Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
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Ansysブログ
January 19, 2024
永久磁石は、材料自体の内部構造によって磁場が発生する材料です。永久磁石のラッチ機構を設計する際には、適切な磁気吸引力をもたらすように磁石が設計されているかどうかを確認する必要があります。永久磁石間の磁力は、2つの磁石間の分離距離、磁石のサイズ、永久磁石の材料など、いくつかの要因に依存します。レアアース磁石は高価であるため、エンジニアはAnsys Maxwellなどの低周波電磁界ソルバーを使用することで、サイズおよび材料の解析を実行してラッチ機構の磁気吸引力を最適化しながら、磁気ラッチのコストを削減できます。
スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、バーチャルリアリティ(VR)デバイス、磁気ラッチによる壁取り付け型のセキュリティカメラ、および日常的に使用される多数の電子機器のワイヤレス充電器やスマートスクリーンカバーには、磁気ラッチ機構を実現するために永久磁石が採用されています。
取り付け型セキュリティカメラなどの一部の用途では、ネジやボルトといった取り付け具に代わって永久磁石が使用されています。また、ワイヤレス充電器などでは、磁石によって受信機と送信機の最適なアラインメントが保証され、充電が高速化されます。いずれの場合も、適切に設計されたエレクトロニクス用の磁気ラッチ機構はユーザーエクスペリエンスを向上させます。
ここでは、磁気ラッチの設計におけるいくつかの重要な考慮事項について説明しましょう。
永久磁石や軟鋼などの強磁性体材料は、磁気ラッチ機構の磁気吸引力に影響を与えます。強磁性体材料と永久磁石を組み合わせて使用した場合は、さまざまな不確定要素が生じるため、正確な磁気吸引力を計算する際に強磁性シャントと磁束集光器をモデル化することが重要です。
強磁性鋼は、強い磁場を生じさせるため、特定の動作条件下で飽和することが知られています。ラッチ機構の飽和は、磁力を制限し、ラッチ近傍のホールセンサー(磁場を検出する)と相互作用する漂遊磁束を引き起こすため、望ましくありません。たとえば、磁石アセンブリ間の分離距離が大きい軟鋼シャントは飽和しません。しかし、磁気吸引力が生じて磁石間の分離距離が小さくなると、磁束密度が高くなり、軟鋼シャントが飽和することがあります。同様に、軟鋼シャントの厚さも飽和に影響を与えます。
Maxwellを使用することで、強磁性鋼を使用する磁気ラッチデバイスの飽和を捉え、正確な磁場と磁気吸引力を解析できます。
有限要素法ソルバーから正確な場の解を得るための重要な要素は、メッシュ解像度です。分離距離と飽和効果を捉えるには、メッシュ要素の分布に特別な考慮を払う必要があります。Maxwellでは、初期メッシュは自動生成され、ユーザー定義の収束基準に達するように調整されるため、正確な解析が保証されます。
磁気ラッチを設計するエンジニアにとっての課題の1つは、永久磁石や強磁性鋼のB-H曲線などの材料特性を得ることです。永久磁石は温度によって材料特性が異なるため、適切な材料ライブラリにアクセスできることで、材料スイープを実行して、磁気ラッチ性能に対する温度の影響を調査できるようになります。Ansys MaxwellとAnsys Grantaの材料ライブラリでは、異なる温度におけるさまざまなグレードの磁石のB-H曲線を含め、ベンダーから提供された永久磁石ライブラリにアクセスできます。
永久磁石は温度に敏感で、高温では減磁する傾向があります。減磁は、磁気吸引力を低下させます。特定の動作条件下での永久磁石の不可逆的な減磁は、磁気ラッチ機構の故障につながります。したがって、磁気ラッチを設計する際には、温度の影響を考慮することが重要です。図5は、Maxwellでの解析に基づいた、N42磁石のさまざまな温度(空気中および磁気回路内に配置された場合)における動作点を示しています。その結果、リコイル線に見られるように、高温での減磁が大きくなることがわかりました。
こうした減磁だけでなく、未使用の磁石の磁化や強磁性体材料におけるヒステリシス効果などの高度な磁気効果は、Maxwellを使用して解析できます。強磁性体材料のヒステリシス挙動により、永久磁石が近傍から取り除かれると、軟質鋼の残留磁束が発生します。残留磁束は残留力を引き起こすこともあるため、類似デバイスの制御を設計する際には考慮しなければなりません。図は、標準的な1008炭素鋼製の物体から永久磁石を引き離した場合、または近付けた場合に追跡されたベクトルヒステリシスループを示しています。
図6: 永久磁石と強磁性鋼を使用した磁気ラッチ(左)と、磁石を近付けた場合および引き離した場合の強磁性鋼のヒステリシス挙動(右)
空隙、材料、形状、サイズ、および温度の解析を実行すると、大きな実験計画法(DOE)空間が得られます。ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)およびAnsys Cloudソリューションは、エンジニアが設計バリエーションを並列に実行して、より迅速に解を得るのに役立ちます。
図に示すように、Maxwellでは、以下を含め、磁気ラッチ設計のための包括的な磁界解析が提供されます。
MaxwellとAnsys Motionを組み合わせてシミュレーションを実行することで、磁気ラッチの設計に加えて、磁気吸引時の磁石の運動学的なモーションや衝撃応力を解析できるようになります。MaxwellソルバーとMotionソルバーの間で磁力、トルク、および位置情報が交換されることで、ラッチ機構の構造力学が計算されます。
エンジニアは、MaxwellをはじめとするAnsysの包括的な磁気およびマルチフィジックスソリューションを使用して、信頼性の高い磁気ラッチ機構を設計できるようになります。これにより、キーボード、スタイラス、イヤホン、ワイヤレス充電式トランスミッタなどの付属品をタブレット、スマートフォン、またはその他の電子機器に簡単に取り付けられるようになります。
磁気ラッチに関するオンデマンドウェビナーをご覧ください。このウェビナーでは、Ansys Maxwellで磁石のサイズおよび材料の解析を実行して、コストを削減しながら、磁気ラッチの性能を向上できる方法をご紹介します。強磁性体材料での飽和、磁化/減磁を含む高度な磁気機能、温度依存性、ベクトルヒステリシスのモデル化、複雑な運動/衝撃の予測など、設計の重要な側面について説明します。