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Ansysブログ

June 29, 2023

持続可能性に優れた推進システムを追求しながらエンジニアリング課題を克服

民間航空業界は、今後数十年間は、これまで以上に持続可能性に優れた推進システムを追求することになるでしょう。ただし、こうした新しい設計を定義して開発する際には、エンジニアリング上の重要で多様な課題を克服しなければなりません。そのためには、設計プロセスを効率化して、製品性能を向上させ、コストのかかる開発遅延を減らすエンジニアリングソリューションに頼る必要があります。

Green aviation

マルチトラックかつマルチタイムラインのアプローチ

民間航空会社は、当初は従来の燃焼エンジンから電気推進システムに移行することで、航空機の持続可能性を向上させる方法を模索しました。しかし、既存のバッテリテクノロジーの限界により、この移行は短期的には不可能なことが分かりました。この点を踏まえ、民間航空業界は推進システムの開発でセグメント化されたアプローチを採用しています。このアプローチでは、短期的にはハイブリッド電気システムという形で真の持続可能性の向上を達成しつつ、よりエネルギー効率の高い電気および水素ベースのシステムを追求することになります。このマルチトラックかつマルチタイムラインのアプローチにより、航空会社はイノベーションを進め、製品の他の適用方法や市場を発見できるようになります。

航空エンジニアは、こうした画期的なテクノロジーを追求する中で、多分野にわたるシステム設計プロセスがもたらす数多くの技術的課題にも対処する必要があります。この記事では、それらの課題に着目して、デジタルエンジニアリングソリューションがその克服にどのように役立つかについて説明します。

持続可能な推進システムのエンジニアリング課題

複雑な製品には、それぞれ独自のエンジニアリング上の課題がありますが、航空機の新しい推進システムは非常に複雑であり、まだ完成していないテクノロジーに依存しています。つまり、エンジニアリングの課題には多分野にわたる解決策とトレードオフが必要になり、システム全体を評価する必要があります。課題には、以下のようなものがあります。

  • 電動ドライブトレインとシステムの統合。エンジニアは、統合された組込み制御を使用して、最適なシステムアーキテクチャを定義する必要があります。また、熱マネジメントやパワーマネジメントのための広範な要件を開発して、システムが本質的に安全であるように設計されていることを確認する必要があります。
  • 電動モータの設計。新しい推進システムを定義して設計するには、競合する要件を満たすためにトレードオフを行いながら、システムの安全性と効率を最適化する必要があります。大型旅客機に最適な推力を設計した場合、熱マネジメントの問題が発生し、より強力な冷却システムが必要になります。そうなれば、重量が増え、航続距離が制限されるでしょう。エンジニアは、実行可能なシステムを追求する際に、これらのトレードオフで慎重にバランスを取る必要があります。
  • エネルギーの貯蔵と分配。電気推進システムと水素ベースのシステムでは、発生する問題が異なります。バッテリを搭載した電気システムでは、システムのパワーマネジメント制御に過度な影響を与えることなく、エネルギーを貯蔵および放電する必要があります。水素ベースのシステムでは、多くの場合、水素液体を使用して燃料が供給されます。この液体は-250℃で貯蔵され、システムを安全に通過して燃料電池まで流れ、そこで電気に変換される必要があります。
  • パワーエレクトロニクスおよび制御の設計。新しい推進システムでは、さまざまな荷重条件下でパワーエレクトロニクスを管理しながら、高出力性能を達成しなければなりません。高周波スイッチングに対応し、認証規格に準拠する条件および負荷適応型の制御ソフトウェアおよびハードウェアが必要です。設計チームは、飛行サイクルのどの段階でも、オンボードコンポーネントとの電磁干渉を回避する必要があります。
電動ドライブトレインとシステムの統合

電動ドライブトレインとシステムの統合: Ansysの製品を導入することで、エンジニアは設計をモデル化し、その性能をシミュレーションして、システムアーキテクチャを改良し、競合するシステム要件を満たせるようになる

知見で課題を克服

従来の製品開発ツールは、複数のExcelファイル、文書、eメールなどに依存する部分が多くありました。これまでの数十年間は、既存のシステムを更新することで十分なデータを得ることができていました。しかし、これまでにない新しい推進システムを開発するには、新しいアプローチが必要です。これまで以上に持続可能性に優れた飛行を追求する際に直面するエンジニアリング上の課題が何であれ、デジタルエンジニアリングソリューションはそれらを克服するための方法を提供します。 

パワーエレクトロニクスおよび制御の設計

パワーエレクトロニクスおよび制御の設計: Ansysのツールで提供されるシミュレーション機能を使用して、熱的影響や電磁効果が安全上の問題を引き起こさないように、さまざまなパワーサイクル中の推進システムの性能を解析できる

これらの高度なソリューションにより、エンジニアリングチームは開発の早い段階から設計の性能に関する詳細な知見を得られるようになり、より迅速に反復とイノベーションを行えるようになります。エンジニアは、こうした知見を得られることで、システムアーキテクチャの最適化、効果的な材料の選択、エンジニアリングのトレードオフのバランスをとる際に、十分な情報に基づいて意思決定を行えるようになります。その結果、設計エラーを減らし、実行可能な設計を確立するために作製およびテストする必要があるプロトタイプの数を減らすことができます。これにより、設計サイクルが短縮され、コストが削減され、最終的により良い製品が開発されます。

最先端のエンジニアリングソリューションで航空会社を支援

Ansysは、航空会社が持続可能な推進システムを設計する際に直面する固有のエンジニアリング課題に取り組むために必要な機能を提供します。エンジニアは、これらのソリューションを使用して、開発の早い段階からシステムの挙動をモデル化して解析し、最適な性能を確保するために迅速に調整しながら、製品ライフサイクルとともに進化する方法で設計の論理的根拠を捉えて追跡できるようになります。設計チームは、これらのソリューションを導入することで、システムの機能要件と安全要件を早期から特定できるようになり、設計または制御ソフトウェアを使用して潜在的な故障に対処し、より迅速に認証されるよう設計を導くことができます。

また、独自設計を開発するために事前作成された開始点となる、Ansysの電動モータテンプレートを利用することもできます。さらに、統合されたシミュレーションワークフローソリューション機能を活用して、分野を超えた解析を実行し、すべてのサブシステムが、必要なすべての運用構成で安全かつ効果的に相互作用することを保証できます。

Ansysのデジタルエンジニアリングソリューションは、航空業界での環境フットプリントの削減に向けた企業の取り組みに合わせて調整されているため、エンジニアはそうした取り組みを設計に組み込むことができます。これらのソリューションは、燃料電池設計の改善、バッテリの熱性能のシミュレーション、複雑なシステムアーキテクチャの最適化と統合など、どのような目的であっても、従来の手法よりも効率的かつ迅速に、さらにコスト効率の高い方法での実現に役立ちます。

持続可能性が民間航空機の未来を推進していることは間違いありません。しかし、そうした未来を実現する際、どの企業が最も大きな役割を果たすかは定かではありません。業界にとっても環境にとっても、リスクは高くなります。

持続可能な将来の航空機を開発

非常に複雑な新しい推進システムを迅速に定義して開発し、競合他社よりも早く高品質の製品を市場に投入できる航空会社は、ネットゼロへの競争でも大きな優位性を得ることができます。Ansysが提供する多数のツールにより、製品の複雑なエンジニアリング問題を克服し、その競争で優位性を確立するために必要なデジタルフレームワークに統合できます。

これらの次世代推進システムの推進要因、技術的課題、ソリューションについては、ホワイトペーパー「持続可能な航空機のためのハイブリッドおよび電動推進システム」をご覧ください。