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ケーススタディ

JFEエンジニアリング、廃棄物焼却炉の燃焼効率向上と再生可能エネルギーの安定供給を目指しDEM-CFDマルチフィジックスシミュレーション技術を活用


「当社は【くらしの礎を「創る」、「担う」、「つなぐ」】というパーパスのもと、サーキュラーエコノミーを推進する環境技術を開発しています。  本開発において、幅広い物理現象に対応可能なAnsysのマルチフィジックスシミュレーションが極めて重要な役割を果たしています。特に、Ansysの統合シミュレーション技術の活用は、革新的なソリューションの創出を加速し、開発プロセスの効率化を実現します。当社はこれらの先端技術を駆使して、持続可能な社会インフラの構築を推進しています。」 

— 中山剛氏(JFEエンジニアリング株式会社、総合研究所 General Manager)


近年、資源循環型社会への関心が高まるなか、都市環境の維持に欠かせない廃棄物焼却施設の役割が一段と重要になっています。JFEエンジニアリングが建設および運営する廃棄物焼却施設は、ごみの無害化・減容化という本来の役割を果たすだけでなく、熱回収による蒸気タービン発電等にも貢献しています。さらに、地域分散型の再生可能エネルギー供給施設として重要な役割を担っています。

廃棄物焼却炉内の燃焼状態を把握するため、数値流体力学(CFD)による解析を適用しました。その解析結果に基づき、高い安定性と燃焼効率を実現する対向流燃焼方式を開発しました。

そして、燃焼安定性の向上と環境負荷の低減を目指し、ごみの不規則な投入・搬送挙動を解析する離散要素法(DEM: Discrete Element Method)とCFDを連成させたシミュレーションを開発しました。

waste combustion diagram

固体-気体相互作用を示す廃棄物燃焼の模式図

課題

  • 環境基準の遵守と環境影響の低減。廃棄物焼却施設にはごみの確実な無害化が求められ、処理量や性状によらず、厳に環境基準を満たす必要があります。
  • 発電量の増加とエネルギー効率の向上。再生可能エネルギー供給施設としての期待が高まっており、発電効率の向上と安定的なエネルギー供給が求められています。
  • コスト競争力強化。建設コストの最適化に加えて、官から民への委託が進む運営コストの削減が求められています。

主な技術的課題として以下の2点が挙げられます。

  • 焼却過程で発生する環境規制物質の排出抑制
  • 発電効率の向上と燃焼の安定化

ごみの組成や大きさは一様ではなく、季節や地域によって大きく変動します。たとえば、燃焼性に影響する水分率は30~50%の範囲で変動し、発熱量も7~12MJ/kgと大きく変動することがあります。また、ごみは塩素と窒素の含有量が高く、金属などの不純物が混入することも特徴的です。これらの要因により、安定した燃焼が困難になります。

さらに、ごみの炉内への供給は一定ではないと考えられます。一般的に、ごみの不均一性により、連続的に炉内へ供給することは困難です。その結果、定常状態を維持することが困難となり、燃焼変動が発生してしまいます。

発電量の変動は燃焼変動に起因するため、発電量の変動抑制には、複雑な燃焼メカニズムの制御が不可欠です。そのため、炉内の燃焼挙動を詳細に把握し、酸素濃度等の運転パラメータを最適化する必要があります。

combustion analysis technology

Ansys Fluentを活用したJFEエンジニアリングの燃焼解析技術

Ansys Fluentを活用した技術課題の解決

  • JFEエンジニアリングは、ごみの温度分布や揮発分燃焼に関する実験データと、Fluentの数値解析技術を組み合わせることで、廃棄物焼却炉の燃焼現象を高精度に予測可能なシミュレーションを開発しました。
  • Fluentの優れたUIと強力な並列計算機能、燃焼などの多様な物理モデル機能が不可欠でした。また、予測が困難な規制物質であるCO/NOxを迅速に計算できる計算効率も重要でした。
  • JFEエンジニアリングは、様々な条件の解析結果から燃焼現象を定量的かつ視覚的に理解したことで、対向流燃焼方式の開発に成功しました。本方式は炉天井から高温空気を吹き込むことによって、効率的かつ安定した廃棄物燃焼を実現することができます。
  • 開発では、事前にシミュレーションを行い、燃焼技術の有効性を検証しました。また、高温空気を吹き込む位置や流速などの設計条件をシミュレーションで事前検討し、より効率的な設計を実現しました。

Fluentを導入したメリット

JFEエンジニアリングは、シミュレーション技術の活用により、開発を効率化し、開発期間を約30%短縮しました。開発した対向流燃焼方式により、NOx排出濃度は約20%低減し、発電効率が大きく向上しました。さらに、燃焼安定性も改善しています。

waste incinerator behavior

廃棄物焼却炉内の搬送挙動モデル

Ansys Rockyを活用した技術課題の解決

JFEエンジニアリングでは、燃焼安定性の向上と環境負荷の低減を目指し、処理能力1日当たり100トン規模の焼却炉を対象にDEM-CFDシミュレーション解析を実施しました。安定性向上には、ごみの不規則な供給および発熱量の変化による燃焼変動を抑制することが重要です。また、ごみの安定供給を実現するためには、火格子およびごみ供給装置の形状と動作条件の最適化が不可欠です。

これらの課題解決には、ごみが投入され炉内で搬送される不規則な挙動を詳細に解析し、把握する必要がありました。そこで、まず粉体実験を行い、ごみ粒子の基礎的な挙動データを取得しました。次いで、DEM解析で実験結果を再現することで粒子パラメータを同定しました。

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DEM-CFD連成シミュレーションによる廃棄物焼却炉モデルの解析結果

Rockyを導入したメリット

  • RockyのMaterial Wizardを使用することで、簡単なデータ入力だけで、DEM解析に必要なパラメータを迅速に推定することが可能です。
  • DEM-CFD連成解析の結果例として、水分を含んだごみが炉内の火格子部に供給され、左側の炉後方へ搬送される過程において、含有水分率が経時的に減少していく様子を可視化することができました。炉内の熱によるごみ中の水分蒸発を確認し、DEM-CFD連成解析により気固反応の解析が可能であることを実証しました。
  • JFEエンジニアリングはAnsysソフトウェアを活用し、ごみ搬送挙動と気相反応、およびそれらの相互作用を統合的に解析できるDEM-CFD連成シミュレーション技術の開発を進めています。