な複雑な構造を解析できます。

さまざまな物理特性のシミュレーション: FEAでは、一度に複数の物理問題をモデル化できます。

時間、コスト、リソースの節約: FEAは物理的なプロトタイプの必要性を減らし、エンジニアが設計を構築する前に設計の安全性、信頼性、性能を評価できるようにします。

FEAの課題と制限事項

多くのテクノロジーと同様に、入力の品質によって出力の品質が決まります。FEAモデルは、それらを作成するために使用される情報の精度に依存します。ジオメトリ、材料特性、解析タイプなど、すべての仮定は、モデルの結果の健全性に影響を与えます。正確なデータを入力しなければ、FEAは正確な情報を提供しません。

FEAのもう1つの課題は、最良の結果を得るためには、エキスパートとのコラボレーションが必要となることです。FEAは使いやすくなり、AIによってさらに多くの人がシミュレーションを利用できるようになるものの、FEAツールを効果的に使用するための適切なガイドと対策がまだ必要です。

有限要素法解析テストのタイプ

対象となるエンジニアリング問題に応じて、FEAを使用して実行できるテストにはいくつかのタイプがあります。多目的シミュレーションソフトウェア(Ansys Mechanicalなど)は、固有の設計シナリオを実行するためのさまざまな解析ツールを提供します。最も一般的なFEAテストのタイプには、次のものがあります。

静解析: 時間の経過に伴って条件が変化しない定常荷重に対して実行されます。  

動解析: 時間または周波数にわたる変動を伴う計算に使用されます。  

モーダル解析: 固有振動数を用いて、構造の振動とそれが性能にどのように影響するかを予測します。 

FEAの未来

エネルギー生産、自動化、深宇宙旅行など、ますます複雑なエンジニアリング問題に直面している中で、FEAは最も革新的なソリューションを探索するための適切な手法であり続けます。処理能力がますます向上しているハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)を活用し、AIの知的認識を組み込むことで、将来のFEAでは、より多くの人々に、これまで以上に迅速に、より良い洞察をもたらすようになります。 

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