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Ansysブログ

February 20, 2024

次数低減モデルとデジタルツインでシミュレーションを加速

エンジニアリングシミュレーションでは、高い効率と精度を同時に達成することが常に課題となります。Ansys Twin Builderは、実際のシステムをより正確に反映するために、物理場とデータを組み合わせて、ハイブリッドデジタルツインを作成、展開、管理する機能を備えたロバストなソリューションを提供します。しかし、忠実度の高いシミュレーションの複雑な要求により、計算面でのハードルが生じ、膨大な時間とリソースが必要になります。そうした状況で、次数低減モデル(ROM)は、シミュレーションとデジタルツインへのアプローチを再定義する画期的な手法となります。

次数低減モデル(ROM)とは、基本的にはソースモデルの振る舞いを捉えた複雑なモデルを簡略化したものです。エンジニアや設計者は、ROMと最小限の計算リソースを使用して、システムの支配的な効果を迅速に調査できるようになります。ROMは、より短い設計サイクルで高品質な製品を生産する要求に応えるために、産業界で広く活用されるようになりました。

Twin Builderでは、ROMを活用して、精度を維持しながら計算負荷を軽減させ、開発チームや設計チームはイノベーションを大幅に加速できます。ここでは、ROMの背後にある中心概念、ROMの利点、Twin BuilderとROMを統合することでワークフローや製品を最適化する方法を見ていきましょう。

正確なモデリングの効率化

簡単に言うと、ROMは複雑で忠実度の高いモデルを効率化したモデルです。より複雑なモデルの本質を抽出したもので、エンジニアや設計者は、計算リソースを節約しながら、システムの主要な特性を効率的に調査できるようになります。

製品開発分野においてROMの重要性が高まった要因は、市場の需要を満たすことへのプレッシャーの高まりにあります。市場の要求に応えるためには、設計サイクルを短縮しながら、高品質な製品を生産しなければなりません。

Twin BuilderとAnsysのマルチフィジックスシミュレーションを組み合わせることで、3Dシミュレーションの詳細がROMとして提供され、より正確で効率的なシステムレベルモデルを迅速に作成できるようになります。たとえば、Twin Builderでは、Ansysの構造、流体、電磁界、および半導体製品で作成されたROMを使用して、機械アセンブリ、電磁アクチュエータおよび機械、回路およびケーブル寄生成分、熱回路網、シグナルインテグリティなどの複雑なシステムをモデル化します。

また、Ansys WorkbenchでROMを作成して、それをTwin Builderに簡単にインポートすることもできます。さらに、Twin Builderでは、ソルバーに依存しないROMも作成できます。つまり、ROMは、サードパーティツールを含む任意のツールで作成でき、要求された形式のトレーニングデータがあれば、ROMをTwin Builderにインポートできます。Twin Builderの場合、ROMはFMU(Functional Mockup Unit)としてインポートまたはエクスポートする必要があります。FMUは、各種シミュレーションツール間でのモデル交換にオープンでツールに依存しない規格を使用しています。

3D物理ソルバーとのコシミュレーションでは、流体コンポーネントとフローネットワーク、剛体および弾性体の機械アセンブリ、電動モータや電動アクチュエータのモデリングにおいて、有限要素法(FEA)と数値流体力学(CFD)の完全な精度が維持されます。これにより、精度と忠実度の高いシミュレーションを維持しながら、設計および開発サイクルを短縮して、最高品質の製品を開発できるようになります。

Fluent and ROMs

Ansys Fluentを使用することで、応答曲面モデルをマッピングして、次数低減モデル(ROM)を作成できる

シミュレーションの高速化と強化

ROMは、シミュレーションを高速化(通常、10~100倍)しながら、実験計画法(DoE)やパラメータスイープスタディといった非常に貴重なリソースをもたらします。ROMは、Twin Builderにシームレスに統合されているため、リアルタイムアプリケーションの開発が可能になり、システムの応答性が向上します。さらに、ROMを導入することで、ストレージ要件は最小限まで抑えられます。また、実証済みの3D物理モデルの再利用がサポートされるため、エンジニアリングやそれ以降での影響力はさらに強まります。

