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フォトニクス: 光力の活用

私たちの生活の中のさまざまな場所で、光が利用されています。スマートフォンのカメラ、車載パーキングセンサー、デスク上のモニターなど、「フォトニクス」と呼ばれる研究分野のおかげで、あらゆる場面で私たちの日常生活がより快適になっています。 

フォトニクスとは

フォトニクスは、光の生成、制御、集束、検出を伴う多分野にわたる研究領域です。 

光は、電磁放射の一種で、電磁界スペクトル全体にわたって広範囲の波長にまたがります。量子化されているため、波または粒子(およびその両方)として振る舞います(たとえば、光が狭いスリットを通過するときは波として振る舞い、ソーラーパネルにぶつかるときにはエネルギーを運ぶ粒子のように振る舞う)。フォトニクスでは、このような異なる振る舞いを用いて、光の力と速度を利用した実用的なアプリケーションを設計します。 

フォトニクス、粒子の波

フォトニクスの適用分野

エレクトロニクスの構成ブロックが電子であるように、光は光子で構成されています。光子は、非常に高速に移動する電磁界エネルギーの小さな粒子です。この高速な特長により、フォトニクスベースのシステムは、次のようなさまざまなアプリケーションにとって魅力的な選択肢となります。

  • ディスプレイおよび消費者向けエレクトロニクス製品: マイクロLEDOLEDLED、およびLCDの輝度は、フォトニクスによるものです。これらのテクノロジーは、スマートフォン、タブレット、テレビの画面を明るくし、鮮やかな色と高解像度をもたらします。
  • 拡張現実(AR)およびバーチャルリアリティ(VR)システム: フォトニクスは、高速な光放出源、集積光導波路および回折格子、フラットオプティクス、光学センサーの組み合わせにより、デジタルと現実の両環境をシームレスに融合させるARデバイスやVRデバイスの没入感をもたらします。 
  • 再生可能エネルギー源: 太陽電池を活用した高効率ソーラーパネルは、化石燃料の環境負荷を軽減しながら、太陽光を捕捉して電気に変換します。LEDは、汎用性が高く、効率的で、より持続可能な照明ソリューションを提供します。
  • データ通信: 光子の比類のない速度と光ファイバーの極めて小さい信号損失を活用することで、長距離通信は大きく変化しました。シリコンフォトニクスをはじめとするフォトニクスのさまざまなイノベーションにより、特にデータセンターにおける短距離通信リンクの状況は変化しました。現在、フォトニクスは高速インターネットには欠かせないテクノロジーとなっており、シームレスなビデオストリーミング、電話会議、リアルタイムのデータ転送を可能にしています。
Photonics

フォトニクスアプリケーション

フォトニクステクノロジーの重要な利点

  • スピード: 光子は最も高速で移動するため、光パルスを使用した情報送信はスピードが重視されるアプリケーションにとって最適です。
  • 帯域幅: 光の特性(広い周波数帯域、複数の波長、最小限の干渉、低信号損失)により、膨大な量の情報を一度に送信できます。
  • エネルギー: フォトニクスベースのシステムは、長距離での信号損失が最小限に抑えられるため、一般的にエネルギー効率が非常に高くなります。
  • サイズ: センサー、マイクロLED、導波路、集積回路などのフォトニクス集積素子を非常にコンパクトにすることで、さまざまなテクノロジーの物理的なフットプリントを最小限に抑えることができます。

フォトニクスと光学

光学とフォトニクスは連携して、光の物理特性を活用したさまざまなアプリケーションを実現しています。密接に関連した分野であるため、明確に区別できないこともあります。その正確な境界については現在も議論が続いていますが、どちらも私たちの日常生活で重要な役割を果たしていることは明らかです。

光学エンジニアは、光の伝搬と材料との相互作用を伴うマクロスケールシステムの設計を専門としており、ミラー、レンズ、プリズムなどの不可欠なコンポーネントを開発しています。これらの設計は、消費者向けエレクトロニクス、ヘルスケア、航空宇宙、防衛システム、通信など、さまざまな業界で採用されています。これらのアプリケーションにおいて、光が持つ波の性質による影響は非常に小さいか、無視できる程度です。

