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Ansysブログ

August 11, 2022

シミュレーションの力でUNAMの学生の夢が飛び立つ

子供たちは、手首の動きを利用したり、輪ゴムの巻線やバッテリー駆動のリモコンで飛ばす飛行機など、飛ぶものが大好きです。このような子供の興味は、小学校以降の科学、技術、工学、数学(STEM)学習意欲につながる可能性があります。メキシコ国立自治大学(UNAM)の学生で編成される空力設計チームで機械設計システムなどのプロジェクトを主導しているMiguel Cobian氏にとっても、航空機を設計することは子供の頃からの夢でした。

Cobian氏は次のように述べています。「ずっと飛行機に魅了されてきました。子供の頃は、飛行機のような重いものがなぜ地上から飛び立てるのかについて思いを巡らせていました。大学では、技術的そして科学的な側面に興味がわき、工学部でこれらの現象について学び、実際に飛ぶことができる非常に大きくて重いものを設計したいと考えました。」

現在、Cobian氏は、作業にメンバーを割り当て、チームが年間に参加するイベント数を決めるなど、学生たちのリーダーとしてスケジュールを管理し、チームの進むべき道を計画しています。Cobian氏のチームは、Society of Automotive Engineers(SAE)の学生向けの空力設計エンジニアリングコンペで優勝することを目指しています。 

チームが設計したブレンド翼構造の流体-固体相互作用(FSI)解析

チームが設計したブレンド翼構造の流体-固体相互作用(FSI)解析

Cobian氏とパートナーを組むChief Technology OfficerのMichel Gordillo氏は、Ansysアカデミック学生チームパートナープログラムを通じて提供される無料のシミュレーションソフトウェアなど、チームが必要とするすべての技術リソースを管理しています。Gordillo氏は、設計した飛行機がコンペに勝つだけでなく、現行の法や規制を満たしていることを確認する役割を担っています。そのために、コンペの技術的課題を通じてチームを主導し、設計上の重要な意思決定を行っています。Gordillo氏とCobian氏は、どちらも学部内で優秀な成績を修めており、学業の面では素晴らしい軌道を歩んでいますが、試験で良い成績を上げるために習得した知識だけでは不十分であることも認識しています。

Gordillo氏は次のように述べています。「自分が持っている知識に自信を持ちたかったのです。短期間で多くのことを学びたいと考え、そのためには新しい課題を自分自身に課すことが必要だと思い、このチームに参加しました。私は航空宇宙分野も好きなので、このチームに参加するのが、さまざまなことを学び、貴重な経験を得るのに最適な方法であると考えました。」

Fluentを使用したMobulaの解析

Fluentを使用したMobulaの解析

未来のエンジニアたちが能力を試すシミュレーション

Ansysアカデミックプログラムは、学生チーム向けのパートナーシップを通じて、UNAM空力設計チームのような学生チームを対象に、シミュレーションソフトウェア、トレーニングリソース、さらにはこうしたコンペへの参加などの学習機会を提供し、支援しています。設計チームは、こうしたコンペに参加することで、講義で学んだ空気力学の基礎と理論方程式を実際に使用して、シミュレーションを活用し、無人航空機に適用して設計できるようになります。

Ansysのサポートにより、学生チームはシミュレーションソフトウェアを使用するためのノウハウを学び、オンラインチュートリアルや大学の講義を通じて、よりスキルを磨くことができます。また、Learning Forumに参加して、Ansysを使用している他のユーザーと交流することもできます。こうした経験を経て、学生は在学中に即戦力となるスキルを身に付けることができ、その後のキャリア形成に役立てることができます。このAnsysとUNAMチームの継続的なコラボレーションは、約4年前に始まりました。UNAM空力設計チームは、Ansysの支援を通じて無料のソフトウェア、リソース、サポートにアクセスできる、500を超えるチームの1つです。

AnsysアカデミックプロジェクトマネージャーであるVishal Ganoreは次のように述べています。「これは学術的な知識を実践的に応用できる機会です。小型航空機を設計している学生は、より大きな航空機を設計する方法について実践的な経験と知見を得ています。航空宇宙業界を目指している場合、シミュレーションを使用して小型航空機を設計する方法を習得し、必要な専門知識があることを示すことができるので、卒業後すぐに即戦力として活躍できるでしょう。私たちは、企業が最も欲しがる人材はこうした学生であることを理解しています。」

SAE Aero Design East: Advanced Class 2021で総合2位となったUNAM空力設計チームによるMobula航空機

SAE Aero Design East: Advanced Class 2021で総合2位となったUNAM空力設計チームによるMobula航空機

UNAMチームがコンペで活躍

Society of Automotive Engineers(SAE)は、航空宇宙、商用車両、自動車のエンジニアリングの促進、開発、推進を行いながら、エンジニアたちが交流して学べる場を提供している団体です。SAEは、その活動の一環として学生向けのコンペを主催しています。コンペでは、UNAMを含む複数の大学の学生チームが、Regular Class、Advanced Class、Micro Classの複数のカテゴリにわかれ、遠隔制御された小型飛行機を製作することに挑戦します。

