Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
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Ansysブログ
May 25, 2022
モデルベースシステムズエンジニアリング(MBSE)は、ドキュメント中心のシステムズエンジニアリングとは対照的に、情報、フィードバック、要件を交換する主要な手段として、デジタルシステムの作成と利用、さらにはドメインモデルのエンジニアリングに焦点を当てた方法論です。これには、システムを表すために使用するすべてのデジタルモデルが、システムのライフサイクル全体にわたって調整および維持されることを捉え、伝えて、確認するための全プロセスが含まれます。
1990年頃以前、システムズエンジニアリングの設計とは、システムがどのように動作するかを示す図面、図、数式、要件、およびその他の仕様を含む、多数の関連ドキュメントであることがほとんどでした。しかし、その頃には、プロジェクト規模が大きくなりすぎて、つながりのないドキュメントに頼ることができなくなりました。主に、次のような問題がありました。
MBSEは、変化しないドキュメントをインテリジェントなデジタルモデルに置き換えるために開発されました。このモデルには、要件、アーキテクチャ、システムの各部分間のインターフェースシステムに関する重要なすべての情報が含まれています。紙のドキュメントをフォルダに整理するのとは対照的に、これらのデジタルモデルはデジタルスレッドで接続し、それを辿ればデザイン全体を理解できるようにします。
全体にわたるシステムアーキテクトモデル(SAM: Systems Architect Model)は、プロジェクトに取り組むすべての人にとって「信頼できる唯一の情報源」として機能します。このデジタルモデルには、プロジェクトに取り組むすべてのエンジニアがアクセスできる中心的な場所がありますが、エンジニア単独では変更することはできず、唯一の情報源として保持されます。加えられた変更は自動的にモデル全体で更新され、ソフトウェアによって内部の一貫性と精度がチェックされます。
MBSEは、次の3つの主要コンポーネントに依存しています。
MBSEでは、SAM、CAD、およびCAEシミュレーションツールを組み合わせることで、すべてのモデルとエンジニアリングデータをリンクするデジタルスレッドが作成されます。これは設計サイクルの早期段階で発生し、製品が使用されなくなるまで、運用ライフサイクル全体を通して機能し続けます。変更が加えられると、デジタルスレッドによって、1つのモデルに対する更新がシステム内のすべてのモデルに自動的に転送されます。
Ansysが提供するクラウドベースのシステムアーキテクチャモデラー(SAM)は、リアルタイムのコラボレーションをサポートするためにゼロから構築されており、他のAnsys MBSEツールとの緊密な統合や、要件管理ツールやPLMツールなどのサードパーティツールとの統合を可能にするフル機能のAPIを備えています。Ansysが2021年にPhoenix Integration社を買収したことで取得したソフトウェア製品であるAnsys ModelCenterは、エンジニアリングシミュレーションソフトウェアとSAMとの間の接続を提供し、エンジニアが設計を仮想的に検証できるようにします。そのため、構造、流体、電磁界、安全性、組込みソフトウェアシミュレーションを含むデジタルモデルを扱うプロジェクトに取り組んでいる場合、ModelCenterはAnsys Mechanical、Ansys Fluent、Ansys HFSS、Ansys medini analyze、Ansys SCADE、そしてその他のシミュレーションツールの操作とデータ収集を統合し、これらのシミュレーションをSAMに接続してMBSEを実現します。オープンなエコシステムを提供するというAnsysの全体的な企業戦略と一貫して、ModelCenterはベンダーに依存しないソリューションであり、他のソフトウェアベンダーのシミュレーションツールも含め、ワークフロー内のあらゆるシミュレーションツールの実行を自動化できます。
設計サイクルが進み、製品設計が改善されるにつれて、エンジニアはAnsysのMBSEテクノロジーを使用して、設計時のシステムが指定された要件を満たしているかどうか、または変更が必要かどうかを評価できます。要件またはSAMに変更が加えられた場合、結果が仕様を満たすまで手順全体を繰り返すことができ、設計が製品の寿命全体にわたって意図したとおりに機能することを確認できます。これらの要件が満たされた後にのみ、チームは設計の物理プロトタイプを作成して実機試験を行います。
