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拡張現実(AR)とは

拡張現実(AR)は、デジタル情報を現実世界に統合する没入型テクノロジーです。カメラ対応デバイスを使用することで、現実空間にコンピュータで生成されたコンテンツを重ね合わせて表示し、双方向から情報を入手できるようになります。ARは、ユーザー環境に応じて画像、テキスト、音声を出力し、ゲーム、教育、小売店、住宅設計、製造などのさまざまな分野でエンゲージメントを強化するために広く使用されています。

拡張現実の仕組み

拡張現実は、入力デバイス、処理ソフトウェア、ディスプレイの3つの主要コンポーネントを用いて、現実空間の中に仮想空間を作り出し、デジタル情報を適切に配置することで、ユーザーにリアルタイムな体験を提供します。

入力: カメラやセンサーを使用して、ユーザーの周囲環境からライブ映像としてデータを収集します。センサータイプとしては、赤外線カメラ、加速度計、ジャイロスコープ、GPSなどがあります。

ソフトウェア: 展開すべき適切なデジタル要素と、ユーザー視点内で配置する場所を決定するために、環境データの処理と解釈が行われます。

ディスプレイ: デジタル情報は、ユーザーの視野内に表示され、周囲の環境に重ねて表示されます。ディスプレイとしては、メガネ型およびヘッドセット型ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、スマートフォン、タブレット、プロジェクタなどがあります。

拡張現実のタイプ

拡張現実には、マーカーベースARとマーカーレスARの2つのタイプがあります。  マーカーベースARでは、物理マーカーを用いて、QRコードなどの実際のオブジェクトに仮想体験を簡単にリンクできます。そのため、オブジェクトの認識や追跡を必要としません。マーカーレスARは、マーカーを必要としません。代わりに、複数のセンサーが情報を活用して、色、パターン、位置などの手がかりに基づいて環境内のアイテムを認識します。

マーカーベースAR

  • QRコードやロゴなど、事前定義された画像を使用する
  • マーカーレスARよりも開発コストが安く、それほど複雑でない
  • スマートフォンまたはタブレットで使用する必要がある
  • 専用アプリのダウンロードが必要になる
  • 例: 顔をマーカーとして使用するSnapchatフィルタ

マーカーレスAR

  • 有効化するために特定のマーカーを必要としない
  • 認識アルゴリズムを使用して環境を解釈する
  • 屋外でのナビゲーションや位置固有の情報の統合によく使用される
  • プロジェクションベースAR、ロケーションベースAR、アウトラインAR、重ね合わせARを含む
  • 例: ポケモンGoでキャラクターを捕まえる
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プロジェクションベースAR

  • 例: デスク上に投影されたインタラクティブキーボード

重ね合わせAR

  • 例: 患者の体に重ね合わせたX線

ロケーションベースAR

  • 例: 近くの建物をスキャンして店舗を探す

アウトラインAR

  • 例: 領域またはオブジェクトの寸法を測定

拡張現実の利点

ARでは、ユーザーは自分の実環境を十分に認識しながら、補助的なデジタル情報を受け取ることができます。この現実世界との統合により、ARはさまざまな業界や用途に多くのメリットをもたらします。

体験の向上: デジタルと現実世界のシームレスな統合により、より視覚的に面白く、楽しい体験をもたらします。

カスタマイズ: ARは、ユーザーの位置、環境、行動に合わせてコンテンツを調整できるため、ユーザー独自の体験をもたらします。

認知的負荷: ARは、ユーザーに適切な情報を適切な場所とタイミングで提供するため、複雑なデータを記憶したり、追加のリソースを探したりする必要はありません。

ハンズオントレーニング: ARは、インタラクティブなシミュレーションでステップごとに誘導していくため、さまざまな分野の学習者が新しいスキルを安全な環境で試す際に有効です。

コスト節約: ARを使用することで、ユーザーの手元に環境やツールが提供されるため、移動や機器にかかるコストを削減できます。

信頼性: ARを使用することで、選択した家具が自宅に合うかどうかを確認したり、掘削時に回避すべき地下設備を明らかにしたりでき、結果を可視化することで意思決定の質を向上させます。

