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Ansysブログ

January 9, 2024

シミュレーションによる迷光のファセットの探索

Ansys Opticsは、スマートフォンのカメラアプリケーション開発で迷光を軽減または排除するのに役立ちます。

今では、どこにいても、グループ写真や自撮り写真をスマートフォンで撮影している人を見かけるでしょう。従来のカメラとスマートフォンのカメラの境界線が曖昧になる中で、これらのハンドヘルドデバイスのメーカーは、以前は考えられなかった高品質の画質を実現するために、ソフトウェアとハードウェアの最適な組み合わせを見つけることを迫られています。

これまでモバイル撮影は長い道のりを歩んできました。かつては休暇でよく使用していたデジタルカメラは、今では過去のものになりつつあります。今日の最高評価のスマートフォンは、デジタル一眼レフレンズ(DSLR)カメラに近い性能を備え、よりシャープな画質を実現します。

スマートフォンのカメラシステムは、基本的にカメラコンポーネント、テクノロジー、システムの集合体です。その多くは、異なる焦点距離と特性を持つ複数のレンズで構成されます。広角レンズ、超広角レンズ、望遠レンズ、マクロレンズなどが一般的です。各レンズは特定の目的に対応しており、ユーザーはさまざまなショットを撮影できます。

これらのハンドヘルドカメラアプリケーションの課題は、さまざまな照明条件に左右される環境下でも、必ず高性能なパフォーマンスが求められる点です。屋内または屋外を問わず、昼間であれば日光、日陰、影の影響を受け、夜間であれば街灯、標識、あるいは通り過ぎる車などのヘッドライトから発せられる光の影響を受けますが、消費者はどんな環境でも一貫した性能を期待しています。

Ansys Opticsシミュレーションおよび設計ソフトウェアの予測能力を活用することで、スマートフォンのカメラシステムは、想定されている使用環境に関係なく、ピーク性能を発揮するように最適化できます。Ansys SpeosおよびAnsys Zemax OpticStudioは、光学系のセンサーが検出した迷光を低減または排除するための迷光解析を実行する強力な機能を備えています。2つの製品は、この目的のために効率的かつ容易に相互運用できるように設計されています。

迷光が多くなるほど画質が低下

光学系の設計における最大の考慮事項の1つが迷光です。定義上、迷光とはカメラセンサーにおける望ましくない散乱光または反射光であり、光学設計では意図せず、カメラシステムの光学性能や画像品質を低下させるものです。また、スマートフォンのカメラで撮影した画像のコントラストが低下したり、ぼやけたり、変色したりする一般的な原因でもあります。

迷光には、ゴーストとグレア(光幕とも呼ばれる)の2種類があります。

  • ゴーストとは、カメラの視野の端に近い光源からの光がセンサーに当たる前にレンズ間で2つ以上の不要な反射が生じた場合に、画像内で明るいスポットとして現れる反射です。
  • グレアは、カメラシステム内で光が散乱するときに生じます。散乱は、システム内の光学またはオプトメカニカルコンポーネントで生じ、光学面の欠陥または欠陥のあるシステム設計など、多くの要因によって引き起こされる可能性があります。

設計の早い段階で、性能低下につながる迷光を特定して排除することを目標とするハンドヘルドデバイスのメーカーにとって、これは大きな問題です。こうした迷光を避けるためには、解析と制御によって、特定のデバイスの光学センサーの迷光の影響を最小限まで抑えることが必要です。しかし、カメラは実際にはどのような環境でも使用されるため、設計ではさまざまな照明条件での迷光を考慮する必要があります。

この問題を解決するには、カメラの視野の内側または外側に存在する、外部からの重要な光源の位置を特定する方法を模索することが重要です。次のステップは、カメラのレンズを再構成したり、異なる光学特性を持つ新しい材料(吸収率の高い材料や反射防止コーディングなど)に変更したりすることで、迷光の影響を修正する方法を設計することです。

Ansys Opticsは単一のワークフローで異なる視点を提供

Ansys Opticsは、スマートフォンなどの光学対応製品のデジタルモデリングを通じて光の振る舞いと伝播をシミュレーションできます。これにより、より正確でロバストなカメラ設計が可能になります。エンジニアは、複数のAnsys製品の機能を使用して、カメラシステム内の迷光の伝播を特定、理解、解析、制御できるようになります。OpticStudioでは、高精度の解析と設計を実行して光学系を最適化でき、性能とゴースト迷光の両方に対する薄膜コーティングの影響を考慮できます。滑らかな光学面からのフレネル反射の影響を最小限に抑え、ゴースト焦点の位置を最適化して、反射防止コーティングを塗布する最適な面を決定するために使用されます。

新しいOptical Design Exchange(.odx)フォーマットを使用することで、グレア迷光解析をシームレスにSpeosに移行して、2つのツール間でのスムーズなデータ転送を容易にします。OpticStudioのExport Optical Design to Speosツールを利用することで、設計者は光学設計ファイルを生成して、Speosに直接インポートできます。このファイルには、レンズ設計、スペクトル材料とコーティングの特性、絞り面、センサーに関する重要な情報が含まれており、これによりSpeos 3D環境内で正確な表現が保証されます。

Optical design exchange

Ansys Zemax OpticStudioとSpeosでの光学設計の交換

CADに依存しないSpeosのダイレクト設計モデラーを使用すると、最適化されたレンズスタックに加えて、オプトメカニカルコンポーネントをインポートして検討できるようになります。このモデラーは、CADのクリーンアップ、迅速な設計変更、材料最適化のための機能を備えています。物理ベースのレイトレーシングアルゴリズムと高度な迷光解析機能(Light Expert(LXP)、シーケンス検出、光線経路フィルタリング、マルチセンサー解析、3D放射照度、および自動化のサポートを含む)により、高精度光学系の設計および迷光解析のためのエンドツーエンドのワークフローが提供されます。

Ansys Opticsツールを使用したカメラシステムにおける迷光の解析は複数のステップで構成されます。この例では、スマートフォンのカメラを昼間に使用したときに日光から生じる迷光を調査するための全体的なプロセスを示します。このようなケースには、次の5つのステップを完了する必要があります。

OpticStudio workflow

迷光解析のワークフロー

1. 光学設計および最適化: このステップでは、変調伝達関数(MTF)や点広がり関数(PSF)などの指標を使用して、主要経路性能に基づいてレンズシステムを設計、最適化、公差処理します。

2.画像内のゴーストの最適化と解析: フレネル反射の影響を最小限に抑え、反射防止コーティングを塗布するための重要なレンズ面を決定することに焦点を当てます。

3.システムレベルの迷光解析と可視化: このステップでは、鏡筒、取り付けジオメトリ、ハウジングなどのオプトメカニカルコンポーネントを組み込み、Optical Design Exchange(.odx)を使用して光学系をZemaxからSpeosに転送して、システムレベルで迷光を解析します。次に、意図した視野(FOV)の内側と外側のすべての重要な光源位置を特定して、システム全体の光漏れを評価します。

4.迷光経路の解析: シーケンスフィルタリングを適用して、特にオプトメカニカルコンポーネントからの散乱に注目しながら、迷光を引き起こす最も重要なオブジェクトを特定します。

Optical ray tracing

センサーに当たるエネルギーによって分類された、20番目に多くのエネルギーを持つ迷光経路の図。

5.迷光の最小化: 前のステップで重要と判断された面に設計および材料の変更を加えることで、システム内の迷光を最小限に抑えます。

Ansys Opticsを使用してスマートフォンのカメラシステムの迷光を解析するワークフローのより包括的なステップバイステップガイドについては、こちらの記事を参照してください。