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Ansysブログ

March 3, 2023

自動車の内装照明の快適性を最適化

私たちが、人間の知覚に合わせた内装照明の最適化について話すとき、その焦点は、安全性とドライバーの快適性の2つに絞られます。可能な限り最高の体験ができるように内装照明が設計されていれば、ドライバーは困難または予期せぬ運転状況に直面しても、疲労が少なく済みます。機能的なメリットに加えて、内装照明は車両をスタイリッシュまたはモダンに見せたり、リラックスした雰囲気にしたり、単にクールに演出したりすることもできます。今日、車両のスタイリングにおいて中心的な役割を担っているのが照明なのです(「ライトは新しい車両装飾の要素だ 」と主張する人もいます)。

自動車の内装照明には、衛星ナビゲーション/GPS照明、オーバーヘッド照明、収納灯、読書灯のほか、ライトガイドやライトパイプなどのアンビエント照明があります。これらの照明はそれぞれ、ドライバーの快適性と安全性を高める役割を果たします。エンジニアは、均質性などの光学的要件と、性能やコストに関連する他の主要な仕様とのバランスをとる必要がありますが、マルチフィジックスシミュレーションを活用することで、エンジニアリング設計の主要な制約を遵守しつつ、人間中心設計の複雑さを考慮することができます。

アンビエント照明に関する設計上の検討事項

エンジニアは、車両設計に最適な照明構成と材料選択を追求する中で多くの光学的課題に直面しています。車内アンビエント照明に関連するドライバーの快適性に強い影響を与える要因には以下のものがあります。

光漏れ

エンジニアは、シミュレーションを活用することで、ライトガイドなどのコンポーネントをその場で評価し、光の挙動を観察することができます(図1)。これにより、不具合を修正する機会を見極めることもできます。プリズムや内部部品を最適化することで、ライトガイド自体は改善できますが、ガイドをシステムに統合しなければ、光の挙動を現実的に理解することはできません。こうした分析を設計プロセスの早い段階で行うことで、コストを意識した修正の機会を増やすことができます。 

Tracing rays 3D

図1.3Dビューで光線をトレースすることで、光漏れの原因を特定できる。

測色

エンジニアはシミュレーションを利用することにより、さまざまなCIE色空間の色座標(図2)を測定して、これらが仕様を満たしていることを確認し、照明光源の品質を評価することができます。

CIE color spaces

図2.RGBの修正前(左上)と修正後(左下)の色の差と、対応するCIE 1931色座標(右)。

ディスプレイの視認性

エンジニアは、相対的な視認性能(ISO 15008:2003参照)に基づいて、できるだけ高い解像度(かつ低コスト)のディスプレイを導入することで、読みやすさを向上させています。シミュレーションソフトウェアでは、相対的な視認性能テストを実施し、文字のサイズ、背景色、前景色、間隔を考慮しながらコントラストを計算することができます。テストは、テキストや画像がドライバーにとって読みやすいかどうかを理解するのに役立ちます。

太陽光の反射

暗闇や厳しい日差しの中でテストを行うことで、よりリスクの高い条件を考慮し、光源の品質をより正確に把握することができます。太陽光の反射でナビゲーションマップが見えなくなれば、安全性が脅かされる可能性があります。シミュレーションは、ドライバーの視野内に影響する太陽の位置を特定するのに役立ちます(図3)。これにより、統一グレア評価値を求め、グレアがどこで発生する可能性があるか、またドライバーがグレアに対してどの程度対処可能(または対処不可能)かを理解することができます。

Critical sun positions

図3.Ansys Speosを使用して、ドライバーの視点に大きな影響を及ぼす太陽の位置をテストしている様子。

ダッシュボードのベーリンググレアに関する設計上の検討事項

太陽光が車両のダッシュボードに当たり、反射すると、ドライバーや同乗者はグレアを感じます。エンジニアは、太陽の位置を一定に保ちながら、ダッシュボード上の素材を革やプラスチックに変えてシミュレーションを行うことで、乗員が経験するベーリンググレアのレベルをより深く理解することができます。また、装飾的なクローム要素がドライバーの邪魔をしたり、大きな影響を及ぼす太陽の位置で潜在的な安全性リスクを発生させたりすることなく、スタイリッシュで機能的であるかどうかを確認することも可能です。1つのトリム材に対して、さまざまな太陽の位置を評価することもできます。

偏光サングラスの影響

多くのディスプレイは偏光を利用しており、車内で偏光サングラスをかけると、ディスプレイが読み取りにくくなる可能性があります。メーカー各社は、車内における偏光の調査だけでなく、フロントガラス用の偏光コーティングのテストにもシミュレーションを活用しています。この偏光コーティングは、車内に入れたくない光線を反射します。 

輝度

車両を設計する際には、放射照度や強度などの光量をシミュレーションすることが重要ですが、最も重要なのは、人間の目で知覚される光です。特定の地点に到達する光の量を測定するためには、輝度をシミュレーションすることが極めて重要です。たとえば、図3では、ドライバーの目の位置がその地点ということになります。エンジニアは、反応時間、目の状態、年齢などのパラメータに基づいて、人間の目が知覚するものとともに輝度を表示することで、より高度な分析を行うことができます。たとえば、知覚されるグレアの影響は、車内の乗員の年齢によって異なります。エンジニアは、規制や測定可能な仕様に対するテストに加え、人間の視覚のシミュレーションを行うことで、製品があたかも目の前にあるかのように仮想的に体験することができます(図4)。 

Tail lamp simulation results

図4.Ansys Speosによるテールランプのシミュレーション結果。

これからの証明設計

技術が発展し続ける中、ドライバーや同乗者が自動運転機能をより快適に利用できるようにする上で重要な役割を果たすことができるのが、ヘッドアップディスプレイ(HUD)などの内装照明技術です。HUDは、環境検出を活用してフィードバックを提供するとともに、車両のセンサーが感知している情報を明示的に表示します。こうしたシステムは、ドライバーが安心して運転をできるようにする効果があります。一部のメーカーは、自動運転車が停止した際に、横断歩道マークのようなシンボルを投影することで、歩行者にも安心感を与える取り組みも行っています。

自動車照明と照明最適化に対応するAnsysのシミュレーションツールおよびワークフローの詳細については、ウェビナー『信頼性の高い革新的な自動車照明設計のためのリアルタイム光学シミュレーション』をご覧ください。