Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
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Ansysブログ
December 5, 2019
フラックスは、はんだ付けプロセス中に金属酸化物を除去し、良好な金属結合を作成するために使用する酸性混合物です。ただし、はんだ付け後に残ったフラックス残渣が、エレクトロニクスの故障や電流漏れの原因になり得るというマイナス面もあります。
エンジニアははんだ付けプロセスを理解して、フラックス残渣を減らし、
エレクトロニクスの信頼性を向上させる必要があります。
エンジニアが良性または活性フラックス残渣について言及するとき、それは残渣自体の化学的性質ではなく、故障リスクを指しています。こうしたリスクを理解する上で必要となるすべての情報を表す単一の用語はなく、それを取得できるような単一のテストもありません。
判明しているのは、回路が縮小し続けるにつれて、故障リスクが増大するということです。このリスクを軽減するために、エンジニアは化学的性質、塗布方法、設計、およびそのユースケース環境を理解する必要があります。
電気的故障が生じる可能性を左右するフラックスの構成要素は4つあります。
この中で特に影響の大きいものは、活性剤と結合剤です。
回路基板上のフラックス残渣
活性剤は、現在使用されているフラックスに見られる弱有機酸です。それらの酸性度は良好な結合には不可欠ではあるものの、リスクを伴います。酸は金属酸化物と反応して金属塩を形成します。ウェッティングプロセスの後、金属塩は溶解し、金属結合が形成されます。
時には、未反応の酸が残ることがあります。これが起こると、過剰な酸によって電気的な故障が生じる可能性があります。このリスクを軽減するために、エンジニアは適切なはんだ付けを行うための最小限のフラックスを使用する必要があります。
結合剤は媒材と呼ばれることもあり、融点が高く、水に不溶の化合物です(天然樹脂や合成樹脂など)。はんだ付け後、未反応の活性剤が水に溶けないようにするものです。結合剤は、目に見える残渣の大部分を形成します。樹脂が残っていないクリーンなアセンブリの外観を維持するために、多くのエンジニアは結合剤の濃度が低いフラックス製法を選択しており、それによって故障のリスクが高まる可能性があります。
溶剤は、他の構成要素を溶解するために使用されます。製造時の推奨はんだ条件は、ある程度は溶剤の沸点に基づいています。塗布中は、すべての溶剤が蒸発しきっていることを確認するために、はんだ条件に従うことが重要です。溶剤が残っている場合は、エレクトロニクスの故障を引き起こす可能性があります。
可塑剤、染料、酸化防止剤などの添加剤は、フラックスの化学組成のごく一部を構成します。添加剤は信頼性を向上させる可能性がありますが、メーカーの知的財産が保護されていることで、その機能についての知見を得る、あるいは制御する方法はありません。
エンジニアは、表面実装リフロー(SMT)、ウェーブ、セレクティブ、または手はんだ付けを使用できます。使用されるフラックスの量が異なるため、それぞれにリスクが生じます。
SMTは、最もクリーンなオプションの1つです。ステンシルやプリンタを使用して塗布されるペースト状フラックスを利用します。この方法では、塗布される量を詳細に制御できます。
液状フラックスは、ペーストよりも塗布の流れや量を制御するのが難しいため、リスクが大きくなります。
手はんだ付け
液状フラックスは、ウェーブまたはセレクティブはんだ付け時に、手動で塗布、あるいはスプレー状またはフォーム状で噴射されます。ウェーブプロセス中に、液状フラックスはアセンブリの上面に流れ込むことがあります。この場合、基板上面の温度が、溶剤を蒸発させるほど高くない可能性があります。同様の問題は、作業員ごとの塗布の制御の違いのために、手はんだ付けでも発生する可能性があります。
制御が困難で過剰な液状フラックスの流れによるリスクを軽減するために、エンジニアは一貫した塗布方法によるフラックスコアはんだワイヤーとディスペンサー装置を使用することができます。
はんだ付け後のリスクレベルの解釈に使用できるデータを収集するための、業界標準のいくつかの方法があります。
溶剤抽出抵抗値(ROSE: Resistivity of Solvent Extract)テストは、クリーニング操作中のイオン清浄度を監視することができます。このテストで収集したデータは、エンジニアが適切なはんだおよび洗浄プロセスを維持するのに役立ちます。
イオンクロマトグラフィは、はんだ付け後に残ったイオンの数を測定するもう1つの一般的な技術です。また、フラックスから弱有機酸の量を検出する簡単な方法でもあります。
湿度の高い使用環境は、故障の原因になります。
イオンクロマトグラフィの課題の1つは、方法ごとに異なる結果が得られる点です。たとえば、フルアセンブリ浸漬では、表面全体の濃度平均が得られます。より狭い面積で酸を検出するには、エンジニアは、より局所的なサンプリング法を使用する必要があります。残念ながら、イオンクロマトグラフィの結果に対する標準的な合否基準はありません。
また、エンジニアは機能テストを実行して、湿度の高いワーストケース環境で設計がどのように機能するかを評価することもできます。このような場合、一般的に、故障は漏れや短絡に関連しています。エンジニアは、電流制限を使用して短絡による損傷を減らすことができますが、残渣による故障の証拠が隠される可能性があります。
エンジニアは、設計、最終使用環境、および清浄度データに関する知識を頼りにリスクを評価する必要があります。これは、次のようなリスクに影響を与える要因が多数存在するためです。
エレクトロニクスの信頼性を向上させる方法については、ウェビナー「フラックス残渣: エレクトロニクス故障を引き起こす主な要因」への参加をご検討ください。または、当社の信頼性エンジニアリングサービスについてお読みください。