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ケーススタディ

生物の多様な形態が空気力学に与える影響をAnsys Fluentで解明


「私たちの研究室では、動植物の形態のバイオメカニクス的な理由を、特に流体力学的な観点から解明しようとしています。オープンソースのCFDソフトウェアを試したこともありますが、習得に2~3か月かかり、卒業まで1年もない学部生は、形態空間のパラメータ調査に十分な時間を割けませんでした。そのため、Ansys Fluentは、CFDを問題解決の一手段とする学生にとって最適なソフトウェアの1つだと考えています。」

前田将輝准教授(拓殖大学)


生物はさまざまな理由により、多様な形態をとります。特に、飛翔や遊泳を行う生物においては流体力学が重要な要素です。拓殖大学の前田将輝准教授は、現在、昆虫の翅、鳥の羽根、植物の葉といった複数の研究プロジェクトに取り組んでいます。

形態比較において、正確に形状をコントロールできる数値シミュレーションは有用です。もし実際の生物を使おうとすれば、個体差の問題を考慮する必要があるため、多大な労力と時間がかかります。CFDを使用することで、研究にかかる時間とコストを大幅に削減できます。

課題

トンボの飛行の研究では、翅の周囲の気流と翅のひずみを同時に求めることが目的でした(図1)。トンボの翅には数百個の気流センサーとひずみセンサーがあることが知られており、収集した情報をどのように活用するかを研究するためには、正確な流れ場とひずみ場を取得する必要があります。

また、鳥の羽根の空気力学にも取り組んでおり、いくつかの形状モデルを試しました。これまでのところ、隙間(スリット)のないモデルが隙間のあるモデルよりも高性能であるとのデータを得られていますが(図2)、より多くの形状を試す必要があります。

dragonfly wing

トンボの翅の滑空のFSIシミュレーション結果。表面のひずみと渦構造(Q等値面)が示されている。この研究は、英国の王立獣医大学のRichard Bomphrey教授との共同研究である。

エンジニアリングソリューション 

  • 前田准教授は、メッシング操作が直感的で使いやすく、境界層用のプリズム層の生成もロバストに感じられると述べています。
  • Fluentについては、直感的なGUIが初心者にとって非常に有効であり、テキストユーザーインターフェース(TUI)は少しとっつきづらいものの、一旦覚えればそれほど難解ではなく、むしろ力の定義などではGUIよりもはるかに効率的であると述べています。
  • 前田准教授は、Mechanicalは、一旦習得できれば、流体-構造連成(FSI)シミュレーションを容易に実行できると考えています。
feather

シンプルな2つの羽根モデル(スリットあり、スリットなし)の表面圧力(A、B)および断面圧力(C、D)。黒い矢印(矢じり)は速度ベクトルで、BとDにおけるマゼンタの矢印はスリットを通過する流れを示す。

メリット

Ansys製品を導入したことで、数値計算手法の構築や良好なメッシュの生成に長い時間を費やすことなく、実際のシミュレーションに集中できるようになりました。これは特に卒業研究のための時間が1年に満たない学部生にとって重要です。

さらに、流体構造連成(FSI)が実験ではまだ難しい(特に生物を対象とする場合)という理由もあります。数値シミュレーションであれば、たとえば、翅の「縁紋」と呼ばれる(滑空飛行の振動を安定化させる)末端部分の質量をゼロにしたり、10倍にしたりといった操作も容易に行えます。