拡張現実(AR)と仮想現実(VR)の比較: 主な相違点

ARとVRはどちらもデジタル現実の一種ですが、異なる点が複数あります。最も大きな違いは、仮想現実では構築された仮想の世界の中にユーザーが入り込みますが、拡張現実では、ユーザーがいる現実の空間に、デジタル情報が追加される点です。「拡張」とは、「追加された状態」を意味します。  つまり、拡張現実は現実世界にデジタル情報が追加された状態を指し、仮想現実は完全な仮想空間です。

拡張現実(AR)

仮想現実(VR)

現実世界を補完する、部分的にデジタルな体験

ユーザーを現実世界から切り離す、完全にデジタルな体験

ユーザーの環境に応じて表示される仮想のグラフィックス、テキスト、および音声

完全に架空の環境、仮想への完全な没入

AR対応のスマートデバイスが必要で、アプリを通じて使用できる

VRヘッドセットが必要となり、使用コストが高い

ARでは、新しい靴を履いた状態を確認できる

VRでは、グランドキャニオンの崖縁に立つことができる

拡張現実の主なユースケース

ビデオゲームで架空の宇宙人と戦うことから、航空宇宙工学で宇宙を探索することまで、拡張現実は観光、ヘルスケア、小売、不動産など、さまざまな業界で使用されている非常に汎用性の高いテクノロジーです。ARテクノロジーは、ユーザーがどこにいても、目の前の空間に、複数のコンテンツをデジタルに表示させることができます。

ARアプリケーションの例

教育およびトレーニング

ARを教室や博物館、トレーニングプログラムで使用して、学習者にバラエティーに富んだ、精巧な没入型の体験を提供します。ARは、手術のような高リスクで複雑な課題に関するトレーニングを、より安全に実施しやすくするだけでなく、学習自体をより興味を惹きつけるものにすることで、学生の定着率を向上させます。

小売

買い物客は、ARを使用して、購入前に製品やサービスを試すことができます。仮想での試着やプレビューでは、商品を着た状態を確認したり、家具、ラグ、アートなどの室内装飾品が自宅に合うかどうかを確認できます。ARは購入に対する消費者の信頼を高めるため、この購入前エンゲージメントによってコンバージョンが増加し、返品率が低下することが示されています。また、ARは、在庫やピッキングプロセスを改善するために倉庫でも使用できます。

  • Wayfair社のView in Room
  • Gucci社のSneaker Garage
  • Sephora社のVirtual Assistant

ヘルスケア

ARを使用することで、医師は患者データを表示しながら、治療や検査を行えます。また、ARシミュレーションにより、現実的なシナリオや条件の下で新しいスキルを習得できる環境が提供されます。

  • Microsoft HoloLens
  • Xvision Spine System
  • AccuVein Vein Visualization System

ゲームとエンターテインメント

拡張現実を使用することで、創造的に創りこまれた世界でも、ゲームやエンターテイメントプラットフォームを介して、よりリアルな体験に感じることができます。ARを使用すると、架空のものと実在するものを同じ空間に混在させることができます。たとえば、架空のキャラクターやアイテムで自分の部屋が満たされている様子を見ることができます。

  • Apple Vision Pro
  • Meta Quest 3
  • XREAL AR Glasses

ナビゲーション

ARにより、リアルタイムのガイドを提供することで、歩行者や観光客、ドライバーは慣れない場所でも自信を持って移動できるようになります。自動車に搭載されるヘッドアップディスプレイは、ARを使用して、速度やその他の車両性能に関する情報をドライバーの視線上に直接表示させます。

  • Google社のライブビュー
  • Mercedes-Benz社のMBUXナビゲーション
  • aryve for AIRPORT(空港マッピング)

 

拡張現実の未来

AIの継続的な進歩がARテクノロジーの進化を先導しており、可能性は広がっています。ウェアラブルARは、将来的にはナビゲーション、エンターテイメント、健康追跡を統合して日常生活でファッショナブルに携帯できる形態になるでしょう。  学習の場は今後も変化し続け、没入型コンテンツが学習進度を加速させ、3次元の空間の中で歴史や科学、デザインなどを学ぶようになります。ARを活用することで旅行者や同僚とのリアルタイム翻訳が容易になり、言語の壁はなくなります。また、自動車の安全性、治療や手術、都市計画の継続的な改善にもつながります。デジタルコンテンツが現実世界の生活を向上させているように、拡張現実は私たちの生活を向上させる上でさらに大きな役割を果たすことになるでしょう。

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