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流体力学を用いて鯨類のヒレの機能を解明

8月 27, 2024

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Susan Coleman | Ansys、アカデミックおよびスタートアッププログラム担当シニアディレクター
Jennifer Procario | Ansys、シニアマーケティングコミュニケーションライター
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日本の海洋生物学の研究者たちは、Ansysのシミュレーションを導入して、「イルカや鯨などの水生哺乳類のヒレの役割とは何か」という古くからの疑問を解明しようとしています。名古屋大学大学院環境学研究科に所属する岡村太路氏は、数値流体力学(CFD)を用いて、鯨類がそのヒレ形態を得るに至った経緯と進化過程について研究しています。

岡村氏は、名古屋大学の依田憲教授のもと、Ansysアカデミックプログラムを通じて流体シミュレーションソフトウェアであるAnsys Fluentを使用しながら、CFDを用いて鯨類のヒレの形態(形状、位置、大きさ)の多様性と流体力学の関連性を解明する研究を進めています。

従来の形態学研究では、実際の形態を測定してヒレの比較をしていました。CFDを導入したことで、ヒレの形態の違いから、ヒレの形態がもたらす水中での機能性まで、多岐にわたるヒレ形態をより適切に解析できるようになりました。CFDは、シミュレーション初心者にとっては一見難しく見えますが、岡村氏は、非常に使いやすく、研究にとって極めて重要なソフトウェアであると考えています。

現地調査にCFDを導入

岡村氏は、大学院での研究の一環として、4年間この研究を主導してきました。名古屋大学の研究室内での研究と解析と並行して、現地調査も実施しています。

鯨類は日本各地の海洋に生息していますが、毎年数百件の座礁が報告されています。National Oceanic and Atmospheric Administration(NOAA)Fisheriesの定義によると、鯨類は、海岸で死亡している、死亡状態で水中に浮いている、または海岸で生きているが自力で水に戻れない状態にあるとき、座礁していると見なされます。AP通信によると、日本全国で毎年300件を超える鯨の座礁が報告されています。岡村氏の研究チームは、日本各地の水族館や博物館と協力して、座礁した海岸を訪れ、3Dスキャンや解剖学的測定を行い、流体力学シミュレーション用の3Dモデルを作成しています。

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岡村太路氏(名古屋大学大学院環境学研究科、大学院生)

岡村氏は、次のように述べています。「従来の形態学研究では、実際の形態を測定して比較していました。Fluentの流体シミュレーションを導入したことで、形態がもたらす機能性の絶対量を表現できるようになりました。具体的には、さまざまな鯨類のヒレ形態の違いが何を意味するのかを絶対的に比較できるようになりました。また、自然界には存在しない極端なモデルも解析できるため、形態の意味をより深く捉えることができます。」

ヒレは水生哺乳類に共通したものですが、岡村氏によると、進化上の起源や発生学的起源はさまざまです。現在のヒレの形態は、力学的、生理学的、および行動的機能の複雑な組み合わせの結果であると仮定されていますが、その構造がまったく機能を持たないこともあります。岡村氏は、鯨類のヒレを研究することで、ヒレの機能についてより多くの知見を得られると期待しています。

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依田憲教授(名古屋大学大学院環境学研究科)

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イルカや鯨を含む大半の鯨類に見られる、さまざまなヒレの画像

流体シミュレーションを用いてヒレの形態と機能を理解する

鯨類は水中適応の過程で、「ヒレ足」とも呼ばれる胸ビレ、多くの水生哺乳類の背中に見られる直立した背ビレ、そして尾ビレの3種類のヒレを得たと言われています。背ビレには関節がなく、単独で動かせませんが、これまでの研究で姿勢を安定させる機構として認識されています。しかし、背ビレの形態は種によって大きく異なります。岡本氏は「背ビレは、どの鯨類でも同じように安定化機構として機能するのか。」という疑問を持ちました。

