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自動車の内装照明とは

自動車には、安全性を確保するため、あるいは外観を良くするためなど、さまざまな目的や機能のための各種内装照明や外装照明システムが搭載されています。車両内部にある照明は内装照明と呼ばれ、車内のドライバーと乗客に影響するすべての内部照明を指します。内装照明は車外にいる人には一切影響しません。

具体的には、速度や燃料レベルといった重要な情報を表示するライトや、オイルレベルの低下やエンジン温度の上昇など、問題が発生したときに点灯する各種の警告ランプなどがあります。これらは機能安全を確保するための重要な照明です。また、乗客の快適性を高めたり、インテリアとして、ドアパネルを照らすための照明もあります。 

どの車両にも多数の内装照明システムが搭載されています。商用の照明システムを開発する際は、エンジニアリング設計上の多数の課題を解決しなければなりません。

自動車の内装照明タイプ

内装照明システムは、主に3つのカテゴリに分類されます。それぞれにさまざまなタイプの内装照明を含みます。

  • ディスプレイ照明
  • 車内照明
  • アンビエント照明(アクセント照明)
What is Automotive Interior Lighting

一般的な光源の例を用いた自動車の内装レイアウト

ディスプレイ照明

ディスプレイ照明は、速度、ナビゲーション、エンジンに関する安全情報などをドライバーや乗客に伝達します。最新型の車両には、ダッシュボードの中央にタッチスクリーンなどのディスプレイシステムが搭載されているものもあり、ラジオやBluetoothの設定、アプリの制御、空調の調整、その他の車両空間機能の制御に使用されています。 

ディスプレイ照明の主な例として、以下のものがあります。

  • ダッシュボード照明
  • マルチメディアディスプレイ
  • 自動車の計器盤
  • 衛星ナビゲーション

最新のディスプレイテクノロジーとして、フロントガラス上に投影され、ハンドルのすぐ上に表示される安全照明コンポーネントのクラスタに接続されたヘッドアップディスプレイがあります。こうした警告灯をドライバーの視線上に移動することで、ナビを確認したり、どの警告灯が点灯したかを確認したりするために、道路から目を離すことがなくなります。

車内照明

車内照明は、車内を見やすくするための照明です。一般的な車内照明には、以下のものがあります。

  • ドーム型照明
  • ミラー照明
  • ストレージ照明
  • トランク照明
  • 読書灯
  • グローブボックス照明
  • 車内灯

アンビエント照明

アクセント照明とも呼ばれるアンビエント照明は、車内の雰囲気をより良くして、車内のさまざまなスイッチやボタンを照らすためのものです。アンビエント照明は、車両機能上は重要ではなく、安全上の特定の目的を持つわけではないため、照度が低い光が用いられます。

車両のベルトラインの下に配置されることが多く、安全性や機能的な目的ではなく、乗客の快適性を高めることを目的としています。 

以下に、アンビエント照明の例を挙げます。

  • パワーウィンドウのライト
  • ラジオなどのコントロールノブ周囲のライト
  • フットライト
  • ドアパネルライト
  • カップホルダーのライト
  • 充電ポートのライト

自動車の内装照明設計における考慮事項

What is Automotive Interior Lighting

統合された光学および照明シミュレーションソフトウェアであるAnsys Speos CADでシミュレーションした車両の内装照明

自動車には、さまざまなタイプの内装照明が搭載されているため、エンジニアが性能面と安全面から考慮しなければならない設計上の考慮事項が数多くあります。また、内装照明は、機能よりもインテリアとしての見た目が重視されることが多いため、車両を運転するユーザーも考慮する必要があります。多くの場合、すべての関係者が満足するためには、機能性や見た目、車両全体の雰囲気とバランスを取る必要があります。

What is Automotive Interior Lighting

ドライバーが走行速度をはっきりと確認できるように、スピードメーターの針の輪郭と角度によって、針の先端に向かって光が導かれていく様子を示したSpeosのモデル

スピードメーターの針のような小さなパーツは、簡単な設計に見えますが、その単純な外観とは裏腹に非常に複雑な工程を経ています。 

この針は、エッチング、コーティング、および塗装プロセスを経て、光が通過するように設定された光学透明度に調整されています。針の裏側にプリズムが採用される場合もあります。こうしたコーティングや塗料は薄膜層であるため、設計および製造には高い精度が要求されます。 

計器盤上の小さなグラフィックについても、プラスチックを目的の透明度にエッチングして、異なる色の光を放射できるようにすることが必要です。

最適な色の選択

現在は、さまざまなLEDオプションと色の組み合わせを利用することで、より多くの選択肢を消費者に提示できるようになりました。ただし、豊富なカラーシステムは従来のLED照明キットよりも高価であるため、設計の機能性に対するコストをある程度抑える必要があります。

ダッシュボードや計器盤上のグラフィックは、すぐに確認が必要な重要な問題を示す安全警告灯です。現在、エンジニアはさまざまなタイプの照明キットを利用できるため、内装照明システムに対してより高度なカスタマイズが可能となっています。エンジニアが利用できる照明オプションの例を以下に挙げます。

  • LEDストリップ 
  • LEDモジュール
  • LED光ファイバー
  • マイクロLED
  • 白色LED
  • マルチカラー/RGB LED
  • LED電球
  • 従来型/白熱電球

赤色は緊急ですぐに確認が必要なもの、オレンジ色はやや緊急で比較的すぐに確認が必要なものというように、さまざまな色が使われているため、どの照明キットを使用する場合も、均一で正確な色を使用する必要があります。

色が正確でない場合、ドライバーが車両や乗客に危険を及ぼすような重大な問題を見逃す可能性があります。緑色のエンジンチェックライトは、赤色のライトほど緊急性を感じられません。

