Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
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推進は、物体の並進方向の変化を引き起こすように力を加えるためのアクションやプロセスです。「pro」は「前」、「pellere」は「動かす」を意味するラテン語のpropellereに由来します。推進力を使用することで、私たちは部屋の中を歩き、車を運転し、飛行機を操縦し、宇宙にロケットを打ち上げることができます。
推進力は、2つの物体が互いに力を及ぼすときに両者は向きが反対で大きさが等しいとするニュートンの運動の第3法則を用いて理解することができます。たとえば、私たちは歩くときに、足から地面に対して押し付ける力が加わり、地面から足に対する力が加わります。ニュートンの第2法則で説明されるように、地面は人体よりもはるかに大きな質量を持っているので、私たちは前進します。同様に、ロケットエンジンでは、燃焼によって気体が膨張して超音速まで加速されることで、ロケットと等しい大きさで反対方向に反応が生じます。
推進システムの構成
推進システムは2つのパートで構成されています。1つ目は機械的な動力源であり、2つ目はその力を推進力に変換する推進器です。
ガソリン車の場合、動力源はガソリン燃焼であり、推進システムはエンジン、ドライブトレイン、車輪から構成されています。電気自動車の場合、動力源はバッテリに蓄えられた電位であり、推進器は電動モータ、ドライブトレイン、そして車輪です。エネルギー源は、一般的には燃料と呼ばれ、エネルギーが力に変換される推進器は、通常はエンジンまたはモータと呼ばれます。
エンジニアは、推進に関するこれらの基本原理を用いて、車両が地上、水中、空中、宇宙空間で移動できる輸送システムを設計します。車両のサイズと質量、さらには車両が通過する媒体によって、採用する推進力のタイプが決まります。
推進システムは、機械的な動力源の動力を取り込むまたは蓄えるためのサブシステム、推進器、そして生成された力を調整するための制御システムで構成されます。これまで、多くの推進システムでは、1つの動力源と、その動力を力に変換する方法を使用していました。しかし、新しいテクノロジーにより、化学燃焼エンジンと内燃機関、さらにはバッテリや電動モータに蓄えられた電位を組み合わせたハイブリッド推進システムが実現しています。
ほとんどの推進システムは、4つの推進器(リム、車輪、プロペラ、スラスタ)のいずれかを介して推進力を生成します。
車輪
車輪が固定面に接触すると、回転力が線形の力に変換され、車輪を含む物体が前方に押し出されます。この回転力は「トルク」と呼ばれ、さまざまなエンジンやモータによって生成できます。
プロペラ
プロペラは、らせん状に配置された複数の薄い翼で構成される回転軸に取り付けられた装置です。このプロペラによって、空気または水に力が作用し、翼にかかる力によって前に進む力が生じます。ドローンの翼くらい小さいプロペラから、ヘリコプターのロータほどの大きさのプロペラまであります。海洋用途で使用されるプロペラは、スクリューと呼ばれることもあります。
スラスタ
流体(気体または液体)の運動量が加速されると、推力(スラスト)と呼ばれる線形の力が加わります。多くの適用分野では、燃焼で生じる熱を利用して推力を発生させています。海洋用途では、羽根車を使用して水中で推力を作り出します。この羽根車によって、トルクが遠心加速度に変換され、ダクトを通る軸流となります。また、イオン化気体またはプラズマを使用して、電場で推力を発生させることもできます。
以下に、最も一般的なタイプの推進システムを挙げます。
内燃機関(ICE)
現在、最も多く使用されている推進力は、これまでと同様、自動車、船舶、航空機の内燃機関です。その動力源は、炭化水素の燃焼です。ガソリンやディーゼル、または天然ガスを燃焼させると、加圧ガスが発生し、それがピストンに押し付けられて、線形力が発生します。クランクシャフトは、その線形力を回転力に変換して、車輪またはプロペラを駆動します。
パワータービンまたはガスタービンエンジン
パワータービンはガスタービンとも呼ばれ、燃焼によって膨張する気体を動力源として使用します。この動力を用いて、1つまたは複数のタービンロータを駆動し、プロペラまたは車輪を駆動する回転力を生成します。ガスタービンエンジンは、ターボプロップ航空機のプロペラ、ヘリコプターのロータ、船舶やボートのプロペラやスクリューと組み合わせて使用されます。ガスタービンエンジンは、機関車やタンクのような重量のある車両に動力を供給することもできます。
電動モータ
電動モータは、ピストンやタービンベースのエンジンで発生させた回転力に取って代わることが増えてきました。電動モータのエネルギー源は、何らかの形態の電位です。一般的には、バッテリパック、水素燃料電池、または伝送線などです。電磁石に電流を流すと、引力が発生し、別の電磁石または永久磁石でトルクが生成されます。このトルクは、シャフトを通じて車輪やプロペラに伝わります。
エアブリージングジェットエンジン
