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Ansysブログ

June 13, 2023

Ansys Rockyを使用した撹拌フィルタドライヤーの乾燥ダイナミクス

医薬品の有効成分(API: Active Pharmaceutical Ingredient)の下流処理では、結晶化、ろ過、乾燥、粉砕を行います。その中でも乾燥は、最もエネルギーを消費する工程の1つであり、多くの場合、API製造サイクル全体の速度を制限する工程です。乾燥プロセスでのAPIの劣化を防ぐには、圧力、温度、撹拌などの動作条件を最適化することが不可欠です。

撹拌フィルタドライヤー(AFD: Agitated Filter Dryer)は、ろ過装置と乾燥装置の両方の工程を1つの装置で実行できるため、オペレーターが製品に直接接触する機会を最小限に抑えるために広く使用されています。乾燥プロセスを改善するための知見を得るために、実験室規模のフラットボトム型撹拌フィルタドライヤーを使い、羽根車の速度、そして2つの羽根車タイプが溶媒の乾燥挙動に与える影響について調査が行われました。

乾燥のために、ジャケット付き容器の壁と羽根車の両方から熱が加えられます。均一な熱伝達を維持して、流動床で高温部分が生じるのを回避するためには、乾燥段階で水分を含む濾滓を攪拌する必要があります。最適化されていないAFD設計は凝集や摩耗を引き起こし、乾燥段階の最後に達成される粒子径分布(PSD: Particle Size Distribution)に悪影響を及ぼします。

Ansys Rockyでの撹拌フィルタドライヤー動作のモデリング

3つの異なるスケールの撹拌フィルタドライヤーで、角速度、羽根車形状、羽根車位置といったジオメトリや動作条件が溶媒乾燥挙動に与える影響を評価するために、Ansys Rockyを使用しました。論文に記載された情報に基づき、固定粒子径として4mmを設定しました。このブログでは、標準的なピッチブレードタービン(PBT)とS字型羽根車のシミュレーション結果を比較して、羽根車のさまざまな速度、ジオメトリ、および位置に対する乾燥時間の結果を示します。スケールアップスタディの詳細と概要については、こちらからダウンロードできます。

ろ過直後かつ乾燥プロセス直前の粒状の材料は、水分を含んだ濾滓に似た状態です。水分を含む濾滓は、粒子間の液膜を表現するための純粋な離散要素法(DEM)アプローチである液架橋モデリングを使用して、球体の粒状材料でモデル化されます。このアプローチでは、数値流体力学(CFD)連成を使用せずに、液膜による粒子間の付着と粘性の相互作用を計算します。

各粒子の液体質量率は、初めは約18%です。これは、乾燥プロセスの初期段階における水分を含む濾滓を模した非常に湿潤な粒状媒質を表しています。

乾燥曲線に基づく装置の動作条件と設計の最適化

液体の乾燥は、潜熱による液膜蒸発をモデル化できるRockyのLiquid Drying by Heat Fluxソルバーモジュールを使用してシミュレーションします。図1に、異なる撹拌速度での液体乾燥曲線と、60秒後の液体質量で色分けされた中心面内の粒子のスナップショットを示します。

Different speeds

図1 a)異なる撹拌速度での乾燥曲線、b)シミュレーション開始1分後の液体質量で色分けされた粒子

図2に、羽根車タイプが乾燥曲線に与える影響を示します。このケースでは、翼が2枚あるS字型羽根車とPBT羽根車を比較しました。このシミュレーションでは、S字型羽根車の方が、全体的な乾燥時間が短いことが示されています。

Drying curve comparison

図2 a)乾燥曲線の比較、b)PBTとS字型羽根車間のシミュレーション開始1分後の液体質量で色分けされた粒子

図3に、異なる羽根車位置での乾燥曲線と、乾燥時間を最適化するためにジオメトリ構成に対して行える微調整を示しています。 

Impeller offset

図3 a)乾燥曲線の比較、b)S字型羽根車の2つの異なる位置間でのシミュレーション開始1分後の液体質量で色分けされた粒子

このような最適化解析は、忠実度の高いDEMシミュレーションによって簡単に実行でき、API製造サイクルで最も遅く、最もエネルギーを消費する工程を改善するための貴重な知見をもたらします。この解析では、フィルタドライヤー工程を実証するためにアップスケールされた粒子が検討されていますが、RockyではハイパフォーマンスマルチGPU処理を効率的に実行できるため、球形粒子や複雑な非球形粒子、さらには粒子数が多いケースでも高速なシミュレーションが可能です。このように、Rockyは、フィルタドライヤーだけでなく、医薬品、食品、その他のプロセス産業で使用される、さまざまなデバイスを設計および最適化するための実用的で強力なツールです。

Ansys Rockyの詳細については、こちらをご覧ください。