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チップから船舶まで: Ansys SimAIプラットフォームで設計を最適化

5月 29, 2024

1:00 Min

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Mazen El Hout | Ansys、プロダクトマーケティング担当シニアマネージャー
Jennifer Procario | Ansys、シニアマーケティングコミュニケーションライター
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業界や業務に関係なく、人工知能(AI)の普及によって、まだ変革が起きていないワークフローも近い将来に大きく変わることでしょう。特に、設計や開発にシミュレーションを導入して製品を最適化するエンジニアや設計者などにとって、AIは、最適化をさらに強化する唯一無二のツールです。

AIの力とクラウドコンピューティングを組み合わせたAnsysの最新のAIベーステクノロジーであるAnsys SimAIプラットフォームは、イノベーションのレベルを急速に高めます。物理場を選ばず、クラウドネイティブなSimAIプラットフォームを使用すると、過去に生成されたデータ(Ansysのツール以外で作成されたデータも含む)を使用してAIモデルをトレーニングし、エレクトロニクス、構造、流体などの幅広いエンジニアリング領域にわたり、数分で新しい設計の性能を評価できるようになります。

このSaaS(Software-as-a-Service)アプリケーションは、Ansysシミュレーションの予測精度と、クラウドを介した生成AIのスピードを組み合わせたものです。この組み合わせにより、計算負荷の高いプロジェクトのあらゆる設計段階でモデル性能が10~100倍向上します。SimAIによって、チップから船舶までの4つの異なるシナリオで、設計をどのように最適化できるかを見てみましょう。

SimAI

Ansys SimAIにより、あらゆる設計段階でモデル性能の予測が10~100倍向上し、シミュレーション結果をわずか数分で得られるようになります。

チップ設計を強化

チップ設計には、非線形で予期しない挙動を伴う複雑なエンジニアリングが必要です。シミュレーション解析を実行すると、電気、熱、構造特性に関する重要な知見を得られるようになり、情報を設計に活用できるだけでなく、効率の向上、開発の加速、検証の確実性が実現されます。それでも、設計反復の高速化を目指す際、最もロバストなシミュレーションワークフローでさえ作業を妨げ、時間がかかりすぎると感じることでしょう。

これは、チップ設計をより迅速に探索する方法を模索していた、あるチームのケースでも同様でした。このチームが従来採用していたアプローチでは、領域離散化への依存性とチップモデリングに必要な要素数が原因で、作業速度が低下していました。また、拡張性にも限界がありました。モデルにわずかな変更を加えた場合や、プロセスのわずかな中断があった場合には、シミュレーション時間が大幅に増加します。また、ダイのサイズや熱伝達係数(HTC)値など、チップパラメータの空間的分布の不確かさやバリエーションを効率的に表現してマッピングすることも困難でした。

Chips

SimAIプラットフォームでは、従来のシミュレーション手法と比較して、設計変更全体で温度マップを20~80倍高速に予測するなど、チップの熱的信頼性評価が最適化されます。

このチームは、Ansys Mechanical Parametric Design Language(MAPDL)とSimAIツールを統合することで、設計プロセスの早い段階でチップの熱的信頼性を評価して、ワークフローをスピードアップすることができました。MAPDLは、Ansys Mechanicalの有限要素法解析(FEA)ソルバーを使用して、シミュレーションタスクを自動化し、ワークフローを効率化できるスクリプト言語です。

SimAIは、基本的にはデータのアップロード、AIモデルのトレーニング、そして予測の3つの簡単なステップを実行します。このチームは、Ansys Mechanicalのシミュレーション結果を使用し、2,250件の異なるチップ伝熱シミュレーションのデータセットに基づいてAIモデルを作成しました。SimAIでは、この知見を用いて、1分以内に温度分布マップを迅速に予測できました。ground truthデータと予測値の最大温度差は、0.5%未満でした。AI予測により、熱的に重要な位置が正確に特定されました。