これに対して、フォトニクス分野のエンジニアは、光が持つ波の性質が重要となるマイクロスケール設計を開発するため、次のようなサブ分野を扱います。

  • プラズモニクス: 金属表面における電子の集団振動と光の相互作用を利用して、高度なセンサーやナノスケール光学設計を実現します。
  • ナノフォトニクス: ナノスケールで光を集束することで、新しい機能を実現します。
  • 光電子: 電子と光子の相互作用を活用するデバイスに焦点を当てています。
  • 光ファイバー: 高速データ伝送を容易にします。
  • 量子フォトニクス: コンピューティングや通信分野のアプリケーションのために、光の量子特性を利用します。

フォトニクスの歴史

フォトニクスは比較的新しい分野ですが、テクノロジーの進歩によって光の集束がより強力で効率的になるにつれて、その影響は私たちの生活のより多くの領域に広がってきました。 

  • 20世紀: フォトニクスという分野は、1960年代のレーザーの発明とともに始まりました。1980年代に光ファイバーが普及すると、「フォトニクス」という用語も使われるようになりました。
  • 2000年代初頭: フォトニック結晶は、光学素子の小型化とレーザー効率の向上を可能にしました。ナノフォトニクスとプラズモニクスが登場しました。
  • 2010年代: 確立されたエレクトロニクス設備およびプロセスの高い効率を活用し、シリコンフォトニクスによって、一般的なシリコン基板上にフォトニクス素子が集積されるようになりました。
  • 現在: 量子フォトニクスやバイオフォトニクスなど、フォトニクスのさまざまな適用分野が広がっています。

性能の向上、エネルギー消費量の削減、機能の拡大に対する需要の高まりによって、低消費電力で機能を高密度に集積する必要がある複雑なシステムの必要性が高まっています。その結果、フォトニクス業界では、コンパクトでエネルギー効率の高い集積システムの開発が推進され、業界全体でイノベーションが促進されています。

  • 小型化: スマートフォンのカメラ、光学センサー、マイクロプロジェクターなど、多くのアプリケーションには重量とサイズに関する厳しい制約があります。同様に、スマートグラス、フィットネストラッカー、ARヘッドセットなどのウェアラブルデバイスはすべて、ディスプレイ、センサー、通信用の小型光学コンポーネントに依存しています。小型化されたフォトニックシステムは、ポイントオブケア診断や画像診断などのバイオメディカルシステムにも不可欠です。たとえば、Lab-on-a-chipデバイスでは、光学コンポーネントを統合して血液サンプルを解析し、バイオマーカーを検出できるようになることで、ヘルスケア診断はポータブルで利用しやすくなります。
  • 集積回路: フォトニクス集積回路業界では、データ消費の増加に対応するために、イノベーションの変革の波を目の当たりにしています。データセンター内での高速でエネルギー効率の高いデータ伝送に対する高まる需要に応えるためにCo-Packaged Opticsや光インターコネクトが開発され、遅延を減らして帯域幅を向上させるソリューションが提供されています。
  • 人工知能: フォトニックコンピューティングと人工知能(AI)は、処理能力とデータ処理の限界値を超えて、さらに可能性を広げています。フォトニックチップは、複雑なタスクのためのより高速で効率的な計算を提供します。量子フォトニクスのような新しい分野では、量子コンピューティング、暗号化、安全な通信の実現が期待されています。

フォトニクスエンジニアリングの進歩は、新しい材料、異種統合における最先端の技術、3D-IC集積およびアセンブリ、高度なパッケージング手法、最先端の製造技術など、さまざまな領域で見られるようになるでしょう。次世代のフォトニクスベースのソリューションを設計するために、Ansysの光学およびフォトニクスシミュレーションソフトウェアを使用して、フォトニクスコンポーネント、回路、およびシステムを正確にモデル化できます。これらの高度に相互運用可能なソルバーは、マルチフィジックスおよびマルチスケールのさまざまな課題を解決することで経済成長を促し、未来のテクノロジー開発に活用することが可能です。

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