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Ansys TwinAIでデジタルツインを展開する方法

7月 23, 2024

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Christophe Petre | Ansys、プロダクトスペシャリストマネージャー
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最先端の人工知能(AI)と機械学習(ML)技術を活用して、実際のデータから得られる知見と物理モデルの精度をシームレスに統合するAnsys TwinAIデジタルツインソリューションがリリースされました。TwinAIは、比類ない精度と速度をもたらしながら、デジタルツインの潜在能力を完全に引き出します。

Ansys Digital Twin製品群にTwinAIが追加されたことで、シミュレーションエンジンやオペレーティングシステムのデータストリームよりもクラウドインフラストラクチャに近い環境で、デジタルツインモデルの作成、検証、展開が可能になります。これには3つの利点があります。

  1. 次数低減モデル(ROM)または機能モックアップユニット(FMU)を使用してデジタルツインを作成できます(Pythonコードで拡張も可能)。
  2. ハイブリッド分析でデジタルツインの精度を向上できます。たとえば、フィールドから受け取った新しいデータで既存のツインをキャリブレーションしたり、MLベースのモデルを使用して予測値と測定値のギャップを埋めることができます。
  3. クラウドやエッジへの展開プロセスを簡素化および効率化します。
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次数低減モデル(ROM)は、ソースモデルの振る舞いを捉えた複雑なモデルを簡略化したものです。エンジニアや設計者は、ROMと最小限の計算リソースを使用して、システムの支配的な効果を迅速に調査できるようになります。

デジタルツインの展開における課題

デジタルツインを展開する際には、いくつかの課題が生じます。 

たとえば、デジタルツインの作成と検証時の問題です。通常、デジタルツインの展開と実行に使用される環境と必ずしも一致しないモデリング環境で、ツインで追跡したいアセットや効果を十分かつ正確に表すモデルを作成することで生じる差です。これらの差は、デジタルツインで使用される入力データを与えるための異なるメカニズム、モデルのシミュレーションに使用されるさまざまなソルバー、異なるオペレーティングシステムなど、さまざまな側面から生じます。TwinAIでは、作成したデジタルツインをインポートし、異なるオペレーティングシステムで実行する必要がある場合はモデルをクロスコンパイルして、デジタルツインシミュレーションをテストおよび検証することで、展開前に実行のパフォーマンスと精度が期待どおりであることを確認することができます。

高性能で正確なデジタルツインモデルを作成することも必要ですが、デジタルツインを展開するには、さらに考慮すべきことがあります。特に、他のツールに接続された大規模な展開ワークフローにデジタルツインの実行を組み込む方法についての考慮が必要です。たとえば、接続されたアセットから取得したデータをツインに渡す方法、時系列あるいは2Dおよび3Dフィールドデータの可視化という形でデジタルツインから予測を収集する方法、そしてこれらの予測を使用して、デジタルツインの使用者に関連する重要業績評価指標を導き出すための方法です。これらの点について、TwinAIは、デジタルツインモデルをポータブルで拡張性に優れたランタイムアプリケーションの形でパッケージ化する機能を備えており、ツインを操作および実行するためのダイレクトなAPIを使用できます。また、スキャフォールディングデプロイメントアプリケーションコードを作成することもできます。これは、ユーザーが直接使用して、展開環境にデジタルツインを統合するために拡張できるものです。

Ansys PyAnsysパッケージに含まれているAnsys PyTwin製品は、こうしたAPIのPythonバージョンへのアクセスを提供し、Pythonベースのワークフローとの統合が可能です。PythonやWebアプリケーションのスキャフォールディングコードの他にも、コンテナ化されたツインアプリケーションを提供するオプションがあります。公開されている一連のREST APIも付属し、クラウドとIoTの統合に適しています。コンテナには、デジタルツインだけでなく、適切に統合して実行するために必要なあらゆる依存関係をパッケージ化できるという利点があるため、クラウドでの大規模な展開が容易になります。

デジタルツインの展開を成功させる方法

ここでは、いくつかの例を用いてデジタルツインの展開方法とその利点について説明します。たとえば、Ansysはある大手流量装置メーカーと協力して、顧客である公共事業者にモニタリングソリューションを提供したいと考えました。しかし、コストと実現可能性の観点から、診断センサーを追加することはできませんでした。この流量装置メーカーは、Ansys製品とハイブリッドデジタルツインを使用して、正確な事業者のフローネットワークを作成し、実際に測定された流量とほぼ同じ精度の正確な予測を仮想センサーで達成することができました。

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ハイブリッドデジタルツインソリューションのアーキテクチャ

