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Ansysブログ
September 18, 2023
世界の自動車業界は、1世紀以上にわたって内燃機関を中心とした設計を進めてきました。しかし、高性能でエネルギー効率に優れ、持続可能で手頃な価格の電気自動車(EV)設計に対する各国政府と消費者の強い要求に牽引され、革命的な転換が進んでいます。米国のJoe Biden大統領は、2030年までに米国で販売されるすべての自動車の半分を電気駆動にする目標を含め、EVのための非常に意欲的な目標を定義しました。また、欧州議会と欧州理事会は、2035年までに新たに登録される全車両がゼロエミッションとなるよう、さらに意欲的な目標を策定し、その間に排出量を段階的に削減していくと定めました。こうした状況により、巨大な市場機会が生み出されることは明白です。実際、EVの売上高は2030年までに8237.5億ドル(年間成長率18.2%)に達すると予測されています。
自動車メーカーが最先端のEV設計を市場に投入し、競争上の優位性を獲得しようとする中、自動車サプライヤーは高まるプレッシャーにさらされています。重要なコンポーネントの中でも、テクノロジーを推進しているのが半導体です。コネクテッド、自動運転、電動化と自動車が進化するにつれて、半導体は、現代の自動車業界を支える鋼やゴムよりも中心的な役割を担うようになっています。
今日、自動車メーカーがパートナーである半導体メーカーに求めるのは、半導体チップだけではありません。開発スケジュールを効率化して、社内エンジニアリングコストを削減しながら、製造プロセスとロジスティクスプロセスを最適化するために、EV設計にシームレスに統合できる完全に実現されたモジュールやシステムへの要求が高まっています。これには、チップ自体だけでなく、半導体の全体的な性能を最大化するために必要な関連コンポーネントも含まれます。
世界中の自動車業界に半導体テクノロジーを提供する大手サプライヤーであるSTMicroelectronics社は、最近、包括的なチップアーキテクチャを使用したEVパワートレイン用パワーモジュールを設計しました。このモジュールには、新しいコンポーネントである冷却ジャケットが含まれています。この内蔵されたヒートシンクは、パワーモジュールの最適な性能を保証し、熱ゲインを管理して、より大きな電動パワートレインへの共役熱伝達を最小限に抑えます。
では、課題は何でしょうか?STMicroelectronics社のエンジニアたちは、電動パワートレインモジュールの包括的なチップアーキテクチャというミッションクリティカルな性質を考慮した結果、開発段階で中心的な役割を果たすべきは伝熱シミュレーションであると判断しました。同社のシミュレーションエンジニアたちは、Stefano Mauro教授が率いる研究者チームが最先端の数値流体力学(CFD)に取り組むイタリアのカターニア大学と協力して、高密度で強力なモジュールに関連する共役熱伝達を最小限に抑える、新しい冷却ジャケットの設計をテストし始めました。
STMicroelectronics社のシミュレーションチームと研究者たちは、この新しいパワーモジュールの開発の早い段階からAnsys Fluentを導入しました。
Mauro教授は、次のように述べています。「このようなまったく新しいシステムを設計する際には、基材や表面テクスチャから、設計に冷却液を追加した後の流体特性や振る舞いまで、冷却効率に寄与するあらゆる因子を検討しなければなりません。冷却室内部を実際に目で確認したり、数百もの物理的なプロトタイプを作製してテストすることは不可能です。Fluentを使用することで、冷却ジャケット単独での性能に加えて、より大きなパワーモジュールへの寄与を仮想環境でシミュレーションできます。また、非常に迅速で効率的かつ費用対効果の高い方法で、ヒートシンクの信頼性を最適化および検証できるようにもなります。」
研究者たちは、まず、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のメッシュジオメトリと、それを保持するモジュールベースプレートを作成しました。続いて、ベースプレートの下に固定された冷却ジャケット(ヒートシンク)を作成しました。事前定義された一連の境界条件とFluentソルバー設定を使用して、冷却ジャケット内の水とエチレングリコールの50対50の混合物の流れをシミュレーションしました。
このチームによるシミュレーション作業の大半は、水とエチレングリコールの混合物がパワーモジュール内を通過する際の流体流れを可視化し、乱流や渦などの問題が発生する可能性がある場所を特定することで、ヒートシンクの全体的なジオメトリを最適化することでした。チームはパワーモジュールの入出力ホール数、そして流路の形状とサイズを調べ、主に、冷却プロセスの有効性を低下させる圧力損失の低減に着目しました。Ansys SpaceClaimを使用することで、形状バリアントを迅速に作成し、ジオメトリの変更が入出力などの重要な要素に与える影響を調査できました。
研究チームは、Fluent Meshingを使用することで、計算メッシュを簡単に最適化して、精度と計算時間の最適な妥協点を見つけ出しました。
また、Fluentのソルバー機能を活用して、ヒートシンク内の表面テクスチャの影響を詳細に調査しました。最初は完全に滑らかな表面から開始し、徐々に粗さを追加して、関連する内部の流体流れと冷却効果への影響を評価しました。当初、滑らかな表面は、損失と圧力損失を最小限に抑えつつ、冷却液の滑らかな流れを促進するであろうと考えました。しかし、実際には表面粗さが大きくなるにつれて、流体流れの分離が減少することが判明しました。最も効果的な冷却流れをサポートするために、Fluentのシミュレーションを介して、表面テクスチャを反復的に最適化することができました。
Mauro教授は、次のように述べています。「表面粗さに関する発見は驚くべきもので、製品開発チームにとって有益な情報となりました。微細加工は非常に高価になるからです。たった数日で、冷却効果に関する数多くの重要な発見があり、最終設計を検証することができました。」
STMicroelectronics社のパワートランジスタサブグループのCAD&モデリングチームリーダーであるDaniela Cavallaro氏は、次のように述べています。「Ansys Fluentの機能によって、この新しいエンジニアリング課題を迅速かつ正確に解決できたことに非常に満足しています。」大規模でロバストな社内研究開発チームを擁するSTMicroelectronics社では、特に電磁界分野で多数のAnsysソリューションをすでに使用しています。今後も、さらに新しい冷却アプリケーションを開発する上で不可欠となる流体力学の新しい概念を探求することでしょう。