Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
かつてない車両個別化の時代が到来しました。ユーザーはどのような車両を求めているのでしょうか。Marelli社は、ほぼすべての内装をカスタマイズ可能なタッチスクリーンディスプレイに変える透明なオーバーレイや、人工知能を搭載したコパイロットとのリアルタイムのやり取りなど、今まで夢のように思われていた技術の実現に向けて開発を進めています。
しかし、インフォテインメントはOEMメーカーにとってブランドの重要な差別化要因であると同時に、安全上の大きなハードルにもなっているのです。最小限のディスプレイインターフェースと無線アップデートを特徴とする先進運転支援システム(ADAS)プラットフォームなど、ソフトウェア主導の車両の開発は、ユーザーの強い要望によって推進されています。
しかし、こうした新しい技術では、車両の複雑さが急激に増大し、シームレスなシステム相互運用性、すなわち関連するすべてのシステムが確実に安全に連携して動作する能力が必要になります。こうした複雑な新技術を短期間で開発し、業界のさまざまな安全要件に照らして検証するには、多大な労力が必要です。
そのため、Marelli社は、ハードウェアとソフトウェアの設計に対してよりシンプルなアプローチをとるために、ソフトウェア定義の車両を実現させるプラットフォームを作成しています。Ansysのツールとソルバーにより、Marelli社はプラットフォームを迅速にスケールアップさせ、開発に取り組んでいるOEMメーカーを支援することができます。これらのツールは、Marelli社が車両のインフォテインメントと個別化の新たな可能性を探求し開発するのにも役立っています。
Marelli Electronic Systems社のMechanics and Optics Center of Expertiseの責任者であるLuciano Saracino氏は次のように述べています。「当社は、一元化された車両アーキテクチャへのスムーズな移行を通じて、お客様を支援することに取り組んでいます。当社のカスタマイズされたソリューションは、現在販売しているコネクテッドカーだけでなく、将来の自動運転車のニーズも満たすように設計されています。Ansysは、当社がハードウェアの設計と製造だけでなく、安全性とサイバーセキュリティに関する業界標準を満たすトップクラスのソフトウェア開発・統合・検証サービスも提供できるよう支援してくれています。」
パッシブセーフティ基準の要件:ヘッドインパクトテストECE-R21/FMVSS201。Marelli社は設計検証段階で特殊なテストフレームを用いて設計を試験した後、生産検証段階でディスプレイをダッシュボード全面に実装した。
運転席内には、OEMメーカーが安全規格に基づいてテストしなくてはならない、さまざまな構成があります。この課題がきっかけとなり、ある顧客は特定の規制要件を満たすために、運転席のすべてのパッシブセーフティシステムおよびコンポーネントの最適化の支援をMarelli社に依頼しました。
運転席のパッシブセーフティシステムは一般に、意図したとおりに機能する能力(エアバッグやシートベルトなど)や、衝突時に完全性を維持できる能力(ダッシュボードなど)で評価されます。
プロトタイピングと、コストのかかる実機試験を低減するために開発されたのがデジタルツインです。デジタルツインとは、現実世界のエンティティやプロセスをデータに基づいて統合的に仮想表現したものであり、特定の周期と忠実度で同期された相互作用を持ちます。このケースでは、運転席全体が再現されました。作成されたデジタルモデルは、構造的観点から見て、物理モデルと強度、剛性、熱挙動が一致していました。
不具合は、ハンドル、運転席ディスプレイ、エアベントなど、運転席のあらゆる部分、つまり基本的に車内全体に対して調査することができます。このケースでは、Marelli社は、デジタルツインとAnsysのシミュレーションを組み合わせることで、運転席全体におけるさまざまな条件下でのインフォテインメントシステムの性能をモデル化し、信頼性と機能性を確保することができました。
Marelli社は、開発のために、Ansysのさまざまなツールとソルバーを使用しています。
