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SimAIの説明: 数値シミュレーションへのAIの応用方法

5月 13, 2024

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Antoine Reverberi | Ansys、アプリケーションエンジニアII
Jennifer Procario | Ansys、シニアマーケティングコミュニケーションライター
Artificial Intelligence

シミュレーションは、業界を問わず、世界中の開発手法を変革し続けています。製品開発チームは、より優れた設計を迅速に開発することに取り組んでいます。設計および開発の早い段階にシミュレーションを組み込むことで、生産を加速させ、効率、精度、製品品質を向上させる重要な知見を設計に適用することができます。このように、シミュレーションを後期の検証やポスト解析ツールとしてではなく、早い段階から使用して設計に有用な情報を活用することが重要です。さらに、人工知能(AI)テクノロジーが登場したことで、生産がより加速され、シミュレーションワークフローが強化されました。

AIとマルチフィジックスシミュレーションの力を組み合わせたクラウドベースプラットフォームであるAnsys SimAIを導入することで、さらに高度なイノベーションを迅速に実現できるようになります。物理場に依存しないクラウドネイティブなSimAIプラットフォームを使用すると、過去に生成されたデータ(Ansysのツール以外で作成されたデータも含む)を使用してAIモデルをトレーニングし、数分で新しい設計の性能を評価できるようになります。このSaaS(Software-as-a-Service)は、Ansysシミュレーションの予測精度と、クラウドを介した生成AIのスピードを組み合わせたものです。計算負荷の高いプロジェクトのあらゆる設計段階でモデル性能が10~100倍向上します。

では、AIおよび機械学習(ML)手法は、数値シミュレーションやソルバーとどのように統合して拡張すべきでしょうか。SimAIプラットフォームの内部の仕組みがどのようになっているのか、このテクノロジーが従来のシミュレーションをどのように拡張して強化しながら、速度を損なうことなく精度を実現するのかを見ていきましょう。

数値シミュレーションを活用した機械学習

SimAIプラットフォームの基盤となるテクノロジーを理解するには、まず数値シミュレーションの性質、その複雑さ、そして目的を理解する必要があります。数値シミュレーションを活用すると、実際に実験をすることなく、さまざまなエンジニアリング領域における実際のシステムの振る舞いをモデル化できます。これにより、システム固有の数値をより簡単かつ効率的に計算して反復することができます。たとえば、自動車の空力特性を評価するエンジニアは、数値流体力学(CFD)シミュレーションを使用して自動車周囲の流れ場を解析できます。

Flow field

自動車の空力特性を評価するために、数値流体力学(CFD)シミュレーションを導入して自動車周囲の流れ場を解析する。

支配方程式は、実際のシステムの解析において重要な役割を果たします。なぜなら、他の方法では観測できない振る舞いを解析して予測するためのモデルを扱えるようになるからです。数学的近似法を採用することで、数値シミュレーションでコンピュータアルゴリズムを用いて、これらの支配方程式を解くことができます。エンジニアリングにおける支配方程式としてよく知られているのが、非圧縮性流体の運動と流れとの関係を表すナビエ-ストークス方程式です。たとえば、自動車の空力において、ナビエ-ストークス方程式は自動車周囲の流体の速度と圧力の関係を記述するのに役立ちます。

Navier Stokes equation

移動する流体の速度と圧力の関係を記述したナビエ–ストークス方程式(非圧縮性形式)。

ML手法を採用する場合は、与えられた一連の例を用いて、タスクまたは基本ルールをアルゴリズムに学習させることが目的になります。MLを数値シミュレーションと統合する方法はいくつかあります。

これらの手法は、以下の2つのカテゴリに分類されます。

  1. 物理場を考慮: 最も簡単なアプローチは、標準ソルバーで発生するボトルネックをML手法に置き換えることです。これにより、大規模な線形連立方程式の逆行列を求めるなど、予測をより迅速に出力できるようになります。しかし、これらの手法のほとんどは、支配方程式に関する情報を保持しながら、計算に関与するソルバーを排除します(方程式によって暗黙的に示されるペナルティ項を損失関数に注入する(トレーニングデータに含まれる誤差)など)。言い換えれば、物理場を考慮した手法は特定のタスクに焦点を当てて処理を実行しますが、精度が犠牲になります。
  2. 物理場に依存しない: もう1つのアプローチは、MLアルゴリズムに、数値ソルバーの解を使用して、物理場の潜在的な表現を直接学習させる方法です。これらの手法は、基盤にある方程式やソルバーに依存しません。たとえば、過去の計算例を使用することで、MLアルゴリズムはナビエ–ストークス関数のデータ駆動型表現を学習し、新しいジオメトリと自由流れ条件を車両の速度などの入力として使用して、その流れ場を出力として得ることができます。このように、物理場に依存しない手法では、優れた速度と予測精度の両方を達成できます。

