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Ansysブログ

January 30, 2020

ポンプキャビテーションの原因と防止策

ポンプ、羽根車、およびプロペラは、日常的なインフラストラクチャの基本的な部分です。世界中で発電所、船舶、生産設備を稼働させ続けています。

こうした機械を設計および活用しているエンジニアにとって、流体が急激な相変化を起こして機構を物理的に損傷させるキャビテーションを防止することは重大な課題です。


内部機構に悪影響を及ぼすことがあるポンプキャビテーション

これを防ぐために、エンジニアは、適切なシステムに適切な機器が組み込まれているかを確認する必要があります。シミュレーションは、ポンプの設計と構成を最適化し、不用意な相変化を回避するための費用対効果の高いソリューションです。


キャビテーションの原因

キャビテーションとは、流体中の圧力が蒸気圧未満まで急激に低下し、気泡(空洞)が発生する現象です。気泡は、高圧を受けると崩壊し、小さな衝撃波を発生させ、時間の経過とともに部品を損傷します。こうした圧力波によって部品に微小な穴が生じることをピッティングと呼びます。


キャビテーションによるピッティングが生じたプロペラ

騒音、振動および性能の低下は、ポンプキャビテーションの良い指標です。こうした前兆が現れると、エンジニアは設備を点検して、穴が形成されていないかどうかを確認する必要があります。

ピッティングは、エンジニアにとって最も重大な懸念事項の1つです。穴が成長してその数が増えると、ポンプの寿命や効率を低下させてしまうからです。

ポンプへのキャビテーションの影響

ただし、エンジニアが設備内での気泡の形成を減らしたいと思う理由は他にもあります。たとえば、圧力波は振動を発生させ、それによって軸受のような他の部品が故障する可能性があります。

ポンプのキャビテーションは、設計の流量や効率にも影響を与えるため、エンジニアは処理能力を維持するために消費電力を増やさなければなりません。これは、温室効果ガスと燃料費の増加につながります。


ポンプキャビテーションを防ぐ方法

ポンプでキャビテーションが生じないようにする最良の方法は、ポンプの羽根車から上流の圧力を上げることです。この圧力は、有効吸込水頭(NPSH: Net Positive Suction Head)と呼ばれます。


Ansys EnSightで可視化したジーロータポンプ内の油量。
ギアウォールに発生したキャビテーション(赤)の範囲が示されています。

エンジニアがNPSHを高めるいくつかの方法:

  • 上流側の貯水タンクの水位を上げる
  • ポンプ入口にインデューサを追加する
  • 羽根車の設計を最適化する
  • 上流側の流量損失を最小化する
  • ポンプを低流量で稼働する

設計段階では、エンジニアは特定の設置環境内でポンプがどのように設定されるかを知ることはほとんどありません。したがって、計算とシミュレーションを使用してさまざまな構成をテストし、エンドユーザーに適切なNPSH評価を提供します。これらの評価は、ポンプを適切に設置するのに役立ちます。

エンジニアは、これまではRayleigh-Plesset方程式を用いて気泡の形成をシミュレーションしていました。課題となるのは、これらの結果が経験的であり、入力パラメータの微調整が不適切であった場合には、非現実的な結果を返す可能性があることです。

あるいは、エンジニアはAnsys CFXの平衡相変化モデルを使用してキャビテーションをシミュレーションすることもできます。これは、材料特性を使用して、経験的なデータなしで気泡の形成を予測します。そのため、正確な結果を得るためにRayleigh-Plesset方程式を微調整する必要はありません。

エンジニアはシミュレーションをパラメータ化して、さまざまな構成で設計を迅速に繰り返して試し、NPSH評価を導き出すことができます。また、NPSHの減少が、突然の相変化によってポンプで生じる水頭をどのように低下させるかを示すチャートを作成することもできます。

平衡相変化モデルの詳細については、アプリケーションブリーフ「キャビテーション: 正しく理解すべき重要なCFDアプリケーション」をご覧ください。

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