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Ansysブログ

September 25, 2019

PMMAとは何か、そして医療現場でどのように使われているのか

ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA: Polymethyl Methacrylate)は、「プレキシグラス(Plexiglas)」や「アクリル」など、他のさまざまな名前でも呼ばれています。また、PMMA材料の優れた生体適合性により、医療分野では「骨セメント」と呼ばれています。

PMMAは、窓、水槽、ホッケーリンクなどで、ガラスに代わる軽量で飛散しにくい代替品としてよく使用されています。そのため、この加工が簡単かつ低コストで汎用性の高い材料が、義歯や骨インプラントなどにも使用されていることはとても理解できないでしょう。

PMMAは、刺激性があり、発がん性の可能性もあるメタクリル酸メチル(MMA: Methyl Methacrylate)を重合して作られているにもかかわらず、非常に生体適合性が高い材料です。 


高い生体適合性を持つPMMAは
義歯メーカーにとって優れた材料となります。 

このような生体適合性は、以下に対するPMMAの耐性に起因しています。

  • 温度ストレス
  • 化学反応
  • ヒト組織
  • バイオプロセス

PMMAは、インプラントと骨の間の隙間を埋める骨セメントとして使用されます。PMMA材料は高い生体適合性があり、病院環境内での重合が簡単であるため、この処置に適しています。

しかし、マテリアルインテリジェンスをより深く理解することで、PMMAが常にin vivo(インビボ)インプラントに適した選択肢であるかどうかを答えることができます。
 

PMMA材料は生体適合性があるが、常に最良の医療オプションであるか

手術室では、骨セメントは粉末と液体から作られています。粉末はMMA共重合体で構成され、液体にはMMAモノマーや化学促進剤および化学抑制剤が含まれています。

粉末と液体を混合すると、骨とインプラントの間に塗布できるパテが作成されます。このパテは、タイルの間のグラウト材のようなもので、インプラントを骨に固定します。

しかし、PMMA材料がこの用途には適さない理由は数多くあります。


PMMAは生体適合性に優れているため、インプラントを骨に固定する際の有力な選択肢となります。しかし、それは最良の選択肢でしょうか。
 

  1. PMMAの破壊靱性は0.7MPa∙m1/2~1.6MPa∙m1/2であるのに対し、骨の破壊靱性は3.5MPa∙m1/2~6.6MPa∙m1/2です。
  2. PMMAは、高い重合温度を有します。

PMMAと骨の破壊靱性の差により、骨やインプラントが影響を受けない場合でも、衝撃でセメントが破損することがあります。

また、研究では、発熱重合により、パテは体外では80℃以上、体内では50℃前後の温度に達し、骨が損傷することがわかっています。これは、患者の回復時間が長くなることを意味します。

さらに、少量の非重合MMAがセメント内に残る可能性もあります。これらの成分が体内の他の部分にまで到達し、低血圧症を引き起こすこともあります。

PMMAは、骨セメントとしては問題はあるものの、多くの状況では依然として最良の材料の1つとなります。しかし、研究者は骨セメントに利用できる、さらに適切な材料を探しています。
 

PMMA材料の生体適合性による利点

PMMAは、他の多くの医療処置にとって重要な材料です。たとえば、染めやすく、造形が早いため、義歯や歯の詰め物の製造に使用されます。

その結果、医師はPMMA材料を使用して、元の歯の大きさや色に近い義歯や詰め物を作ることができます。

PMMA材料は、眼の治療でも採用されています。歴史的には、ハードコンタクトや眼内レンズとして使用されてきました。

PMMAの眼の治療への応用は、意外な発見を通じて始まりました。英国空軍の眼科医であったHarold Ridley卿は、フロントガラスが割れて目の中に入ったPMMAの破片が、ガラスの破片のような拒絶反応を起こさないことに気付いたのです。


優れた生体適合性により、PMMAはハードコンタクトや眼内レンズに最適な材料です。しかし、より柔らかい材料が市場を独占しています。

このため、Ridley卿は白内障に苦しむ人々の損傷した水晶体の交換のために、PMMAの使用を試みました。彼は1949年にSt. Thomas Hospitalにて、永久インプラントに成功しました。

現在、眼内レンズ市場では、PMMAベースの共重合体やシリコーンベースの材料の多くがPMMAと競合しています。これらの材料は柔軟性があり、それによって脆性が少ないという利点があります。

コンタクトレンズの場合、ソフトコンタクトの方が快適となります。さらに、近年の酸素透過率の向上に伴い、患者にとってソフトコンタクトが好ましい選択肢となる傾向があります。

PMMA材料は医療業界で多くの用途があります。一般的ではなくなってきていますが、PMMAなどの材料の進歩は、多くの人々の生活を改善し続けています。

マテリアルインテリジェンスが人々の生活をどのように改善できるかについて詳しくは、こちらの医療材料情報に関するページにアクセスしてください。

このブログは、以前Grantaのウェブサイトに掲載されていたSean Newham氏のブログを参考にしています。