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Ansysブログ

February 7, 2022

カスタムメイドチップ時代の幕開け

2021年に発生した深刻な半導体チップ不足は、数十億ドルの収益損失となり、特に自動車業界に打撃を与えました。これは各自動車メーカーが新型コロナ禍の影響を的確に見積もれなかったことが原因です。自動車メーカーがチップの発注をキャンセルする中、電子製品の販売は好調を維持し、自動車の需要が回復したときには自動車メーカーがチップを入手できなくなりました。明確な解決策は確立されていませんが、バランスのとれたファウンドリ生産能力が必要であることが明らかになりました。このニーズに応えるために、Intel Foundry Services(IFS)などの事業が設立され、自動車メーカーや独自のカスタムメイドチップを設計する他の企業が革新的なプロセステクノロジーを利用できるようになりました。

カスタムメイドチップ

2022年の大きなトレンドの1つであるカスタムメイドチップは、これから長期にわたって影響をもたらすことが予想されます。2021年には、Apple社、Meta社、Amazon社、Google社、Tesla社など、その先見性とイノベーションが高く評価されている革新的な企業がすでにカスタムメイドチップを設計しています。こうした企業は、特にビッグデータと機械学習(ML)の分野で競争上の優位性を維持するために、カスタムメイドで最適化されたチップが不可欠であると考えています。こうした動きは、これからの半導体業界を大きく変えていくでしょう。主に以下の影響が考えられます。

  • 現在、カスタムメイドチップはシステム設計の経験を持つシステム企業によって設計されています。半導体および電子設計自動化(EDA)企業は、新しい考え方にあわせて開発する製品を決める必要があります。
  • 半導体技術に対する要求が厳しくなっています。カスタムメイドチップに必要な高度な集積システムの要求を満たすためには、優れた半導体および設計技術を開発して展開する必要があります。Intel社をはじめとする多くの企業が、ムーアの法則や2.5D-ICおよび3D-ICなどの「More-than-Moore」を推進しながら、この問題に対応しようとしています。
  • マルチフィジックスシミュレーションに対する需要と課題が増大しています。カスタムメイドチップがシステムの特性にあわせて複雑さを増すにつれて、IC設計におけるマルチフィジックス解析の必要性も増しています。電磁界、熱、応力などの物理特性をそれぞれ解析するだけでなく、相互に影響し合うこれらの物理特性を同時に解析することが設計時に求められます。
  • オープンなマルチフィジックスプラットフォームに対するニーズが急増します。どのEDA企業も、単独でカスタムメイドチップ設計のすべての要求を満たすことはできません。単一のベンダーソリューションでは不十分であり、EDA企業が協力してソリューションを提供する必要があります。 

カスタムメイドチップ時代の課題を解決

半導体不足の問題はいずれは解消するでしょう。カスタムメイドチップの時代はまだ始まったばかりで、それに伴う課題も徐々に明らかになります。しかし、従来の半導体企業が設計および定義した汎用チップに頼らず、特定の製品に最適なチップを設計できることを認識し始めた企業が増えているため、将来の見通しは明るいでしょう。そうした状況を実現するには、業界の協調的な取り組みが必要です。

IFSは、このコミュニティエコシステムの確立に向けて主導的な役割を担い、ファウンドリのお客様が半導体製品の概念から実装までを完全に実現できるようにするための包括的なアライアンスであるIFS Acceleratorを立ち上げました。このアライアンスでは、クラス最高のEDA、知的財産(IP)、および設計のサービスプロバイダが協力し、幅広い機能を活用して、Intel社のプロセステクノロジーとのシームレスなインターフェースを提供します。Ansysは、この新たなエコシステムで一翼を担うことを目指します。長年にわたり、Ansysはマルチフィジックスシミュレーションを導入する企業の信頼できるパートナーとして高く評価されてきました。マルチフィジックス要件を満たすカスタムメイドチップを求めるお客様からAnsysのソリューションは広く認知されており、システムレベルではAnsys HFSS、チップレベルではAnsys RedHawk-SCなど、業界標準のマルチフィジックスツールを見つけることができます。Ansysは、他のすべてのEDAプロバイダが提供するよりも多くの優れたマルチフィジックスシミュレータを提供しています。

優れたマルチフィジックスシミュレータ

Intel Product & Design Ecosystem Enablementのバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーであるRahul Goyal氏は、先日発表されたプレスリリースで次のように述べています。「Intelのファウンドリ構想を大きく前進させるIFS Accelerator – EDAアライアンスを正式に立ち上げることができ、大変嬉しく思います。Ansysや他のパートナー各社の協力により、このアライアンスは、当社の知識、リソース、そして電子設計を推進したいという共通認識をもって、高度なフローや手法を生み出し、生産性を向上させていくでしょう。」

Ansysのオープンなマルチフィジックスプラットフォームにより、カスタムメイドチップ設計者は選択したEDAフローに関係なく、これらのツールを利用できます。その代表的な例としては、RedHawk-SCのSynopsys社のフローへの統合、さらには3D-IC Compilerへの統合が挙げられます。Cadence社のお客様も、マルチフィジックス解析のニーズを満たすAnsysの製品に対して非常に高い信頼を寄せています。 

電子設計のためのマルチフィジックスソリューション

Intel社の助言の下、Ansysは、IFS Accelerator - EDAアライアンス設立時から参加している他のEDAベンダー3社と協力して、IFSのお客様のニーズを満たすことに尽力します。統合の取り組みを継続し、Intel社と緊密に連携して、IFSで提供されるIntel社の半導体技術に対してAnsysのマルチフィジックスツールが認定されるように取り組みます。Intel社のチップの多くは、すでにAnsysのマルチフィジックスツールを活用して製造されています。

カスタムメイドチップの時代へようこそ。Ansysは、IFS Accelerator - EDAアライアンス設立時からの一員としての役割を果たすことをお約束します。