MBSEの価値は、設計ライフサイクル全体を通じて、また設計ライフサイクルのできる限り早い段階で、より適切な意思決定を行えるようにすることです。ステークホルダーが問題を早期に特定できるほど、修正は容易で、修正にかかるコストを抑えることができます。
MBSEは、統制が取れたシステムズエンジニアリングアプローチを可能にすることで、要件から廃棄までの価値を提供します。デジタルモデルは、唯一の情報源に対する検査、検証、妥当性確認が可能であり、モデルの内部的な一貫性を確保して、納期、産出高、売上高と純利益の両方を向上させることができます。
たとえば、空軍が1回の燃料供給で3000マイルを飛行できる新しい航空機を設計するために入札したとします。従来の方法で航空機を設計、製造、テストすることも、モデルベースのアプローチを使用することもできます。
この複雑な新しい航空機を設計するためにMBSEアプローチを使用すると決めた場合、まず、航空機のすべての重要な要件を文書化したSAMを作成します(1回の燃料供給で3000マイルを飛行できる必要があるという要件を含む)。次に、SAMを使用して、システムアーキテクチャ、目的の振る舞い、システムコンポーネント間のインターフェースなど、構築する設計を記述します。この時点で、シミュレーションを使用して、記述した設計がすべての要件(物理的および振る舞いの両方)を満たしていることを確認します。シミュレーションには、空気特性を検証するための流体シミュレーション、機械的強度を検証するための構造シミュレーション、通信機器の機能を検証するための電磁界シミュレーションなどが含まれます。
より複雑なミッションベースのアプリケーションの場合、エンジニアはデジタルミッションエンジニアリングソフトウェアを使用して、最新の航空宇宙および防衛ミッションの複雑なSoS(システムオブシステムズ)構造をシミュレーションできます。デジタルミッションエンジニアリングは、航空宇宙、防衛、電気通信、インテリジェンスアプリケーションのためのデジタルモデリング、シミュレーション、テスト、解析を組み合わせて、システムのライフサイクルのあらゆる段階でのミッションの成果を評価します。たとえば、これらのミッションでは、地上、空中、水中、または宇宙ベースの何百もの兵器システムを使用し、それらすべてが通信して協調した動作をとる必要があります。デジタルミッションエンジニアリングシミュレーションにより、エンジニアや軍関係者は物理ベースのシミュレーションを使用して、複雑なミッションを仮想的に実行できるため、ミッションの信頼性が高まります。
実例として、Lockheed Martin Space社はAnsys ModelCenterを使用してMBSEを実行し、タッチアンドゴーオペレーションで小惑星のサンプルを回収することをミッションとしたOSIRIS-REx宇宙探査機のミッション軌道をシミュレーションしました。2020年10月、OSIRIS-RExは、これまでのどのサンプル回収ミッションよりもはるかに大きい60グラム以上のサンプルの採取に成功しました。2023年には、このサンプルが地球に戻る予定です。
Lockheed Martin Space社のシステムズエンジニアであるPhathom Athena Donald氏は、次のように述べています。「シミュレーションを自動化してこのシステムモデルに統合することで、チームはミッション要件の変更に伴う潜在的な問題を迅速に特定し、宇宙探査機のライフサイクル全体を通じて要件とミッション設計パラメータの継続的な検証を実行できます。 元のプロセスと比較した全体的な改善は、所要時間が約7分の1に短縮されたことです。」
MBSEへの最大の後押しは、2015年1月7日に米国国防総省(DoD: Department of Defense)が発行したDoDI 5000.02です。このドキュメントのEnclosure 3のSection 9では、モデリングとシミュレーションについて定められています。最初の行には、次のように記述されています。「プログラムマネージャーは、モデリングとシミュレーションの活動をプログラム計画とエンジニアリング作業に統合します。」この簡潔な声明とDoDI 5000.02の詳細により、国防総省ではMBSEを米国の防衛システムおよび兵器システムに関連するすべての提案の要件と定めました。この指令により、主にプロジェクトの遅延やコスト超過を回避するための手段として、A&D分野はMBSEの最大の支持者となっています。
しかし、A&D分野がこの動きの先頭に立つ一方で、他の分野も急速に追いついています。自動車業界では、複雑な自動運転車の課題に対するソリューションを追求しており、MBSEも急速に採用されています。半導体、医療機器、代替エネルギー、スマートグリッド、5G通信といった他の分野でも複雑さが増すにつれて、MBSEの採用も加速する可能性があります。
詳細については、オンデマンドウェビナー「デジタルトランスフォーメーション:MBSEモデルをミッションの成果につなげる」をご覧ください。