航空機の推進力の最も効率的で一般的な形態は、ジェット推進です。どのタイプのジェットエンジンも、高圧空気を生成するコンプレッサと、燃料を空気と混合して燃焼させ、推力を発生させる燃焼室から構成されます。大半のジェットエンジンには、膨張する気体からエネルギーを抽出して流入空気を圧縮したり、ファンと呼ばれるダクト付きプロペラを駆動したりする、トルクを発生させるタービンセクションがあります。
以下に、エアブリージングジェットエンジンの最も一般的なタイプを挙げます。
ターボジェット: ジェット推進の初期の形態は、コンプレッサ段、燃焼室、およびコンプレッサを駆動するタービンで構成されていました。ターボジェットは推進器として推力を利用します。
ターボファン: ジェットエンジンの効率を高めるために、エンジン後部にタービンセクションが追加され、それによってエンジン前部で多数の翼で構成されるプロペラが駆動されるバイパスターボファンが開発されました。最新の旅客機の多くは、燃焼による推力ではなく、プロペラとして機能するファンが推進力の大部分を生成するハイバイパス航空機エンジンを採用しています。
ラムジェット: ラムジェットは、標準的なジェットエンジンの回転するコンプレッサを置き換えるもので、エンジン前方に押し込まれた空気を強制的に押し込んで圧縮する、じょうごのように断面積が徐々に小さくなる入口が設計されています。ラムジェットの主な用途は、超音速を必要とする飛翔体や宇宙ロケットです。標準的なラムジェットを通過する空気は、亜音速に減速させてから燃焼器に送られます。スクラムジェット(超音速燃焼ラムジェット)では、燃焼器への超音速流れにより、エンジンが高速で動作できるようになります。
再燃焼式ジェットエンジン: アフターバーナーは、従来のジェットエンジンのタービンセクションの後部に追加される燃焼室です。燃料が排気流内に噴霧されて点火され、非常に大きな圧力と追加の推力を生み出します。アフターバーナーを搭載することで、航空機は超音速を達成でき、離陸時に追加の推力をもたらし、戦闘中の航空機であれば、緊急操縦用の緊急推力を生成できます。
ロケット推進
ロケット推進は、化学反応を使用して非常に高圧の気体を発生させ、それを推力に変換します。ロケットエンジンは、燃料と酸化剤を供給する燃料システム、燃料と酸化剤を点火して急速に膨張する気体を生成する燃焼室、そして圧力を推力(運動量)に変換するノズルで構成されます。
ロケットエンジンは、固体燃料または液体燃料のどちらを使用するかで分類できます。
液体燃料ロケットエンジン: 液体燃料ロケットエンジンは、液体水素、ケロシン、メタンからなる燃料を用いて液体酸化剤(通常は液体酸素)を燃焼します。燃料は、重力、加速度、圧力、またはターボポンプを利用して燃焼室に送られます。燃焼室の開口部に取り付けられたノズルで、膨張する気体を一定方向の推力に変換します。燃料と酸化剤を制御することで、生成される推力の量を調整し、エンジンをオン/オフできます。生成される力を微調整できるため、液体燃料ロケットエンジンは衛星やミサイルの操縦性を実現するスラスタとして広く採用されています。
固体燃料ロケットエンジン: 固体燃料ロケットエンジンは、固体酸化剤と固体燃料の混合物である燃料グレインを使用します。燃料グレインは、全長に沿って円筒形の穴が開いている円筒形ケーシング(燃焼室)に投入されます。初期の固体燃料ロケットは火薬を使用していました。現在では、各種の複雑な化学物質による粒子状の推進剤が使用されています。最も有名な固体燃料ロケットエンジンは、NASAのスペースシャトルに搭載されている2つの固体ロケットブースターです。また、推進剤の貯蔵寿命が長いため、多くの兵器システムで固体燃料ロケットエンジンが採用されています。ただし、固体燃料ロケットエンジンは停止して再始動することが困難であり、生成される推力の量を調整する方法はノズル形状の調整に限定されます。
ハイブリッドロケットエンジン: ハイブリッド推進剤を使用するロケットエンジンは、固体燃料と、液体または気体の酸化剤を使用します。酸化剤(通常は液体酸素または過酸化水素)は、シリンダの全長に沿って形成された円筒形の燃焼室に投入されます。動作中に酸化剤の流量を開始、停止、変化させることができるため、ハイブリッドロケットエンジンは固体燃料ロケットエンジンよりも柔軟性が高くなります。
蒸気エンジン
人類が初めて開発した機械的な推進力は、蒸気エンジンです。燃焼を熱源として利用して水を沸騰させ、高圧蒸気を発生させます。加圧した蒸気がピストンに押し付けられて、線形力が生成されます。この線形力は、クランクを介してトルクと呼ばれる回転力に変換され、推進器である車輪またはプロペラを駆動します。
蒸気タービン
蒸気からエネルギーを抽出するより効率的な方法は、ピストンを押すのではなく、タービンを通して蒸気を膨張させる方法です。加圧したタービンが、1つまたは複数のロータの空力翼に押し付けられ、圧力がシャフトを介して車輪またはプロペラに接続された回転力に変換されます。現在、蒸気エンジンは海洋用途でのみ採用されており、核分裂反応炉が熱源として使用されています。
SWaP-C