ROMを導入する主な利点は、効率の向上、リアルタイムの予測、リソースの最適化などです。

  • 効率性:  ROMを使用することで、計算要件は大幅に低減されるために、より高速なシミュレーションとリアルタイムのデータ解析が可能になります。これにより、デジタルツインの開発と展開が加速され、より迅速に意思決定と問題解決を行えるようになります。
  • リアルタイム予測:  ROMにより、デジタルツイン内でリアルタイムの物理的予測が可能です。これにより、デジタルツインの精度と応答性が向上し、実際のシステムを監視および制御するための信頼性の高いデータになります。
  • リソースの最適化:  ROMは、精度を維持しながら複雑なモデルを単純化することで、計算リソースの使用率を減らします。これにより、コストが削減され、幅広い分野や業界でデジタルツインテクノロジーを活用できるようになります。
ROM heat exchanger

Ansys Fluentでは、複雑な次数低減モデル(ROM)を評価して、設計の代替案を検討できる。クロスフロー熱交換器の場合、完全なシミュレーションには2時間以上かかるが、ROM機能を使用することで、各設計ポイントの解をわずか1秒で計算できる。

デジタルツインの実装

シミュレーションと同様、デジタルツインやROMは、自動車、航空宇宙、ヘルスケア、産業機器など、さまざまな業界にメリットをもたらします。これらの業界のワークフローにTwin BuilderやROMがもたらすメリットを示すために、熱交換器のメンテナンス例について見ていきましょう。

食品や飲料から冷蔵、医薬品、化学処理まで、さまざまな業界で熱交換器が使用されています。熱交換器のメンテナンスを予測できなかった場合、機器の誤動作、遅延、その他の生産上の問題が発生する可能性があります。

このユースケースには、以下の方法を通じて、Twin Builder、Ansys Fluent、およびROMを組み合わせたソリューションが提供されます。

  • Fluentの定常熱空力モデル(約600万個のセル)
  • 静的ROM(16個の設計ポイント)
  • Fluentを使用した炭酸カルシウムの厚さの評価
  • デジタルツインをモノのインターネット(IoT)プラットフォームにエクスポートして展開できる機能

静的ROMは、定常シミュレーションを使用して解を予測し、システムの最適な設計パラメータと動作条件を決定するモデルです。ROMは通常、シミュレーションデータを使用してトレーニングします。600万個近くのセル要素から構成されたロバストなメッシュにより、高精度な結果を得られます。同様に、16個の設計ポイントを含むDoEを作成することで、さまざまな入力値の徹底的な解析が可能になります。この例では、各設計ポイントが、Fluentで実行されるシミュレーションに対応しています。 

Predictive maintenance

デジタルツインにより真の予知保全が可能となり、コスト削減とアセット運用の最適化が実現する

また、Fluentのモデリング機能により、気液、液体-液体、気体-固体、粒子流れ、さらには離散要素モデリング(DEM: Discrete Element Modeling)など、混相流を正確にシミュレーションできます。このユースケースでは、混相流をモデル化する機能を使い、熱交換器における炭酸カルシウムの厚さと、見込まれる堆積量を解析して予測できます。

さらに、Twin Builderでデジタルツインを導入することで、リアルタイムモニタリングでこの知見を拡張できます。たとえば、デジタルツインをIoTプラットフォームに導入すれば、センサーを介して実際の機器から入力データを受け取れるようになります。これにより、デジタルツインで性能を予測し、機器の現在の状態や意図されたタスクの状態などをリアルタイムで取得できるようになります。

Twin Builder IoT

Ansys Twin Builderは、モノのインターネット(IoT)プラットフォームと簡単に接続して、運用データを送受信できる

デジタルトランスフォーメーションをより簡単に導入

ROMは、リアルタイムでの物理的な予測をサポートし、精度の高いデジタルツインを実装できる能力により、デジタライゼーションを成功させるために不可欠なアセットとなります。複雑なプロセスを効率化できるだけでなく、デジタル社会で成功するための重要な知見を得られ、効率を向上させることができます。

ROMの力を活用することで、イノベーションを推進し、意思決定を強化することができます。これからは、エンジニアリングとテクノロジーが未来を切り拓くでしょう。

デジタルツインやROMを使用してワークフローを改善する方法については、無料のオンデマンドウェビナー「Ansys Twin Builderを使用して、次数低減モデルによるシミュレーションを加速」をご覧ください。

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