Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
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Ansysブログ
March 1, 2024
ハイブリッドデジタルツインは、高度なシミュレーションと解析を組み合わせることで可能になる、接続された物理アセットの仮想表現です。最良のデジタルツインは、実際の物理的な挙動に可能な限り密接に従い、複数の運用シナリオや製品バリエーションにわたる挙動を予測して、変化する環境や条件に適応し、迅速で自動化されたワークフローから生まれます。
Ansys Hybrid Analyticsは、機械学習技術を使用してデータと物理モデリングを組み合わせて、運用中のデジタルツインを更新するためのツールセットです。Hybrid Analyticsツールセットは、システムやプロセスのリアルタイム監視、予知保全、パフォーマンスの最適化を可能にします。
オペレータはエンジニアリング設計を運用時に再利用し、エンジニアは次の設計サイクルのためにデータから現場の洞察を得ることができます。ハイブリッドデジタルツインは、仮想センサーからモデル化されていない物理特性まで、さまざまな業界で使用されており、企業が多くの課題を解決するのに役立ちます。このインタビューでは、Ansysのプロダクトセールス担当シニアマネージャーであるVitor Lopesに、ハイブリッドデジタルツインと、エネルギー業界におけるこのテクノロジーの一般的なユースケースについて話を聞きます。
Vitor Lopes: アセット管理について考えるとき、一般的にはパフォーマンス、アセットの信頼性、安全性について考えます。特定のアセットをより効率的に運用する方法を検討します。エネルギー業界では、効率の向上に直面すると、オフセットデータを収集し、解析して、意思決定を行うことが一般的です。データの品質が高いほど、適切な意思決定を行えるようになり、それによってリスクを最小限に抑えることができ、目標を達成する可能性が高まります。
しかし、必要なデータがすべて揃っていない場合や、利用できるデータの品質よりもリスクがはるかに高い場合もあります。多くの場合、安全マージンは初めからプロセスに組み込まれていますが、データが不足している場合や不確実性が多すぎる場合は、マージンが広く設定されます。これにより、特定のアセットから得られるパフォーマンスが不必要に制限されます。
近年、エネルギー業界は多くの課題と経済的プレッシャーに直面しています。既存アセットの効率性を向上させようという大きな圧力があります。また、エネルギー業界のプロセスの大半は熱負荷が高く、パフォーマンスの向上が二酸化炭素排出量の削減を意味する場合があります。そうした状況では、アセット管理の向上による運用効率の達成や持続可能性目標の達成など、デジタルトランスフォーメーションが大きな役割を果たします。
デジタルトランスフォーメーションは、データの可用性を向上させ、元のデータセットからより多くの洞察を引き出します。多くの企業がコストを抑え効率を向上させるために採用しているデジタルテクノロジーの最近の進歩により、これまで以上に効率的にデジタルトランスフォーメーションを実現できます。この動きは、既存アセットのパフォーマンスを向上させながら、持続可能性に優れ、効率的である次のアセットのセットを開発/置換することで、企業がネットゼロの目標を前倒しすることも可能にします。デジタルツインは確実に、これらのイニシアチブの最前線にあります。
Vitor Lopes: デジタルツインの概念は、運用中のアセットまたはプロセスがあり、仮想世界にこれらのアセットの重要な要素を表すモデルを作成して、それらを同期することです。データは、運用中のアセットからデジタルモデルに送られます。モデルは、その測定されたデータに基づいて予測を行い、運用環境では測定できない洞察を生成します。最後に、オペレータはモデルからこの情報を受け取り、調整を行います。追加のデータを利用できることで、意思決定をより効率的に行うことができます。この概念は、「デジタルツイン」という用語が登場する以前から、アセット運用業界で長年採用されてきました。