鉄鋼やガラス製造のような高エネルギー産業における事例もあります。高温などの過酷な条件により、物理的なセンサーの設置が難しい環境です。物理ベースモデルやROMからデジタルツインを作成できることで、さまざまな量を正確かつ迅速に予測でき、製造プロセスを制御して、生産品質を最大限まで高めることができます(「Tata Steel Nederland社、生産時の問題をシミュレーションで解決」および「Tata Steel Nederland社が目標を達成する上でデジタルツインは大変革をもたらす」を参照)。

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高炉から製鉄所へ輸送される魚雷型取鍋車資料提供: Tata Steel Nederland社

「イノベーションはテクノロジーの進歩を促します。Tata Steel Nederland社では、持続可能性に向けた変革に取り組んでいます。シミュレーションとAIの力を活用することで、当社は生産プロセスを最適化し、エネルギー損失を最小限に抑え、脱炭素化の目標達成に向けて尽力しています。Ansys TwinAIは、シミュレーション、データ、そしてAIをシームレスに組み合わせて、よりクリーンで環境に優しい未来のために、鉄鋼製造に変革をもたらします。当社のエネルギー効率を向上させ、2030年までにCO2を30~40%削減し、2045年までにカーボンニュートラルを実現するという脱炭素化目標を達成する上で、Ansys TwinAIは重要な役割を担っています。」

— Paul van Beurden氏(Tata Steel Nederland社、研究開発ナレッジグループリーダー)

また、Ansysは世界的な大手自動車サプライヤーと協力して、電気自動車の詳細なデジタルツインモデルを展開することで、ユーザーが選択した快適性レベルのポリシーに基づいて、走行距離を正確に予測できるかを検証しました(「EVの航続距離の計算: 十分な距離とは」を参照)。

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COVESA車両信号仕様およびdigital.autoとのAnsys電気自動車(EV)デジタルツインの統合が示されています。COVESA APIをホストするdigital.autoプラットフォームはフロントエンドに表示され、バックエンドではAnsys EVデジタルツインが動作します。

TwinAIの機能は、デジタルツインモデルを作成して、ハイブリッド分析機能でそれらを拡張するだけでなく、スキャフォールディングコードやコンテナの作成を通じて展開プロセスを効率化する、すべてのユースケースにとって不可欠なものです。

シームレスな展開のためのコラボレーションの促進

デジタルツインの作成と展開は、さまざまな人やチームが担当する複数のステップで構成されます。そのうちのひとつに、モデルの作成ステップと検証ステップがあります。これらは、モデルと予測の精度、ロバスト性、実行パフォーマンスなどを検討するモデリングや専門エンジニアが担当します。その他のステップとして、APIやアプリケーションの統合と導入を検討する展開ステップがあり、こちらは情報技術や運用に関わるチームが担当します。

前述のように、専門エンジニアによって作成および検証されたモデルを運用環境に展開する際に、一貫した方法で再利用できるようにすることが非常に重要です。TwinAIは、この作成および検証側と導入側のギャップを埋め、モデルとデジタルツインを統合し、ツインを展開して実行するための環境と同じテクノロジーを使用する別の環境でモデルとツインを検証するのに役立ちます。TwinAIでは、提供されたAPIと統合できる自己完結型の転用可能なアプリケーションが生成されます。

これからのデジタルツイン

Ansysは、将来的に複数の分野での開発を検討しています。デジタルツインの作成と展開についても引き続きサポートしていきます。

今後は、モデリングの観点からデジタルツインの作成機能をさらに追加していき、デジタルツインの作成と実行の全プロセスを効率化できるよう目指します。その一例として、2024 R2リリースのTwinAIでは、ROM機能を提供する予定です。この機能追加により、単一の環境を使用してROMベースのツインを簡単に作成して展開できるようになります。

もう1つは、ハイブリッドデジタルツインとAI/MLに関連する機能を継続的に追加することです。物理ベースのデジタルツインはより正確になり、フィールドに展開されたときに更新されます。また、統合と全体的な展開を促進するために、さらに多くの展開およびAPI関連の機能を提供することで、AnsysのIoTパートナー各社と展開エコシステムを引き続きサポートしていきます。

詳細については、「Ansys TwinAI: 物理特性の精度とデータ駆動型の知見の組み合わせ」ウェビナーに登録してご参加ください。


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プロダクトスペシャリストマネージャー

Christophe Petreは、数値流体力学、有限要素法解析、およびシステムなど、さまざまな数値シミュレーションでの経験を有する機械エンジニアです。産業機器や産業プロセスの設計を最適化して運用効率を最大化するために、それらのモデリングや解析に関するプロジェクトを主導してきました。現在は、Ansysにてシミュレーションベースのデジタルツインの実装時に技術および管理に関する専門知識を活用しています。

 

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