ヒレ形態のバリエーションを調べるために、岡村氏らはヒレの形態が大きく異なる鯨類の3Dモデルを作成して、流体力学シミュレーションを実行しました。一般的に、ヒレは、泳ぎに必要な前方に押し出す力などの推進力を得ること、そして安定性を維持するためにある、と考えられています。現在、岡本氏を含めた研究チームは、ヒレに別の目的が存在するのかについて研究しています。

岡村氏は、次のように述べています。「動物は環境に適した優れた形態を有するという仮説に基づいて研究を始めましたが、Ansys Fluentを使用した研究で、鯨類のヒレは、従来考えられていたものとは異なる機能を持つ可能性があることが判明しています。生物の形態や構造は、複数の機能を組み合わせたものであり、簡単に説明できないことを発見できたのは非常に大きな成果です。」

CFDシミュレーションは、さまざまなヒレの周囲の流体現象を説明し、ヒレの目的と機能をより深く理解するのに特に役立ちました。Ansys Fluentの高度な物理モデリング機能は広く認知されており、流体流れ、熱伝達および物質移動、化学反応など、さまざまな流体力学をモデル化するために使用されています。岡村氏は、Fluentの機能のうち、特にメッシング機能と並列計算機能を高く評価しています。

「複雑で滑らかなモデルを、私たちが望むようなクリーンなメッシュに変換する上で、メッシング機能は非常に有用です。また、並列計算機能を使用することで、計算時間を短縮できます。」

岡村氏は、Fluentのプラットフォームは使いやすいインターフェースを備えているため、専門家でなくてもシミュレーションを活用でき、研究の効率化と、強化に役立つと述べています。

「Ansys Fluentのシミュレーションは、研究で生じた疑問を解決するための非常に役立つツールです。私たちのような基礎形態学の研究者にとって、プログラミング言語は習得のハードルが高く、CFDシミュレーションのメカニズム習得はさらに高いハードルです。Fluentは、テキストベースではなく、グラフィックベースであるため、初心者にとって非常に理解しやすいツールです。Fluentを導入したことで、目に見えない流れの現象が可視化され、研究領域がさらに広がりました。」

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岡村氏は、流体シミュレーションソフトウェアのAnsys Fluentでイルカの動きをシミュレーションして、哺乳類のヒレ周りの速度流れを解析した。

Ansysアカデミックプログラムの活用

岡村氏は、Ansys Fluentを単なるツールのひとつではなく、海洋生物学の研究上、必要不可欠なソフトウェアであると考えています。

「現在、Ansys FluentのCFDシミュレーションは研究の基盤となっていいます。 Fluentなしに研究はできません。」

また、研究用に流体シミュレーションソフトウェアを手頃な価格で提供しているAnsysアカデミックプログラムを高く評価し、

次のように述べています。「最初は他のソフトウェアを使用して解析を実行しようとしましたが、メッシングなどの機能がネックとなり、うまくいきませんでした。そこでAnsysに問い合わせたところ、Ansysアカデミックプログラムを紹介していただきました。大学院生でもソフトウェアを利用することができ、アカデミックプログラムにはとても感謝しています。」

学者、学生、研究者向けの詳細情報とリソースについては、Ansysアカデミックのページをご覧ください。


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「現在、Ansys FluentのCFDシミュレーションは研究の基盤となっていいます。 Fluentなしに研究はできません。」

— 岡村太路氏(名古屋大学大学院環境学研究科、大学院生)


Susan Coleman
アカデミックおよびスタートアッププログラム担当シニアディレクター

Susan Coleman

Ansysのアカデミックプログラムとスタートアッププログラムでは、Ansysのシミュレーションの力を活用して次世代のお客様を支援することを目指しています。Susanは、シミュレーションを導入する際の障壁を取り除くことを目標に、Ansysの各事業部門やお客様と協力して、これらのプログラムの向上に努めています。各地のAnsys営業チームを通じてお客様のニーズを把握し、Ansysのビジネスユニットと協力しながらお客様に最適な製品を提供できるように尽力しています。また、Susanのチームはマーケティング部門とも密に連携して、シミュレーションがアカデミックエコシステムやスタートアップエコシステムに与える影響についても紹介しています。

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