UNAM空力設計チームは、54名のメンバーを擁します。これは同大学で最大規模のチームの1つであり、唯一の空力設計チームです。彼らは、主にAdvanced Classに参加し、さまざまなペイロードを運搬および放出できる航空機の開発を目指しています。また、非常に複雑なミッションに関する飛行情報を監視するために、関連するテレメトリーも必要です。

UNAMチームは、Ansysのツールを導入して、小型航空機のプロトタイプを作製し、航空機の効率と外部空力特性を調べました。また、航空機の翼の構造解析を実行して、構造が安定していることを確認しました。これは、航空宇宙業界を目指す学生にとって最適な学習機会となります。具体的には、航空宇宙に関するプロジェクトへの参加で得られる経験に加え、講義で学んだ基礎知識や重要なエンジニアリング知識を適用して、Ansys FluentAnsys CFX、およびAnsys Mechanicalなどのソフトウェアを扱う機会が含まれます。

Cobian氏は次のように述べています。「私たちのチームはさまざまなAnsys製品を使用しましたが、まったく経験がなくても操作することができました。インターフェースは非常にわかりやすくなっています。そのため、特定の手法を用いて解析するための具体的な操作をFluentで習得できれば、Mechanicalを使うときにもそれを適用できます。つまり、Ansysのシミュレーションツール1つの基礎を理解すれば、その知識を他のAnsysのシミュレーションツールにも簡単に応用できます。」 

胴体および着陸装置要素の鋭いエッジ周辺の乱流解析

胴体および着陸装置要素の鋭いエッジ周辺の乱流解析

Ansysによって無限に広がる可能性

チームは、1年間に複数の大会に参加することも珍しくなく、今年は米国でのAdvanced ClassとメキシコでのRegular Classコンペに参加します。さまざまなタイミングや要件を満たすためには、2~3機の航空機を独自に設計する必要があり、そのためにチームメンバー間で非常に綿密な調整が必要となります。いくつもの設計段階にわたって、できる限り複数のタスクを並列で進めます。並行作業ができない場合は逐次に進めますが、Ansysのツールを使用することで、ワークフロー構造を最適化し、期限に間に合わせることが可能になります。こうした調整は、特にパンデミック中に重要となりました。

Gordillo氏は次のように述べています、「これまでの学生チームと異なる点は、パンデミックの2年間で蓄積された創意工夫のレベルです。メンバーがキャンパス内にいたり、リモートから作業することもあったため、チームをまとめることが重要でした。一丸となって協力する必要がありましたが、Ansysのツールを使用することで、必要に応じてリモートからのコラボレーションやキャンパスでの参加など、柔軟性をもって対応でき、目標を達成できました。」

Ansys Mechanicalで実行した航空機構造のトポロジー最適化

Ansys Mechanicalで実行した航空機構造のトポロジー最適化

航空機構造のモーダル解析

航空機構造のモーダル解析

Gordillo氏は、キャンパス外でシミュレーションソフトウェアにアクセスして情報共有を促進するために、自宅にサーバを設置し、リモートデスクトップソフトウェアを使用して、個々のノートパソコンのリソースプールを拡張しました。そうすることで、チームメンバーはサーバと直接通信して、キャンパス外のどこからでもライセンスを有効化して、シミュレーションを実行できるようになりました。また、この構成により、シミュレーションを介してさまざまな設計条件の値を取得し、シミュレーション結果のデータを共有して、概念を実現できるようになりました。

Gordillo氏は次のように述べています。「誰もが最善を尽くし、自分が担当する作業に全力を尽くしています。コンペに参加することはとても有意義な経験だったと思います。自由にイノベーションを行え、アイデアを持ち寄り、試すことを恐れない、非常に有能で知的なメンバーが揃ったチームの一員になれたことを嬉しく思います。」

このチームの努力は報われたのでしょうか。2021年、UNAM空力設計チームは、国際コンペで総合2位となり、米国で開催されたAdvanced Classコンペではテクニカルプレゼンテーション部門で2位を獲得しました。今年に入ってからも、メキシコで開催されたコンペでテクニカルレポートとテクニカルプレゼンテーション部門ですでに1位を2回獲得しており、今後もさまざまな賞を獲得することを目指しています。

Cobian氏は次のように述べています。「採用したツールや、Ansysから提供されている各種のサポートは、すべて非常に役立っています。これからも成長を続け、チームとして前進し続けていきます。」