Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
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レイトレーシングは、オブジェクトと相互作用する光の振る舞いを表す計算手法です。光の波長が、相互作用するオブジェクトよりもはるかに小さい光の振る舞いをシミュレーションするために使用します。
レイトレーシングでは、異なる光学系やフォトニック系を通過する光線の経路を追跡して、さまざまな構造と相互作用する際に、光線がどのように屈折、反射、または散乱するかをシミュレーションします。光線が通過し、相互作用する光学系は数多くあります。その多くは、ミラー、レンズ、プリズムなどの日常的な物体です。こうした相互作用はすべてシミュレーションできます。
ただし、明確に区別しておくことが1つあります。レイトレーシングには、光の振る舞いに関して2つの側面があります。最も一般的にレイトレーシングが採用されている分野は、ビデオゲームです。ゲーム開発者は、レイトレーシングを導入することで、光がどのように無生物から反射されるかを理解できるようになり、ゲーム内で現実に近いビジュアルを実現できます。これにより、シェーダーや全体照明(現実に近い照明を3Dシーンに追加するアルゴリズム)のリアルタイム開発が可能になります。また、表面テクスチャのレンダリングイメージを作成できるようになります。
ビデオゲームはリアルタイムのレイトレーシングであり、ゲームエンジンによる高速かつ高度な視覚効果と高画質の実現が最も重要となりますが、高い計算能力が必要となることでゲームのフレームレート低下を招くこともあります。そのため、ゲームにおけるレイトレーシングでは、コンピュータグラフィックスやレンダリング技術(ラスター化など)に導入されています。
その一方で、光学系やフォトニクス系のレイトレーシングは、光源がオブジェクトとどのように相互作用するかが重要になります。そのため、系の材料特性や発生する物理的な相互作用が考慮されます。したがって、光学系やフォトニクス系のレイトレーシングでは、現実に近い視覚効果を実現するツールとしての機能ではなく、光の正確さと振る舞いが重視されます。この記事では、光学およびフォトニックコンポーネントの設計のための光の正確さと振る舞いに焦点を当てます。
レイトレーシングは、光学系を通過する光線をモデル化するために使用される計算手法です。レンズ、センサー、その他の光学コンポーネントの設計に導入され、さまざまな角度で入射した光が構造とどのように相互作用するかに基づいて性能を予測します。光が空気中を伝搬し、異なる屈折率(密度の異なる2つの媒体のインターフェースで光が曲がる量を決定する特性)を持つ別の物質に到達すると、光線の一部は反射し、残りは屈折して新しい媒体を通ります。
光が空気中を移動し、異なる屈折率(物質により光が遅くなり、曲がる度合)を持つ物質に到達すると、光は2つの構成要素に分割され、一方は屈折して(曲がる)新しい媒体を通り、もう一方は表面で反射します。この曲げの度合いは、スネルの法則に従い、2つの物質間の屈折率の差に依存します。たとえば、光が屈折率の低い物質(空気など)から屈折率の高い物質(ガラスなど)に移動する場合、光は法線に向かって曲がります。逆に、屈折率の低い物質に向かって移動する場合は、法線から離れる方向に曲がります。
レイトレーシングでは、さまざまな物質やフルスケールの光学コンポーネント(レンズ、回折格子など)を通過する光の基本的な物理現象を追跡します。これは、系内で光の経路を可視化できるシミュレーションベースのアプローチです。光源付近での光の状態を確認し、異なる物質やジオメトリを通過した光線がどのように変化するかを調べます。
つまり、レイトレーシングは、高品質の光学コンポーネントの設計を可能にする効率的で正確なシミュレーションアプローチです。
レイトレーシングは、光学系のシミュレーションに広く使用されています。特に、光学系の寸法が光の波長よりもはるかに大きい場合に使用されます。このサイズ差があることで、レイトレーシングでは光を光線として近似し、波に似たその特性を無視できるようになるため、計算が簡素化され、高速にシミュレーションを実行でき、計算効率が向上します。
光の波長よりも小さい光学系では、回折や干渉などの波動現象が支配的となるため、レイトレーシングの効果が低下します。このようなケースでは、回折や干渉の影響が考慮される完全な電磁界解析(有限差分法時間領域(FDTD)解析やRCWA(Rigorous Coupled-Wave Analysis)の方が適しています。こうした手法は計算負荷が高いものの、光線ベースの近似では非常に高い中央処理装置(CPU)やグラフィックス処理装置(GPU)のパフォーマンスを必要とせずに、サブ波長系に必要な精度を得られるようになります。
