Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
25のチームが、独自に設計した木製車両のレースに参加しようとしています。ここは1985年のフランスです。彼らが参加するのは初開催となるShell Eco-marathonです。このレースでは、できる限り少ないエネルギーで、最も長い距離を走行できた車両が優勝します。これは持続可能なモビリティとエネルギー最適化に向けた取り組みです。
40年近く経った今も、Shell Eco-marathonが掲げる目標は同じですが、参加するチームや車両は少しずつ変化してきました。初回は25チームが参加したShell Eco-marathonは年々拡大し、現在は毎年300チーム以上が参加する世界的なレースになりました。参加チームは、最もエネルギー効率の高い車両を設計、作製、運転するために、より新しい革新的な燃料とテクノロジーを採用しています。
その1つがポーランドのルブリン工科大学のHydrogreen学生チームです。Hydrogreenは、のべ150人以上のメンバーを擁し、Shell Eco-marathonに10回参加してきた実績のあるチームです。このチームは、Ansysアカデミックプログラムの学生チームパートナーシップを通じてAnsysのシミュレーションツールを導入し、高性能な水素駆動車両「HYDROS」でレースに参加しています。Jacek Czarnigowski教授の指導の下、学生たちは研究で得た知識やスキルを車両の開発に応用し、さらに知識を深めています。Czarnigowski教授は、この経験を通じて、学生は新しいテクノロジーに取り組むだけでなく、創造的に考える力を得ることもできると述べています。
HYDROS(上)とともに写るHydrogreen学生チームとそのロゴ(下)
Hydrogreenチームは10年以上にわたり、HYDROSの開発を進めてきました。紙に描いたスケッチから開始し、機械、エレクトロニクス、そして制御の面で改良し続け、機能する車両を実現しました。
HYDROSの複雑な設計は、長い期間にわたって進化し続けてきました。Czarnigowski教授によると、現在のHYDROSは、3つのエネルギー源(リチウムイオンバッテリ、電気二重層コンデンサ、水素燃料電池)を使用する2つの独立した電気システムで構成されています。これらのシステムで生成された電気は車両全体に供給され、複数の電力消費装置を駆動します。設計は毎年更新され、その際、チームは以下のことに焦点を当てています。
Czarnigowski教授は次のように述べています。「こうした要件が課せられているため、システムアーキテクチャを設計するには優れた計画が必要です。」この安全で効果的な設計を実現するために、Hydrogreenチームは、組込みソフトウェア製品のコレクションであるAnsys SCADEを採用し、昨年は主にシステムおよびソフトウェアアーキテクチャモデリングアプリケーションであるAnsys SCADE Architectを使用しました。
Czarnigowski教授は次のように述べています。「Ansys SCADE Architectを導入したことで、変更に対応できる柔軟性を持って、グループとして作業でき、そして何よりも重要なこととして、組込みシステムで要求されるセキュリティ要件への準拠を保証できるような方法でシステムを設計できるようになりました。」このAnsys SCADE Architectを使用して、HYDROSの車両制御および管理ソフトウェア(VCMS)の設計と開発が行われました。しかし、今年のレースに向けてシミュレーションが活用された場面は、これだけではありません。
Hydrogreenチームは、Shell Eco-marathonに参加する最初のステップとして、HYDROS車両のシステム全体を調査する技術検証ステージに合格する必要がありました。炭素繊維を使用した車輪の禁止や水素漏れに関する安全上の懸念への対応など、いくつかのルール変更が直前に発表されたため、今年は特に困難なステージとなりました。
Ansysのシミュレーションソフトウェアを使用しているHydrogreenチーム
Shell Eco-marathonにて検査を受けるHYDROS
このハードルがあったにもかかわらず、Hydrogreenチームは迅速に適応し、その成果を示すことで安全性の高い設計であることを証明しました。SCADEを使用したことで、設計の更新を容易に行い、審査員から要求された変更ごとに適切なドキュメントを作成できました。Czarnigowski教授は次のように述べています。「入念に開発され、適切にドキュメント化されたアーキテクチャにより、検査に合格できました。」
HYDROSの機能を示した図
今年のレースへの参加を目指した14台の車両のうち、これらの厳しい要件をクリアしたのは、Hydrogreenチームを含む10台のみでした。チームのドライバーでありITを専攻するWeronika Nowak氏によれば、チームは検査に合格しただけでなく、技術検査に最初に合格したチームの1つであったそうです。
HYDROSでレースに勝つには、幅広いスキルセットが必要です。Czarnigowski教授は次のように述べています。「このチームは、機械工学、電気工学、コンピュータサイエンス、メカトロニクス、環境保護、マーケティング、管理、基礎工学など、さまざまな分野の学生を集めて、共通の目標に向かって取り組んでいます。」
このようなグループでは、メンバーがさまざまな方向から問題に取り組みますが、それぞれの分野独自の言語を使用することも珍しくありません。SCADEは、Hydrogreenチームのメンバーがより良いコミュニケーションとコラボレーションを行うための優れたツールになります。SCADEモデルを使用することで、システム設計を1か所にまとめて、異なるグループ間で情報をより適切に共有できるようになります。
Hydrogreenチームのメンバー
Czarnigowski教授は、SCADEは学生間の共通言語となり、学生は分野に関係なく、グループ全体で科学の楽しさを体験できている、と述べています。
HYDROSを走行させるための準備
Czarnigowski教授は、Hydrogreenチームの次のステップはHYDROS 2.0の開発であると述べています。そのために、車体の設計と最適化には流体シミュレーションソフトウェアであるAnsys Fluent、軽量で耐久性のあるモノコック構造、サスペンション、制御システムの設計には構造有限要素法解析(FEA)ソフトウェアであるAnsys Mechanical、さらに制御コードとヒューマンマシンインターフェースコンポーネントの設計やHYDRO 2.0で実行するコードの自動生成にはモデルベースの設計ツールであるAnsys SCADE SuiteおよびSCADE Displayを使用するなど、Ansys製品の用途を拡大することを計画しています。さらに、システムの安全性と連動してエネルギーの流れを制御するアルゴリズムを開発する予定です。Czarnigowski教授は、これにより、チームのパフォーマンスを最適化し、結果を改善することを考えています。
また、多くの学生が、このプロジェクトで得た経験を、この分野でのキャリアへの足がかりとして活用しています。Czarnigowski教授は次のように述べています。「Hydrogreenチームは、ポーランドでは著名なチームです。権威あるShell Eco-marathonレースに参加することで、ポーランド国内のみならず、世界中の優れた企業のインターンシップに参加して、その後のキャリアを開拓する機会を得ることができると考えています。」
チームワーク、自信、プレッシャーの下で働く能力、異分野間コラボレーションの経験、そして習得した時間管理スキルも非常に重要です。
また、将来を見据えて、ルブリン工科大学はテクノロジー分野でのキャリアを検討している女性をサポートしたいと考えています。同大学は、そのためのメンターシッププログラムを開始しており、Nowak氏のような優秀な学生が、Hydrogreenチームが追求するような科学、技術、工学、数学(STEM)のキャリアに興味を持つ女性にインスピレーションを与えることを望んでいます。
Ansysも、STEM教育の推進を支援し、手頃な価格のシミュレーションツールを提供することで意欲ある学生を支援することを優先事項としています。詳細については、Ansys Student設計チームパートナーシップをご覧ください。
Ansys Advantageブログでは、専門家が投稿した記事を公開しています。Ansysのシミュレーションが未来のテクノロジーにつながるイノベーションをどのように推進しているかについて最新の情報をご覧ください。