チップ設計および熱的信頼性評価のためにSimAIツールを導入すると、次のようなメリットがあります。

  • 従来のシミュレーション手法よりも約20倍高速なオンチップ熱ソリューションの迅速な評価と、さまざまなシステムシナリオの迅速な解析
  • 設計変更にわたる温度マップの高速かつ一貫性のある予測(約20~80倍高速化)
  • アダプティブボリュームメッシングに関連した手間のかかるタスクを排除
  • 次世代チップ設計の開発ライフサイクルを短縮

エンジンブラケットを向上

航空宇宙分野における構造解析は、たとえ対象が最も小さな部品であっても、空力の評価と同じくらい重要です。ジェットエンジンブラケット(取り付けブラケット)について考えてみましょう。ジェットエンジンブラケットは、エンジンそのものと比べると小さい部品ですが、エンジンの重量を支える不可欠なパーツです。

そのため、重量とロバスト性の構造要件と制約を満たすようなジェットエンジンブラケット設計の開発は、非常に困難な高度なプロセスとなります。新規設計時には、既存の設計を参考にするなど、過去のプロジェクトで得た知識を活用することも重要です。SimAIは、こうしたワークフローにも役立ちます。

ある事例では、Ansys Discoveryの3D設計モデリング機能やAnsys optiSLangのプロセス統合および設計最適化機能を含むマルチツールワークフローを使用して、AIモデルを作成しました。このモデルのトレーニングには、トポロジーが異なるさまざまなブラケット設計を含む約250個のサンプルを使用しました。これまでのシミュレーションデータから得た知見を活用することで、新しい形状の挙動を数秒以内に予測できました。将来的に、異なる設計を使用して同じAIモデルを再トレーニングし、新しい知見を得ることも可能です。

3DモデリングソフトウェアのDiscoveryでは、トレーニングなしにすぐにあらゆる設計を正確かつ迅速にシミュレーションできます。SimAIは、シミュレーションを実行した設計空間内で極めて迅速に予測を行い、適用されるシナリオの最適化、サイズ設定、選択に活用することができます。DiscoveryとSimAIの両方のプラットフォームを活用することで、より正確なデータを生成し、トレーニングプロセスを充実させ、将来の製品挙動に関する幅広い知見を得ることが可能です。

ジェットエンジンブラケット設計のためにSimAIを導入すると、次のようなメリットがあります。

  • 材料の廃棄量を削減するだけではなく、使用する材料の量も削減できます。不採用となった設計もナレッジソースの1つになり、すべて有益なデータとなります。
  • CADとマルチフィジックスシミュレーション間の移行が容易で、ワークフローを最大90%削減できます。
  • シミュレーションの専門家でなくとも、チーム全員が活用できます。AIガイドのサポートがあるため、物理学の深い知識は必要ありません。
Crackets

AIモデルは、予測ごとに信頼度レベルを提供します。グラフに示すように、信頼度レベルはトレーニングサンプル数に応じて増加します。

自動車の空力特性を向上

環境への懸念が世界中で高まる中、自動車メーカーは二酸化炭素(CO2)排出量の削減に向けて一段と厳しくなる要求事項にも対応しなければなりません。国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP: Worldwide Harmonized Light Vehicles Test Procedure)など、多くの削減計画やガイドラインにより、自動車メーカーは今後発売する新車の全モデルの設計に対して空力性能を評価することが要求されています。

しかし、風洞試験は時間とコストのかかるソリューションであり、次世代の電気自動車を推進するためには開発時間を短縮することが重要です。要件を満たし、他社との競争力を維持して、コストを抑えるためには、空力性能を予測するためのシミュレーションを迅速に実行することが不可欠です。