Marelli社のエレクトロニクス機械技術チームのシミュレーション責任者であるSimone Calcopietro氏は、次のように述べています。「Ansysのツールは、私たちにとって不可欠なものあり、OEMメーカーやパートナーとの設計・ソリューションの共同開発、より高いレベルの個別化の実現、イノベーションの促進、市場投入までの時間の短縮に役立っています。すべてのプロジェクト要件に適合し、お客様やユーザーのニーズに正確に合致するカスタムメイドのソリューションを開発できるようになり、思い描いていたビジョンとユーザビリティが絶妙に調和した世界を実現しています。」
実験室での光学測定:特定の光学パラメータが詳細に評価されている様子。
運転席のインフォテインメント要素に関するパッシブセーフティを理解するには、運転席のレイアウト全体を考慮することが不可欠です。衝突時には、すべての要素が一体となって、その完全性を維持し、乗員全員の安全を確保しなければなりません。露出したエッジ、割れやすいガラス、あるいは衝突時に変形したり飛び散ったりする部品は、乗員に致命的な影響を与える可能性があります。
このため、設計チームはDiscoveryを用いて運転席内のすべてのコンポーネントのジオメトリを作成し、それに基づいてモデルの離散化を行っています。これにより、このジオメトリがパラメトリックなものから、マルチフィジックスツールおよびソルバーによる有限要素法シミュレーションで評価できるものに変換されることになります。また、このプロセスでは、Granta MIを使用して材料を選定しています。
Calcopietro氏は次のように語っています。「コンポーネントを離散化し、それぞれに特性と材料を割り当てます。たとえば、運転席のコンポーネントには、炭素繊維を含むポリプロピレンなど、すべてのプラスチック特性を適用します。私たちは、Grantaを活用して材料を割り当て、金属やプラスチックを始めとする各材料の予想される挙動を把握しています。」
その後、Mechanicalを用いて応力解析の境界条件を作成します。たとえば、ダッシュボード中央に鋼球が衝突した場合の衝撃をテストし、ダッシュボードがどのように荷重に耐えるかを確認しました。人間の頭部を表す鋼球は、前席乗員の致命的な死傷事故につながる可能性のある衝突に比例した減速量を理解するために使用されました。
さらに、ダッシュボードの変形と、この衝撃の正味の影響をLS-DYNAを用いて考慮しました。たとえば、このような衝突によってダッシュボードの破片が剥離し、飛散する可能性があるのでしょうか?その際は、ガラスが砕けることも考えられます。
Calcopietro氏は次のように述べています。「私たちは、これらの影響を非常に短時間でシミュレーションすることができます。20ミリ秒、最大で30ミリ秒です。これには、コンポーネント内部の応力、塑性変形、挙動の評価も含まれます。その後、私たちは既存の規格と照らし合わせて要件を再確認しています。」
パッシブセーフティ要件のシミュレーション:ヘッドインパクトテストECE-R21/FMVSS201
業界全体で自動車イノベーションの成功に影響を与える大きな要因は、タイミングです。ほとんどのOEMメーカーにとって、こうしたタイミングに対応するのは容易ではありません。この影響はサプライチェーン全体に波及しており、サプライヤーは開発期間の短縮を迫られ、複雑化する未体験の設計課題に取り組むために、より速いスピードと高い俊敏性が求められています。
シミュレーションを導入すれば、自動車ソリューションの開発プロセスをより迅速かつロバストに推進し、市場の要求を迅速に対応できるようになります。実際、Marelli社はAnsysのツールとソルバーを使用したことで、開発にかかる時間とコストを最大90%削減することに成功しています。これは、同じプレッシャーに直面している顧客にも還元できる大きな節約効果と言えます。
Saracino氏は次のように語っています。「当社では、Ansysのツールを活用することで、製品開発サイクルを25%短縮するとともに、エンジニアリング開発コストを15~20%削減し、さらに製品性能を15~20%向上させることに成功し、お客様の満足度を高めることができました。」
Marelli社のシミュレーションに関する取り組みについてご興味のある方は、Marelli社とのビデオインタビューをぜひご覧ください。
Ansys Advantageブログでは、専門家が投稿した記事を公開しています。Ansysのシミュレーションが未来のテクノロジーにつながるイノベーションをどのように推進しているかについて最新の情報をご覧ください。