では、以前とは何が違うのでしょうか。テクノロジーの進歩により、これまで以上に高い頻度と忠実度で2つの世界を同期させることができます。それによって、より良い意思決定を行えるようになります。そうした観点からデジタルツインを考えると、モデルを作成する適切なレベルの精度と速度でバランスを取る必要があります。通常、これはトレードオフとなります。柔軟性の問題もあります。これらのモデルにインテリジェンスをもたらす方法は何か。センサーデータはあるのか。物理モデルはあるのか。それらは1Dか、3Dか。さらに、適応性の問題もあります。モデルが実地テストに非常によく適応し、初日から正確な予測を得られたとしても、今から10年後には同じように適応するのでしょうか。デジタルツインは、経年プロセスを追跡して適応できるのでしょうか。
スケーラビリティも考慮しなければなりません。他の課題に対する解決策を見つけたとしても、多数のアセットに対しても簡単に再現できるスケーラブルな方法はあるのでしょうか。また、相互運用性とセキュリティの包括的な課題も考慮しなければなりません。コンポーネントがやり取りできるようにしつつ、安全を確保する必要があります。
これまでは、デジタルツインを可能にするモデルを作成するために、データベースと物理ベースの2つの異なるアプローチが採用されていました。Ansysと多くのお客様は、この2つのアプローチにはそれぞれメリットと課題があることを理解しています。これまでの課題を超えて対処できる精度、スピード、柔軟性、適応性、拡張性を最大限に高めるために、Ansysはハイブリッドソリューションで2つのアプローチを統合しました。これにより、必要であれば、より成熟度が高く迅速に対応できるアプローチから開始し、初期値を収集して、2つ目のアプローチの要素を増やすことで、さらなる洞察とメリットを得ることができるようになります。
Vitor Lopes: ハイブリッドデジタルツインは、物理モデルとデータモデルの両方からインテリジェンスを生成するだけでなく、両方の機能性を組み合わせます。データの観点からデジタルツインの導入を進める場合、これらのモデルは、これまで測定してきた範囲について限界に達する傾向があることが時間の経過とともにわかります。高品質で関連性の高い過去のデータが利用できるシナリオでは、データベースのアプローチが良い出発点となります。とはいえ、それを超える予測が必要になると、動作範囲だけでなく、これまでデータを収集していなかった変数の観点においても複雑性が増します。この場合、新しい現象を推定して説明することが難しくなります。
一方、物理ベースの観点からデジタルツインの導入を進める場合、物理モデルは説明可能性という点では理解しやすいと言えるでしょう。物理モデルを使用してこれらのデジタルツインをトレーニングすると、予測限界をより細かく制御できるようになります。運用中のアセットに対して使用する予定の境界条件内でトレーニングされたモデルを使用できるようになります。それだけでなく、3D物理モデルに絞って言えば、デジタルアセットのどこにでもローカライズされた測定値を定義できます。これは非常に強力です。これは、仮想センサーの概念と同じです。
しかし、多くの場合、物理モデルは完璧ではありません。物理特性が欠落している、あるいはアセットが劣化していることもあります。これらのモデルを微調整するために、運用環境から測定データを持ち込むことが非常に重要になります。これがハイブリッドデジタルツインの主な概念です。
ハイブリッドデジタルツインに対応できるように、Ansysはプラットフォームを提供しています。3Dまたは1Dのいずれの環境でも、モデルを作成して検証できます。さらに一歩進んで、アセットに接続される展開可能なユニットを作成して、調整することができます。また、これらのモデルをオンラインで調整できる手法を設定することも可能です。
最後に、これをスケーリングする機能があります。コンテナまたはウェブアプリのいずれを使用した場合でも、Ansys Digital Twinプラットフォーム内で作成されたモデルを外部に取り出し、独自の環境に配置してライブセンサーデータで稼働するための方法がいくつかあります。モデルを使用して測定可能なデータを与え、測定不可能なものを予測できます。
Vitor Lopes: エネルギー業界には、さまざまなステークホルダーが関与しています。事業によっては、運用事業者、サービス会社、設計、調達、建設(EPC)のエキスパート、あるいはOEM企業などが関連しています。企業がどのようにデジタルツインを活用しているかによって、さまざまなタイプのユースケースがあります。たとえば、メーカーは、自社システムから取得した設計情報を使用してデジタルツインを作成できます。デジタルツインを提供することで、既存の製品に加えて追加サービスやプレミアムを運用事業者に販売できる可能性があります。あるいは、稼働時間、アップタイム、収益率を最適化し、メンテナンス、故障率、将来のパフォーマンスを予測するために、運用事業者が自社でデジタルツインを開発することもできます。