ある設計チームは、SUV車の空力性能を評価するために、SimAIプラットフォームと数値流体力学(CFD)ソフトウェアのAnsys Fluentを組み合わせて使用しました。このチームは、約50件のCFD結果を使用して、バックミラー、スキーラック、スポイラーなど、車両の外装形状のバリエーションやトポロジー変化を含めたAIモデルを作成しました。AIベースのソフトウェアを使用したことで、新しいSUV車の外装形状を1分以内に予測できました。また、CFD結果と比較した場合、SimAIによる抗力の誤差は0.5%未満であること、表面摩擦場と後流トポロジーを含む、流れの特性についても正確な予測が行われていたことが分かりました。

Aerodynamics of car

SimAIの機能により、自動車の空力設計は最大10~100倍高速化することが可能です。

自動車の空力評価のためにSimAIプラットフォームを導入すると、次のようなメリットがあります。

  • 従来のシミュレーション手法と比較して、20倍の設計代替案を評でき、設計最適化も迅速になります。
  • ジオメトリ構造に一貫性がない場合でも、設計の早期段階や前世代の車両に対して過去に実行したCFDシミュレーションデータを活用して、設計変更にわたり一貫した空力性能を10~100倍のスピードで迅速に予測できます。
  • プロセスの早い段階にシミュレーションを組み込むことで、設計プロセスを迅速化し、コストを削減できます。これにより、設計者はすべての設計段階にわたり、高速で信頼性の高い空力予測を組み込むことができます。

データに基づく意思決定で船体設計を加速化

自動車業界と同様に、海運会社も排出量の削減に取り組んでいます。その一例が、国際海事機関(IMO: International Maritime Organization)による国際海運事業での排出量削減の推進です。その1つの方法が、エネルギー効率や燃料節約に直結する船体形状を最適化することで船体抵抗を改善することです。ただし、さまざまな変数を伴う複数の船体設計を一度に評価するには、高速で効率的なシミュレーションが必要です。

エンジニアは、SimAIツールを使用して、船体の形状バリエーション、さらには喫水や船体速度などの運用条件を含む、288件のCFD結果を使用してAIモデルを作成しました。SimAIは、新しい最適化された船体ジオメトリを1分以内に予測しました。SimAIで得た抵抗の誤差は、CFDシミュレーション結果と比較して5%未満であり、波パターンの予測も完璧でした。

船体設計のためにSimAIを導入すると、次のようなメリットがあります。

  • わずか数分以内に新しい船体設計の性能を高速に評価
  • 設計の早期段階において、データに基づいた意思決定が可能
  • 作業時間を削減し、設計調査など、より重要でイノベーティブなタスクのために多くの時間を割くことができる

詳細については、ホワイトペーパー「Ansys SimAIを使用して船体設計を改善する方法」をダウンロードしてください。

Ship hull

数値流体力学(CFD)などの従来のシミュレーション手法とSimAIツールを組み合わせることで、新しい船体形状を1分以内に予測できます。

AIを活用したシミュレーションを採用

AIおよび機械学習(ML)手法は、半導体から航空宇宙、自動車、海運までの幅広い業界での設計や開発に導入されています。AI/MLをシミュレーションおよびCAEと統合することで、さまざまな分野でマルチフィジックスやエンジニアリングの課題をより迅速かつ正確に解決し、設計探索と最適化を強化できるようになります。前述したように、このAI/MLを活用した最適化により、効率が向上し、コストが削減でき、結果として製品の品質が向上します。

エンジニアや設計者は、SimAIを使用することで、過去のシミュレーションデータや測定データを活用して、AIサロゲートモデルを作成してトレーニングできます。このAIモデルを使用すれば、数日や数時間ではなく、わずか数分で評価を行えるようになり、設計プロセスが加速されます。

チップから船舶までの設計を最適化できるプラットフォームの詳細については、近日開催されるウェビナーシリーズ「AIでシミュレーションを加速」でご紹介します。ぜひウェビナー視聴をご登録ください。


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Mazen El Hout
プロダクトマーケティング担当シニアマネージャー

Mazen El Hout

Mazen El Houtは、安全システムチームのプロダクトマネージャーです。デモの作成や技術的な製品マーケティングを担当しています。

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