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Circleg社がシミュレーションを利用して義足使用者を支援

1月 15, 2025

1:00 Min

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Susan Coleman | Ansys、アカデミックおよびスタートアッププログラム担当シニアディレクター
Aliyah Mallak | Ansys、シニアマーケティングコミュニケーションライター
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子供の頃に脚を骨折したことがありますか?骨折したことがある方なら、日常生活を送るのがどれほど大変だったか覚えているかもしれません。大抵の場合は、数週間後には、骨折した脚に体重をかけられるようになり、さらに数週間後には、ギプスを外せるようになるのです。自分の脚に二度と体重をかけられなくなることが、どれほど大変なことか、想像してみてください。

しかし、これが、世界中にいる6,500万人の四肢切断者(その大多数が下肢を失っている)にとっての現実なのです。切断の主な理由としては、自動車事故などによる外傷、糖尿病などの血管疾患、不適切な医療ケアが挙げられます。6,500万人の四肢切断者のうち65%が途上国に住んでいますが、支援製品は入手が困難であり、価格の問題もあるため、利用できるのはわずか5~15%にすぎません。途上国では、義肢の生産が限られており、病院が義肢を輸入せざるを得ないため、患者は長期間の待機、非効率で高コストな調達、物流の課題に直面することになります。

さらに残念ながら、義肢の使用者はコミュニティで差別され、孤立することがよくあります。切断が雇用喪失につながる可能性があるにもかかわらず、地域の支援やリハビリの選択肢を知らない人が多くいます。利用できる支援を知っていたとしても、多くの四肢切断者は地理的な問題や経済的な理由から、支援を受けるために通うことができません。

スイスとケニアに拠点を構える社会的企業であるCircleg社は、これらの課題に対処するため、途上国に住む人を対象に、四肢切断者向けの使いやすく高品質な支援ソリューションを提供しています。Circleg社は、義足部品の提供とサービスの促進を通じて、移動の自由を提供し、その恩恵をさらに拡大しています。同社は、高品質な義足の供給にとどまらず、四肢切断者と整形外科医をプロセスに組み込むことも考慮し、四肢切断者が自ら移動する能力の回復を支援するソリューションを開発しています。

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Circleg Oneとその部品

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Circleg社のプロジェクトは、2018年にチューリッヒ芸術大学でインダストリアルデザインを学んでいたFabian Engel氏とSimon Oschwald氏の学士論文から始まりました。5名の共同設立者が立ち上げたCircleg社は現在、エンジニア、デザイナー、義肢装具士、経営の専門家から成る18人のチームを擁しています。同社のフラッグシップ製品であるCircleg Oneは、義足使用者の固有のニーズと課題を満たすように設計されています。この最先端の義足は、使用者の生活を向上させる高品質で使いやすいソリューションを提供し、これまでの課題を解消することを目指したものです。

Circleg社の製品開発者であるMax Calabro氏は次のように述べています。「機械式義足は何十年も前からあるため、ゼロから義足を作製しているわけではありません。当社のイノベーションは、低コストの義足の性能を向上させることを目的に、これまで使用されたことのないプロセスと材料を取り入れて構成したものです。」Circleg Oneは、4つの部品で構成されるモジュール式義足であり、簡単なツールと最小限の労力で大腿および下腿切断者に合わせてカスタマイズすることができます。また、日常生活を支障なく送れるように、強化プラスチックを使用して軽量で快適な義足を実現しています。

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資料提供:Henry Robinson

Circleg社は、このビジョンを達成するために、Ansys Apex Channel PartnerであるCADFEM社を通じてAnsysスタートアッププログラムを利用し、構造シミュレーションソフトウェアである、Ansys Mechanicalを導入しています。Calabro氏は次のように述べています。「さまざまな要件を満たす必要があることが主な課題です。装置は使いやすく快適なものである必要があり、機械的要件が非常に厳しい上、生産コストも重視しなければなりません。」