SimAIプラットフォームは、物理場に依存しないアプローチを採用しており、予測精度を損なうことなくシミュレーションワークフローを加速させます。SimAIでは、ジオメトリパラメータに依存して設計を定義する代わりに、設計自体の形状を入力として使用します。これにより、形状の構造が完全にトレーニングデータと一致していなくても、より広範な設計調査が容易になります。

SimAIプラットフォームでは、データのアップロード、AIモデルのトレーニング、そして予測の3つの簡単なステップが実行されます。前述したように、過去に作成したデータを使用してAIをトレーニングできます。Ansysのツール以外で作成されたデータも利用可能です。

Navier Stokes

過去の計算からの例を使用することで、Ansys SimAIの物理場に依存しない機械学習(ML)手法では、対象システムの基盤にある支配方程式(ナビエ-ストークス関数など)のデータ駆動型表現を学習できる。

Ansys SimAI: 内部の仕組み

SimAIプラットフォームの汎用アーキテクチャは、複数のディープラーニングニューラルネットワークを組み合わせた、さまざまな技術の融合に基づいています。このアーキテクチャにより、物理場の重要なスケールをすべて捕捉することができます。このアーキテクチャは、多数の非線形層で構成されており、複数のパラメータや変数間の複雑な相互作用が含まれています。

SimAIのアーキテクチャは、多数の非線形層で構成されており、複数のパラメータと変数間の複雑な相互作用が含まれている。

画像内のピクセル値のようなデータポイントを明示的に格納する代わりに、SimAIプラットフォームでは、陰的なニューラル表現を使用して、これらのデータポイントを生成できる連続関数を学習します。つまり、SimAIでは、過去の計算で得た一連の点を取り、新しいジオメトリや自由流れ条件に適切に一般化できます。

自動車の空力特性評価の例では、この機能を使用して、圧力や速度などのサーフェスフィールドやボリュームフィールドを連続的に表現できます。これにより、目的の解像度で予測を要求できるようになります。さらに、ポストプロセスとして、予測されたフィールドからグローバル係数を導出することも可能です。

Mean pressure coefficient
Mean wall shear stress

自動車の空力特性評価を行う場合、SimAIプラットフォームでは、圧力や速度などのサーフェスフィールドやボリュームフィールドを連続的に表現できる。さらに、ポストプロセスとして、予測されたフィールドからグローバル係数を導出することもできる。

実際に、SimAIプラットフォームの最も優れた利点の1つは、正規化技術を使用して、過剰適合を防止し、新しいジオメトリの一般化を改善することです。過剰適合とは何でしょうか。過剰適合とは、AIモデルの予測が、トレーニングデータと含まれているジオメトリに限定されすぎているために、新しいジオメトリを学習または一般化するための汎化能力やスコープが不足している状況です。正規化手法は、過剰適合を緩和するように設計されています。SimAIでは、モデル構造に直接組み込まれ、より安定した表現の高いモデルを得るための局所的な手法を含む正規化手法を使用します。これが、SimAIで新しいジオメトリを迅速かつ簡単に扱える理由です。

同様に、SimAIプラットフォームでは、3D形状の適切な表現を使用して、特定の分布に従わない複雑な形状バリエーション(パラメータ化されていないジオメトリなど)を持つ任意または不規則なメッシュを表現できます。予測の不確かさを定量化するために、SimAIでは独自の信頼度スコアを用いて、極めて高次元の空間で最も近い既知のジオメトリからの距離を計算します。

Mesh resolution
Shape representation

SimAIプラットフォームでは、形状の基本的な表現を採用し、同じ出力を生成するため、新しいジオメトリのメッシュ解像度に関係なく同じ信頼度スコアが返される。

Ansys SimAIプラットフォームでシミュレーションを拡張

SimAIの仕組みについて、基本的な理解があるとなお良いですが、プラットフォームの最も良い点は、仕組みを完全に理解していなくても活用できることです。SimAIは直感的で使いやすく、コーディングの経験、AI/MLの知識、ディープラーニングの専門知識がないユーザー向けに設計されています。

SimAIプラットフォームは、幅広いエンジニアリングユーザーに対応しています。あらゆる業界およびエンジニアリング領域の製品エンジニア、設計者、あるいは専門知識のないユーザーでも、過去のシミュレーションや測定データを簡単に活用して、新しい設計の性能をわずか数分で評価できるようになります。

詳細については、ウェビナー「Ansys SimAIの紹介: シミュレーション用のクラウドネイティブな生成AI」をご覧ください。


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Antoine Reverberi
Application Engineer II

Antoine Reverberi is an Application Engineer II at Ansys. He holds a degree in fluid mechanics and marine engineering from Ecole Centrale Nantes, France. By combining practical experience of the industry with a background in fluid mechanics and marine engineering, he provides technical expertise to customers.

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