オーバーヘッドランプの実装スペースの設計

内装照明の設計においてオーバーヘッドランプの実装スペースをどのように最適化するかという問題も考慮しなければなりません。実装スペースは、インテリアとしてドライバーが違和感を持たないことが必要であるため、優先して考慮すべき事項です。さらに、照明をオンにしたときにどの位置にいても車内の様子を確認できるように、ライトの出力に関する要件も満たす必要があります。 

そのため、オーバーヘッドランプは、スタイルと機能性の間でトレードオフが必要になる設計上の課題となります。設計プロセスでは、エンジニアリングと見た目の両面から有益となる設計を得るために、多くのやり取りが必要です。

さらに、ランプ内部のさまざまなパーツについても考慮が必要です。たとえば、光の伝搬と光線を当てる向きを補助するために、レンズに表面加工やプリズムが施されることもあります。あるいは、レンズで一定の透明度が必要であれば、それも正確に設計する必要があります。

また、設計で使用するLED(または電球)の数も決定しなければなりません。この個数によって、ランプ内のレンズやその他の光学コンポーネントの機能要件に影響を及ぼすからです。

シングルLEDとマルチLEDの設計に関する考慮事項

LEDを1つから2つに増やすと、コストが大幅に増加するため、設計上のさまざまな考慮事項を組み込めるように、早い段階に決定しておく必要があります。その一例がドアパネルの照明です。光の均一な出力を達成できるパイプの曲率と長さを得るために、複数のLEDが必要となる場合もあります。

同様に、一部のLEDはマルチカラーによる機能や照明効果を提供するため、コストと機能性を念頭に置きながらLEDの種類を検討する必要があります。RGB LEDは、照明システムの色をカスタマイズするための柔軟性と自由度が高いものの、従来型のLEDよりもはるかに高価です。場合によっては、製造する車両台数に基づいて、内装に従来型のLEDを採用するかどうかを決める必要があります。

Ansys Speosで設計上の課題に対応

Ansys Speosなどのシミュレーションソフトウェアを使用して設計プロセスを最適化することで、作業を効率化しながら、時間とコストを節約できます。Speosは、光学システムの照度と性能を予測する物理ベースのモデリングツールです。設計者やエンジニアは、Speosを使用することで、プロトタイプを作製することなく光学系がどのように動作するかを確認できるようになります。Speosは、初期の概念実現可能性から妥当性確認まで、あらゆる段階で使用できます。

設計の早い段階でSpeosを使用して、照明システムの色、材料、配置候補を検討し、光がどのように見えるか、照明条件下で車両がどのように見えるかを可視化できます。これにより、設計者やエンジニアは、重要な意思決定を行う前に、車内に実装されたシステムを確認できるようになります。照明システムや光学系をどこに配置するかを決定した後も、Speosを使用して、制限のある実装スペースを考慮しながら設計自体を最適化でき、オプトメカニカル面から異なるコンポーネント構成に基づいて、より正確なCAD設計を推進できるようになります。

さらに、開発サイクルの後期には、Speosを使用して、照明システムの挙動、外観、および他の内装照明システムとの調和を検証できます。 

開発の後期段階では、一般的にすべての電気的、機械的、光学的要件を満たし、完全にモデル化された車両の内装と環境照明条件(日中、夕暮れ、夜間)とともに評価される成熟度の高い照明システムが含まれています。これらすべてのシナリオをSpeosモデルに取り込み、没入型の検証環境を構築できます。

自動車内装照明の今後のトレンド

これからの自動車の内装照明のトレンドとして、短期的および長期的なさまざまな傾向を以下に示します。

自動運転車の安全ライト

ドライバーに安全情報を示すアンビエント照明は、特に自動運転車や半自動運転車の台頭に伴って、より一般的になっています。

自動運転車への関心が高まるにつれて、特定の色(赤色など)で点滅するライトなど、連動する光パルスを使用してドライバーに安全上の問題を通知したり、バイクに衝突しそうな危険性がある場合やドライバーが居眠りしている場合にハンドルを握るように警告を出す、高度なディスプレイも開発されています。

スマートガラス

フロントガラスやガラス製の他のコンポーネントの表面や内部に放射されるナノマイクロスケールのフォトニックコンポーネントを採用した、スマートガラスや拡張現実ディスプレイも増加しています。これらはヘッドアップディスプレイに加えて、ドアパネルやサンルーフガラスなど、通常は情報が表示されないような場所にも設置できます。

スマートガラスを使用して従来とは異なる場所に情報を表示するコンセプト車両は多数見られ、すでに多くの高級モデルではスマートガラスを採用しています。

持続可能な材料

照明システムが最適に機能することを保証しながら、環境に優しい新材料やリサイクルされた材料を採用することで、最終的には、より効率的で持続可能性に優れた照明システムが開発されます。

自動車の内装照明にデジタルツールを活用

自動車の内装照明は、外装照明よりも規制が少ないため、設計者はより多くの材料から、各車両に合わせたそれぞれの材料を選択してシステムをカスタマイズできます。 

しかし一方で、選択肢が増えることで利用できる照明オプションの組み合わせが増えるため、設計がより複雑になります。 

設計および妥当性確認プロセスでは、Ansys Speosなどのシミュレーションソフトウェアを使用して、設計プロセス全体で使用する最適な材料と内装照明キットを決定できます。また、Speosを使用することで、高価なプロトタイプを作製せずに、スタイルと機能性でバランスを取ることもできます。

Speosを使用して内装照明設計の課題を解決する方法について、今すぐAnsysのテクニカルチームにお問い合わせください

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