Circleg社は、開発プロセス全体を通じてAnsys Mechanicalを使用し、Circleg Oneの性能(足部の柔軟性など)と強度を評価しました。Circleg Oneの要件は、利用者が大腿義足と下腿義足のどちらを必要とするかによって異なります。一般に、大腿義足は下腿義足よりも構造が複雑ですが、最も大きな違いは膝関節部にあります。下腿義足は、すね部、足首部、足部だけを必要としますが、大腿義足には、機能的な膝関節部が必要であり、これがなければ、利用者は簡単に移動が出来ません。膝関節部は、人の体重の大部分を支え、バランスに影響を与えるため、歩行メカニズムにおいて重要な役割を果たします。

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Ansys Mechanicalを用いて膝間接部の有限要素法解析を行った結果は、プロトタイプの破損部分と一致した。

構造シミュレーションソフトウェアAnsys Mechanicalを用いて膝間接部の有限要素法解析を行った結果(左)は、プロトタイプの破損部分(右)と一致した。
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Calabro氏は次のように語っています。「非常に明確な構造要件があり、シミュレーションを利用することで、工具を作成する前に、部品がその構造要件を満たすかどうかを正確に推定することができました。」Calabro氏とチームは、シミュレーションを用いることで、さまざまな部品の性能を製造前に評価し、時間を大幅に短縮することができました。

当初、Circleg社は義足のさまざまな部品を反映したシンプルなモデルを作成し、小規模にスタートしました。Calabro氏は次のように述べています。「この段階でも学びはありましたが、その後、モデルをより具体的で精密なものにする必要があることに気づきました。」当時、チームは生産プロセスのシミュレーションを考慮していませんでしたが、シミュレーションと実測値が一致しないことが判明した後、そのシミュレーションをより大規模に実施しました。同氏は次のように語っています。「射出成形プロセスによって得られる材料特性を統合したより高度なモデルを作成したことで、残りの問題に取り組み、改善することができ、最終的には厳しい機械要件を満たすことができました。」

テストベンチ試験を再現した変形アニメーション(CIMCOM Engineering社と共同で作成)。

持続可能性とインクルーシブな観点からの支援

低コストで高品質な義足を提供するCircleg社では、持続可能性を最優先事項としており、循環型経済の原則を念頭に置いて、部品を開発しています。Circleg Oneはモジュール式であるため、義足全体を交換するのではなく、個々の部品を取り替えたり、修理したりすることができます。義足が寿命を迎えると、その部品は回収され、材料としてリサイクルされるため、無駄が生じません。

Circleg社の最も重要なミッションは、義足使用者を支援することです。Circleg社は長年にわたり、義足使用者とその活躍に焦点を当てたキャンペーンを展開しており、最新のキャンペーン「Unstoppable」では、障害に対する社会の見方を再構築することを目的としたショートフィルムを公開しました。この作品では、レッテルにとらわれることなく人間性を重視する、ダイナミックで力強いストーリーを描いています。

AnsysスタートアッププログラムAnsys Mechanicalについての詳細をご確認ください。


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「非常に明確な構造要件があり、シミュレーションを利用することで、工具を作成する前に、部品がその構造要件を満たすかどうかを正確に推定することができました。」

—Max Calabro氏(Circleg社、製品開発者)


Susan Coleman
アカデミックおよびスタートアッププログラム担当シニアディレクター

Susan Coleman

Ansysのアカデミックプログラムとスタートアッププログラムでは、Ansysのシミュレーションの力を活用して次世代のお客様を支援することを目指しています。Susanは、シミュレーションを導入する際の障壁を取り除くことを目標に、Ansysの各事業部門やお客様と協力して、これらのプログラムの向上に努めています。各地のAnsys営業チームを通じてお客様のニーズを把握し、Ansysのビジネスユニットと協力しながらお客様に最適な製品を提供できるように尽力しています。また、Susanのチームはマーケティング部門とも密に連携して、シミュレーションがアカデミックエコシステムやスタートアップエコシステムに与える影響についても紹介しています。

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コーポレートコミュニケーションマネージャー

Aliyahは、ヘルスケア分野の技術ライターです。普段は何かを学ぶことや乗馬、旅行に情熱を傾けています。テンプル大学で広告学の学士号、製薬マーケティングおよび規制文書の修士号を取得しています。現在は、Ansysのコーポレートコミュニケーションマネージャーとして、お客様の成功事例や技術的なソートリーダーシップに関するホワイトペーパーを中心に、社内外のマーケティング資料を作成して、ヘルスケア業界を担当するチームを支えています。

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