ハイブリッドデジタルツインを活用するお客様の多くが、新しいプロセスを変更または開始しようとしています。デジタルツインは、バーチャルコミッショニングの一環としてオフラインでも使用できます。「what-if」分析に基づいて、設定点を定義する方法を学ぶことためにも活用できます。その後、オンラインで仮想センシングデータを受け取ることができます。モニタリングに使用し、自動化と最適化を通じて拡張できます。最終的には、これらの仮想センサーを予知保全のために使用することもできます。運用中のアセットに対する保守が必要な場合でも、サービススケジュールを事前に把握できることで予期しないダウンタイムを回避でき、コストを削減することができます。
Vitor Lopes: 主に3点あります。1つ目は、3Dモデルから結果を取得し、それを使用して、さまざまな用途やユースケースに対応する次数低減モデル(ROM)をトレーニングできることです。これまで、3Dモデルは実行時間が非常に長いため、オンラインアセット管理という用途に限定されていました。しかし、これらのモデルは精度と忠実度を維持しながら、はるかに高速に実行できます。2つ目は、測定データと機械学習テクノロジーを使用して残差物理特性を校正またはモデル化できることです。ハイブリッドツインの概念は、両方のアプローチの最良の組み合わせです。3つ目は、これらのモデルをコンテナ化してスケーラブルな展開に対応させることができることです。Ansysの環境外で、これらのコンテナやプラットフォームに依存しない製品を独自の環境に接続することができます。REST(Representational State Transfer)APIを使用して、モノのインターネット(IoT)やエッジデバイスに接続して、迅速に展開できるようになります。
Ansysは設立から50年ほどになりますが、デジタルツインプラットフォームを提供し始めてからは10年以上になります。業界ごとに得た知識だけでなく、さまざまな業界にわたって培ってきた知識でお客様をサポートしています。分野間で活用できる豊富な専門知識があり、当社の技術エキスパートがお客様と連携することで固有のソリューションを構築できます。
Vitor Lopes: 開発が可能かどうかは、所有する情報の量によります。物理ベースのモデルでデータが限られていると仮定すると、モデルの検証がネックとなる可能性があります。意思決定を行うために必要な結果を信頼できないという問題が生じます。そうしたリスクを理解し、不確実性のレベルを定量化して、どの程度のリスクを取るかを決定できれば、初期のデジタルツインが時間とともに進化するものと捉えることはできます。
ハイブリッド手法を使用してより多くのデータを収集するに従って、これらの物理モデルを調整して検証できます。もしくは、検証することでモデルに問題がなかったことが確認できる場合もあります。この定量化により、デジタルツインを信頼できるようになるため、エンジニアリングの障壁が軽減されます。
Vitor Lopes: お客様の多くが社内コード、1Dモデル、あるいはメーカーから提供された性能曲線を使用しています。多くの場合、最初のステップとしては問題ありませんが、それしかない場合はどうでしょうか。開始しない方が良いのでしょうか。そうではありません。把握すべきことは、これらのモデルがもたらす不確実性のレベルです。不正確な1Dモデルがあり、社内コードの実行に時間がかかりすぎる場合でも解決策はあります。
ROM手法を使用してモデルを高速化し、ハイブリッド分析を使用してそれらを微調整できます。お客様が所有しているものとAnsysのプラットフォームと組み合わせることで、意思決定のレベルを理解し、3Dモデルの作成に並行して取り組む計画を開発できる、意味のあるツインを作成する方法があります。用途によっては必ずしも3Dモデルが必要ではありませんが、3Dモデルが必要な場合でも、1Dから始めて3Dに移行できます。
Ansys Digital Twinソリューションにご興味のある方は、無料トライアルを開始するために、お問い合わせください。