エンジニアは、必要な動力を供給しながら、できる限りサイズと重量を削減した推進システムを開発しようとしています。また、コストを可能な限り抑えることも必要です。このように競合することが多い複数の目標は、SWaP-C(サイズ、重量、電力、コスト)と呼ばれています。
エンジニアは自身の経験を基に、シミュレーションとテストを実施して、これらのトレードオフを行います。特にシミュレーションは、さまざまな材料を試し、ジオメトリを最適化して、システムによって生成される動力を予測して最大限まで向上させるのに最適なツールです。たとえば、タービンエンジンの設計チームは、Ansys Mechanical™などのツールを使用して、静的および回転する構造の形状を最適化します。次に、Ansys Fluent®を使用して、燃焼によって生成されるエネルギーと、入口、回転翼、静止翼、ノズルの空力形状を最適化します。
原価要素を検討に含めながら、このプロセスを支援する重要なツールとしては、Ansys optiSLang®などのロバストな設計最適化(RDO)ツールがあります。こうしたツールでは、物理場を選ばずにシステム最適化を検討でき、パラメトリックにジオメトリを定義するために使用されるコンピュータ支援設計(CAD)ツールにシミュレーションを接続できます。
耐久性
エンジニアがSWaP-C要件を満たすと、対象設計が適用分野で要求される耐久性を備えていることを保証しなければなりません。推進システムを運用する場合は、メンテナンスコストとダウンタイムを最小限に抑えるだけでなく、故障も回避しなければなりません。例として、最新の高速鉄道機関車で採用されている電動モータ推進システムを見てみましょう。列車の電気推進システムが故障すると、事業者の収益は大幅に減少し、利用者は大幅な遅延の影響を受けます。さらに、推進システムの修理が頻繁に必要になれば、利益がさらに減少するでしょう。Rolls-Royce社が旅客機の利用客に提供しているように、推進システムのサブスクリプションサービスに移行するサプライヤーが増えれば、耐久性はますます重要になるでしょう。
航空宇宙用途における推進システムの故障は壊滅的であり、生命を脅かす可能性もあります。そうした理由から、シミュレーションツールの最大のユーザーは、航空宇宙推進システムの設計および製造を行う企業です。こうした企業は、振動の他にも構造荷重や熱荷重を調べ、応力が許容基準値以内に抑えられており、システム内のコンポーネントが許容できる疲労寿命であるかを確認することに多大な時間を費やしています。
効率と排出量
初期の推進システムが開発されたときには、動かそうとしている車両と、運搬する乗客、貨物、または積載物が目的地に到達することが唯一の目標でした。しかし現在では、エンジンとモータの効率や排出ガスや排出量を考慮しなくてはなりません。多くの企業は、カーボンフットプリントを削減するためにネットゼロ目標を採用しています。これまでのエンジンとタービンの効率の推移を見ても、この傾向が示されています。ガソリンを使用する初期のICEの効率は4%未満であったのに対し、現在では理論的限界値である40%程度に達しています。
ほとんどの推進システムでは、燃焼を使用して熱を発生させているため、排出量も懸念事項となっています。システムの効率を向上させることで、燃料の消費量を削減できます。また、採用する燃料の圧縮比、燃焼温度、種類も排出量に寄与するため、エンジニアは設計のあらゆる側面を慎重に最適化して、二酸化炭素排出量や他の汚染物質を削減する必要があります。
推進力は、さまざまなタイプおよび用途にわたって急速に進化しています。エンジニアは、車両の推進力を向上させようと既存の実証済みアプローチの改善に取り組んでいます。それに加えて、現在、いくつかの新しい推進テクノロジーが開発されています。
ハイブリッド推進システム
現在、ある適用分野で2つ以上の推進システムを組み合わせたハイブリッド推進システムに関する研究が積極的に行われており、実用化も進んでいます。その最もわかりやすい例は、プラグインハイブリッド車の普及です。民間航空業界では、航空機向けのハイブリッド電気推進ソリューションやハイブリッド水素推進ソリューションを積極的に検討しています。また、ロケットの打ち上げ、防衛用途、軌道上操縦スラスタでのハイブリッドロケット推進の採用が増えています。
原子力推進ロケット
原子力推進ロケットは、化学燃焼による流体の加熱を原子炉の導入で置き換えるものです。このテクノロジーは、元々は1960年代に開発されました。Ansysの有限要素法は、その開発プロジェクトをもとに考案されました。NASAは現在、地球と火星間の高度なミッションの推進力として、このテクノロジーを再評価しています。
ロケットベース複合サイクル(RBCC)とタービンベース複合サイクル(TBCC)推進システム
スクラムジェットとタービンエンジンまたはロケットの組み合わせに関する研究が進められています。ロケットまたはターボジェットエンジンは、ラムジェットが作動するのに十分な速度まで加速させます。低超音速での飛行にはTBCCが採用され、より高い性能を目指すケースではRBCCが導入されています。
当社はお客様の質問にお答えし、お客様とお話できることを楽しみにしています。Ansysの営業担当が折り返しご連絡いたします。