個々の光線がスマートフォンのレンズを通過してどのように伝搬するかを示すレイトレーシングシミュレーション
レイトレーシングは、天文学から電磁界、航空宇宙、防衛、通信、医療技術、消費者向けエレクトロニクス製品まで、光が用いられるあらゆる分野で導入できます。その最大の適用分野は、レンズを使う分野です。これは、従来のカメラからスマートフォンのカメラ、ヘッドアップディスプレイ、望遠鏡、AR/VRヘッドセット、ヘッドライト、内視鏡、照明システム(医療および建築)まで多岐にわたります。
レイトレーシングは、光学コンポーネントの性能を評価し、厳しい仕様を満たし、設計を改善するために導入されます。評価対象となるパラメータとしては、コンポーネントの集光の度合い、光源からイメージに透過されるエネルギー量(ディスプレイ用)、イメージの色深度、光学コンポーネントのコントラスト品質などがあります。
コンポーネントの観点からは、レイトレーシングによって得られた情報を用いて設計を最適化できます。レイトレーシングからは、以下のような情報が得られます。
複雑な光学系における複数のレンズ間で光が変化する各種の効果や相互作用を評価して、光学系の最終的な性能を調べることができます。エンジニアはレイトレーシングを導入することで、コンポーネントを実際に設計する前に、こうした状況を視覚的に再現して確認できるようになるため、時間とコストの節約につながります。
レイトレーシングシミュレーションでは、さまざまなジオメトリにわたって光の軌跡が計算されます。光学系では、数百万本の光線がシミュレーション対象のコンポーネントと相互作用します。これらの光線がコンポーネントを通過する経路を正確に計算するには、数百から数千回の演算が必要となるため、高い計算性能を備えたコンピューティングシステムが必要です。
最新のCPUには複数のコア(ハイエンドCPUでは最大128コア)が搭載されており、光線を個別に処理できます。しかし、GPU(グラフィックスカード)は、より小型な計算ユニットを多数備えた異なるアーキテクチャを有します。そのため、より高性能なGPUを使用することで、レイトレーシングの機能が向上します。
2018年にNVIDIA社がRTXテクノロジーを市場に投入して以来、GPUの機能は大幅に向上しました。これらのGPUには、光線伝搬の最適化専用の計算ユニットであるレイトレーシングコア(RTコア)が搭載されています。レイトレーシング専用の計算ユニットを使用することで、より高いパフォーマンスを達成します。Ansysは、最高のパフォーマンスを提供するために、これまでも最新型の高度なGPUを採用してきました。現在は達成できる最高レベルのレイトレーシングシミュレーションを提供するために、NVIDIA社のRTX GPUを採用しています。
Ansysでは、さまざまな光学コンポーネントに対して異なるレベルでレイトレーシングを実行するために、各種のソフトウェアソリューションを提供しています。主なソフトウェアソリューションは、Ansys Zemax OpticStudioとAnsys Speosです。
OpticStudioは、光線がレンズ、ミラー、プリズムなどの個々の光学コンポーネントとどのように相互作用するかを解析するためのソフトウェアです。個々の光学コンポーネントのイメージングが完了すると、次にそれをSpeosに取り込み、フルシステムシミュレーション(自動車の内装など)を実行して、より大きなシステムで光がさまざまなコンポーネントとどのように相互作用するかを確認できるようになります。
Speosでは、さまざまな条件下(日中、夜間、曇りの日、雪の多い状態など)で人がどのように光学デバイスを認識するかを調べ、そのシステム内のすべての材料の現実に近い表面レンダリングも行えます。たとえば、フロントガラスへのクロム材料の反射がドライバーの視界にどのように影響するかを予測できます。
Ansys Speosを使用した日中の太陽光が当たる車両内装のシミュレーション。100GRays。ドライバーの視界を変えるために選択した赤色のレザーと灰色のサテンメタルのデモ。
Ansys Speosを使用した夜間の車両内装のシミュレーション。100GRays。左バックミラーに対するドライバーの視界は、点灯したインジケータの反射によって変化する。
光学系を理解する上でレイトレーシングがどのように役立つかをご覧ください。設計に最適なシミュレーションアプローチに関するご質問は、今すぐAnsysのテクニカルチームにお問い合わせください。
当社はお客様の質問にお答えし、お客様とお話できることを楽しみにしています。Ansysの営業担当が折り返しご連絡いたします。